よくないもの
御剣に専門家らしいことをしてもらいました。
けれど本領がまだ来ない
岩手会長と霧の中に入ってかれこれ一時間は経っている。
問題なのは、前へ進んでも後ろへ戻っても霧の中から出れないことだ。
しかも、携帯は圏外で大神と連絡を取ることすら出来ない。
表立って出てきてくれれば、交渉なり斬るなりできるのだがこうやって搦手で来られた場合私には手札が少なすぎる。
こういうのは、大神にやってもらいたいものだが、怪異とかかるときはなぜか向こう側が力押しになる場合が多い。
幸いなことは、感覚的に一時間以上経っているのであって、実際の時間はあまり進んでいないというところか。
「刀子ちゃん、迷っちゃったね」
「すみません、岩手会長」
「刀子ちゃんの謝るとじゃないよ」
「いえ、不用意に霧の中に入ってしまったのは失態でした」
あの少女の霧と思っていたがどうやらそうではないらしい。
性質が違う
彼女の術で発生する霧は私や大神には効果がないらしいが、この霧は、私にも影響している。
大神にもおそらく影響が出るだろうが、今は結界を張っているだろうな。
「ああ、そうだ。 岩手会長、この霧を抜けるために結界を張ってみます」
「結界って、大神君が張っていた?」
「はい、ただ、あれよりはかなり簡易的なものです」
そう言って私はかばんの中から人形を何枚か出した。
「それは?」
「式神にも使う、人形です」
「それで結界を?」
「そうです。 岩手会長を中心にしますから動かないでください」
人形はシールになっている。
そのまま式神にすることもできるが、術の媒介にするために決まった陣を形どるように地面に貼っていく。
結界の陣を貼り終わり、結界を張ろうと岩手会長の近くに立つ。
「では、結界を張ります」
「はい」
「急急如律令、絶縁結界」
とりあえず、私達に悪影響を及ぼしている縁との断絶をするための結界を張った。
「これで霧の影響はこの結界の中にいる限りはなくなりました」
しかし、陣型の結界なので動けないのがネックか。
「さて、どうしたものか」
「刀子ちゃん、今、霧の向こうでなにか動かなかった?」
「どこですか」
「あっち」
岩手会長の指差す方を見る
拙作を読んでくださりありがとうございます。
さて、いよいよ、妖怪の登場です。




