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魔王様のご近所征服大作戦  作者: 京 高
第五章 魔王様の日常は魔法と共に
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第三十三話 魔法使いになれる日? 後編、お前たちは先にいけ

あ、これってフラグ……?

 バーベキュー参加者全員で後片付けをして、無事お開きとなったその日の夜、弥勒の部屋を訪れている者がいた。リィと正、それと二人には見えてはいないが義則の三人である。ちなみにジョニーは昼に見る分には問題なくなったが夜になると未だに怖いらしく、義則が来ると知って奥の部屋で布団を被っている。


「夜分に時間を取らせてすまないな。上がってくれ」


 弥勒が二人を案内すると、


「全く異世界らしさがないアルな。これなら私の部屋の方が異郷度が高いアル」


 リィがよく分からない感想を漏らす。


「異郷度って……。どれだけ魔改造してるんですか?」

「ちょっと国の小物を置いているだけアル。正の前の部屋に比べたらよっぽど健全アル」

「う……、その節は見苦しい物をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」


 正の場合、精神操作をされていた可能性が高いので情状酌量の余地があるのだが、リィに取ってあの時の衝撃は大きかったようだ。もっとも、正本人に対して今はもう思う所はなく、ただ単にからかっているだけである。


「大きな家具は俺が入居する前に使っていた物のままだし、小物も全てこの近所で買ったものだ、期待を裏切って申し訳ないが、元の世界の物など一つもないぞ」


 既に弥勒は元の世界から持ってきていたほとんどの物を処分していた。唯一残っているのは蓄魔石を加工した腕輪だけだ。


「むぅ、元魔王だと聞いたからてっきり怪しい邪神の像とかミニチュア魔王城とかが置いてあると思っていたアル……」

「言っておくが魔族は基本無神論者だぞ。自分のことは自分でやるというのがモットーだったからな。それと邪神なんて崇拝するのは破滅願望がある奴だけだからな」

「弥勒さんがいた世界って、神様の存在がはっきり分かっていたんですか?」

「信徒たちを介しての神の奇跡は確かに存在するが、それ以上ははっきりしないな。人間たちの間でもそれこそ無数の神々がいるとする説や、実は一柱の神の様々な側面を見ているだけという説と紛糾していたよ」


 どこの世界においても神様というのはよく分からない存在であるらしい。


「弥勒さん、話がズレているよ」


 逸れて入った脇道が別の大きな道に合流しそうになった所で義則が指摘する。


「おお!すまないな。えー、改めて三人を呼んだ理由だが、……その前にどうしてこの三人が呼ばれたのか分かっているか?」

「魔力を感知することができるからアルな」


 弥勒の質問にリィが代表して応えると、残りの二人も頷いた。


「その通りだ。と言ってもまだまだ改善の余地があるレベルだから、本当は皆と一緒に魔力感知の訓練から始めていきたいと思っていた」

「思っていた、ですか?ということは今は違うと?」

「ああ。そんな気の長いことを言っていられない状況かもしれないからな」

「もしかして正の裏にいた奴が動いたアルか?」


 その問いにはゆっくりと首を横に振ってしっかりと否定しておく。ありもしない攻撃に対して身構えていては、無駄に気力と体力を消耗することになるからだ。


「今はその様子は全くないが、いつ動かれても対処ができるようにだけはしておいた方がいいと思っている。先に言っておくが、向こうが動く気配があればには必ず察知できるようにしてあるから、その点は一切気にしなくていい」


 弥勒が目的としていたのは、対抗手段を確立することによって安心感を得ることだった。


「特に正は再度接触を図ってくる可能性が高いから備えるのは当然のこととして、正を通して義則の存在も知られていると思っておいた方がいいだろう。

 分かっているとは思うが、将たちがお前にとっての弱点であるように、お前もまた彼らの弱点だ。菜豊荘から離れることは少ないので襲われることはないだろうが、それでも自衛できるだけの力は持つべきだ」

「ふむふむ。そうなると私は皆の護衛係としての役割が期待されているのアルな」


 自信満々なリィの言葉に弥勒は頭が痛くなっていた。


「この際だから言っておくが、一番狙われる危険があるのはリィ、お前だぞ」

「私アルか!?」


 青天の霹靂と言わんばかりにリィが驚く。弥勒は漫画やアニメであれば背景に雷が落ちている所だろうと思った。毒され過ぎである。


「はっきり言ってお前は美人だ。チューカ弁とかで残念美人ではあるが美人であることには変わりがない」

「……褒められている気がしないアル」

「むしろ貶されていますよね……」


 二人のぼやきを無視して話を進める。


「極めつけは異国の出身であり、例え姿を消しても一時帰国か何かだと思われて、周囲に騒がれ難いと向こうが思っていることだ。この場合真実などどうでもいい。奴らがそう思っていることそれ自体が問題なのだ。

 二人も他人事ではないぞ。正も他所の出身だからリィと同じことが言えるし、義則は普通の人には見えないから周囲の目を気にする必要すらないのだからな」


 弥勒の指摘に三人の顔は徐々に強張っていった。


「だが、その三人が揃って魔力を感知できるというのは不幸中の幸いだな。お前たちには皆より先に魔法習得のための本格的な訓練に入ってもらう」

「ほ、本当アルか!?」

「こんなことで嘘を言う必要などないからな」

「それで!どうすればいいんですか!?」


 実際に魔法が使えるようになる、ということでテンションが上がっているようだ。新参者であり迷惑をかけたという思いがあるのか、普段は控えめな正でさえも食い付きが半端ない。そんな様子に苦笑しながらも、先程までの嫌な空気がどこかに行ってしまったので、これはこれで良しとしよう、と思う弥勒だった。


「魔法陣を使う。朝には説明し忘れていたが、魔法陣には発動する魔法の効果を固定する機能がある。この中に入っていれば魔法発動の三ステップだけを行っても、安全に魔法を使うことができるのだ」


 そう言って、不思議な模様が描かれた大きめの布を渡していく。


「これは水作成の魔法陣だ。濡れてもいいように風呂場で練習するように。義則の分はこの部屋の風呂場に置いておくから自由に使ってくれ」

「それで、魔法発動の三ステップについては何かコツみたいなものはありますか?」

「悪いが、魔族である俺には全く分からん。各自で試行錯誤してもらうしかないな」


 魔力との親和性が高い魔族であるために、弥勒はその三ステップを意識せずに魔法を使っている。使いたい魔法を思い浮かべて力を込めるだけなのである。最後の最後でまさかの丸投げに、渡された布を興味深そうに眺めていた三人の動きが止まっていた。


 結局、一日の大半を魔法の修練に費やすことのできた義則が最初に成功させるのであるが、それまでには二週間という長い時間を必要とするのであった。


単純に先行しているというだけですね。

フラグではありませんでした。



次回更新は12月1日のお昼12時です。

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