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魔王様のご近所征服大作戦  作者: 京 高
第三章 魔王様の異世界暮らし
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第十九話 更に人脈の確保、要するにご近所さんと飲み会をするということ

 もうすぐ日付が変わろうという深夜、とある場所に五人の男たちが集まっていた。


「なあカツよ、お前には色々と世話になっているから一緒に飲むのは構わない。だが、何故俺の部屋なのだ?」


 そう、とある場所とは菜豊荘の一〇三号室、つまりは弥勒の部屋だった。


「いや、だって俺実家住まいだし?」

「それなら他の者たちの部屋でもよかろう」


 何故に疑問形で返すのかと思いながら、残るメンバーを順に見ていく。


「僕の部屋はがいるからダメですよ」


 真っ先に答えたのは隣室の将である。ほとんど無理矢理連れて来られたので、不機嫌であることを隠そうともしていない。

 まあ、このメンバーの中で最も弥勒に不信感を持っているので仕方のないことではあるだろう。そして将の言うとは幽霊であるのことだろう。だが、未だに会えていないので、本当になのかは分からない。こっそり彼女・・という可能性もあると考えていた。


「隣にイロハさんの部屋があるので、僕の部屋は無理ですね」

「右に同じ」


 続いて答えたのは孝と充である。二人の部屋はイロハの二〇四号室の両隣りに当たる。確かにそんな所で酒盛りをして騒いでいたら、確実にイロハが乱入、もとい彼女からお説教を食らう羽目になってしまうだろう。

 つまり、弥勒の部屋以外に都合のいい場所はなかったのだった。


「それに店で飲むと高くつくしな」


 克也の言うように居酒屋系の店となると、菜豊荘から一番近い店でも車で十分はかかる。加えて飲酒運転の取り締まりも厳しくなっていて、田舎だといって油断はできない――危険ですから、飲んだら乗るなを徹底しましょう――のである。歩けない距離ではないが面倒であり、タクシーや代行運転を頼むと金額は跳ね上がってしまうことになるのだ。


「ロクちゃんはバイト始めたっていっても今月はまだ生活支援だけだし、俺に全員分を出す甲斐性はないからな!」

「それ、威張って言うことじゃないですよ……」


 そんなことなら呼ばなければいいのに、と思いながら将が呟いていたのだが、既に酒の入った克也はどこ吹く風といった感じである。

 手にした発泡酒の缶が空になると、軽く潰して新しい缶に手をのばす。


「あ、ちょっとまえさん!そっちのチュウハイは俺のですよ!」

「けちけち言うなよ。七瀬、お前にはうちの自家製梅酒をやるよ」

「マジッすか!?昔うちの親父が飲み会で前さんとこの梅酒を飲んだ話をしていて、いつかはのみたいと思っていたんですよ」

「チャンポンするのは別に止めないけど、リバースは勘弁してよ」


 嬉々として克也が持ち込んできた一升瓶に手をのばす充を見た孝が、若干眉をひそめながら言った。


「みっちは前科があるからなあ……」

「うん?その話詳しく聞かせてもらおうか」

「すとっぷ!ストーップ!その話は生半可な覚悟で聞いちゃあいけないゼ」

「いやいや、何カッコイイ風の話みたいに言っているのさ?ただの恥ずかしい話でしょ」

「あー、でも思い出したくないっていう意味では合っているかも……」


 遠い目をしている将の姿から察するに、なかなかに壮絶な現場だったようだ。酒の肴にするには相応しくないどころか、さらなる惨事を誘発させかねない。五人はこの話はなかったことにしようと頷き合うのだった。


「そういえば、七瀬。お前今、何しているんだ?」


 ペースを落とすことなく順調に空き缶の山を作っていた克也が、思い出したように口を開いた。


「俺ですか?」

「おう、お前だ。確か一宮と後藤は地元の大学に進んだよな。経済学部と工業学部だったか?」


 それなりの個人情報のはずだが、言われた二人は特に気にすることもなく頷いていた。


「僕の方は今、イロハさんが助手をしている先生のゼミに入ってます。将は今年からは授業を最小限にして実家の会社のバイト中心の生活になっているよね」


 孝の説明に将が頷く。


「マジか!?ということは次期社長か!?」

「それは気が早いですよ。一応顔つなぎにどこかのお偉いさんに会わせられることはありますけど、普段は一番下っ端の雑用係ですよ」


 興奮気味に食いついてきた克也に、将は冷静に近況を告げる。その顔には身内であることを理由に上手く安く使われていると書かれていた。


「あー、まあ、何だ、そのー、頑張れ?……とにかく、同級生の二人がこうやって頑張っているのに、お前は何をやっているんだって話だ、七瀬!しかも彼女をほったらかしにしているそうじゃないかね、君ぃ!」


 どことなくわざとらしい物言いになっているのは、酒が入っているせいだけではないのだろう。しかも、どちらかというと今の台詞の後半部分の方が本題のようで、その目はからかおうとする気が満々だった。


「げ!どの辺りの話まで広がっているんですか?」


 青い顔をして充が問い返す。


「んー?トオマルの親父さんがいる前で娘と抱き合っていたことくらいしか俺は知らないぞ」


 あの日の夜、トオマルの店主が商工会の集まりの席で飲んだくれている姿が目撃されていたとか。


「うわー、あの後そこまでやっちゃってたの?どおりで最近円和の店長さんの元気がないはずだよ」

「それは……迂闊だったというか、何とも言いようがないな」


 孝と弥勒はある意味煽った張本人なのであるが、我関せずというか、素知らぬふりをしていた。ちなみに克也はご近所での若い世代の顔役でもあるため、同世代の中では早く情報を仕入れることができているが、上の世代には既に拡散済みであることが多い。


「以前から二人が付き合っていることは知られていたからな。しばらくはおっちゃん、おばちゃん連中から生温かい目で見られるだろうから、頑張って耐えろよ」


 克也がいい笑顔でそう言った瞬間、一気に酔いが回ったように充がテーブルに倒れ伏した。


「ああ、俺はもうダメだ……」

「おいおい、それはちょっと大袈裟すぎないか?」

「いえ、弥勒さん、それがそんなに大袈裟とも言い切れないんですよ」


 苦笑する弥勒に将が待ったをかける。


「本人たちは温かい目で見守っているつもりなんだろうけれど、面白がっているのが丸分かりだからね。あれは結構きつい」

「せめてもう少しうまく誤魔化してくれればいいんだが、田舎のおっさん、おばさんがそんなスキルを持っているはずないしな」


 いつの間にか克也もフォローに回っている。つまりはそれほどまでにダメージの大きい攻撃なのだろう。弥勒は決してその攻撃対象にはならないように、上手く立ち回らなくてはいけないと心に刻むのであった。

 男五人の飲み会はその後も続き、明け方に弥勒以外の四人が潰れてようやくお開きとなった。翌朝二日酔いの面々を見送りながら後片付けをする弥勒の肩に乗ったジョニーが


『酔っ払いたちのせいで、うるさくて眠れなかったっす』


 とブチブチ文句を言うのだった。


飲み回でした。

あ、結局充が何やっているのか不明のままですね。そのうち説明する機会があると思いますので、また今度。


そしてなんとイロハは大学教授の助手さんでした。

え?何の研究をしているのかって?僕に聞かれても分かりません!


……でわまた次回!あ、ご意見ご感想も待ってます。

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