《ケミカル☆あやの》
「先ぱ…」
先輩は「元」彼女さんと一緒だった。
何かを話し合ってる様子だった。
なんで?先輩私が好きになったんじゃなかったの?
あ、もしかするともう好きな人が出来たって彼女さんに伝えてるところなの…あぁ肩を抱いてる。そんなんじゃないのね。
「先輩」
「っ…三家…」
「だれ?この子」
「お、オレの後輩の…」
「先輩の彼女です。」
彼女さんも先輩もギョッとする。
なぜあなたが驚くの?あなたから告白してきたくせに!!
「たしかにオレはさっき君に縋ろうとした。ゆうなに振られたショックで滅入ってたんだと思う。でもそれじゃダメだって思ってたら、ゆうなが戻ってきてくれて…それで話し合って…」
「それでまた付き合うことになったって言うの!?私の気持ちはどうなるの!?先輩言ったじゃない!!オレの心の穴を塞ぐことができるのは君だけだって…嬉しかったのに…嬉しかったのに…!!」
こんな先輩、私の好きな先輩じゃない!!
「彼女は消えちゃえ…先輩は私をもっともっと好きになって!」
ステッキを振ると彼女が消えた。
「三家…好きだ三家!結婚しよう!オレには君しかいない!!」
先輩は私にありったけの愛の告白をした。
でも…あんまり嬉しくなかった。
ーーーーー
そんなことをしている間に学校内は大騒ぎになっていた。
校長先生、うちの担任、女子生徒4人が全身の骨を折って病院送りになったからだ。
私は今度は職員室に呼ばれた。
あの場に私もいた筈なのになぜ何もなかったのか…何かしたのではないかと疑われた。
「どうなんだ。三家。」
「私何もしてません。みんながいきなり自分の骨を折りだしたから、怖くなって逃げ出したんです。」
「…工藤はるかがうわ言のように「体が勝手に…」と呟いていた。つまり、体が勝手に自分の骨を折り始めたってことだったのか?」
「そう…だと思います…」
「…なぁ三家。これは先生の勝手な憶測なんだが…」
先生の目玉がぎょろっと一回転する。
「三家は呪術的な何かを扱えるんじゃないのか…?」
「へ…?」
「正直に答えてみろ…本当に呪術が使えるのであれば…先生はお前の味方だ。どんなにお前が疑われても先生が守ってやろう。その代わりお前の使うその呪術をオレにも教えてくれないか。頼むよ三家。」
先生は小声で声を震わせながらそう言ってきた。
どうしよう…すごく、怖い。
たしかに私は魔法は使えるけど教えられるほど原理とかわかってないし。
でも…呪術を使えないなんて言ったらどうなるんだろう。
呪術が使えるなら味方…先生はそう言った。
なら使えないなら敵となるってことだ。私を犯人とみなし晒しあげるつもりなんだろう。
「つ…使えます…」
「そうかそうかぐふふふ!じゃあお前が無実であることをオレが証明してやるからな。安心しろオレはこう見えて信頼されてる方なんだ。呪術が使えること…もし嘘だったら、わかってるな?放課後、待ってるぞ。ぬふふふふ!!」
そう言って先生はスキップしながら会議室の方へ向かっていった。
私はその場にへたりこんでしまった…
ーーーーー
放課後、先生、筒井先生がいる教室へ向かった。
筒井先生は興奮しきった表情で私のところへ駆け寄ってきた。
「さぁ、さぁまずは見せてくれ!呪術を!!」
…だ、大丈夫よ、ただ願い事を唱えるだけでなんでもできちゃうんだから。身構える必要はないわ…
そう自分に言い聞かせブローチを叩こうとした。
ブローチがなくなっていた。
どこかで落としたの…!?
ブローチを探していると先生がだんだんイライラし始めた。
「まだか?もしかして本当は使えないんじゃ…」
「ち、違うんです!先生!じ、呪術を使うために必要な道具をどこかに落としてしまったようで…」
「なに?ならば一緒に探そうではないか。行こう。」
…きっと、大丈夫。学校から出てないんだから、学校内にあるはず!
また、自分に言い聞かせた。
ーーーーー
もう二度と自分に言い聞かせるという行為はしないようにしようと思った。
だって、どこを探しても見つからなかったんだもの…
とうとう筒井先生がキレた。
「おい三家…?大人をからかうもんじゃないぞ…?あの時なぁおい。正直に「呪術なんて使えませーん」つっときゃ先生ここまで怒らなかったんだぞ?嘘ついてここまで付き合わせて、ん?怒らないわけないだろ?」
「ごめんなさい!!でもっ、ほんとに使えるんです!!でも、でも…」
「もういいよ三家…これ以上先生を怒らせないでくれ。」
先生が行ってしまう。
あぁ…これで私ははれて犯人になっちゃったってわけね…
どんな風にでっち上げられちゃうのかな…
一人で大人の男性を含む6人をボコボコにしたっていうの…?
……あは、無理じゃん!!
筒井先生がいくら信頼されてるからって流石にその嘘は通らないし私が呪術を使えないことは今証明された!!危機的状況はむしろ筒井先生なんだよ!!
きゃは!怯えて損した!!
馬鹿馬鹿しい!かーえろ!!
私は筒井先生のスキップを真似て帰路についた。
《続く》




