《マジカル☆りりか》
「……か…」
「り………て……」
「りりかってばぁ!!」
はっ!!!
な、何!?今のはすべて夢!?
「りりか急に倒れちゃうからびっくりしちゃった。」
「夢じゃない!!!!!」
「りりか?何言ってるの?」
猫のクセにしゃべるし二足歩行だしでおかしなやつ…ニャンティは混乱する私とは逆に落ち着いている。
「りりか落ち着きなよ。」
さっきから当たり前のようにりりか、りりかって…
「だ、だいたいどうして私の名前知ってるの?」
「…細かいことは気にしないの。さ、りりか。まずこれを受け取ってよ。」
ニャンティがそう言うと何処からともなくブローチが現れた。
「なにこれ…」
「騙されたと思って2回軽く叩いてみて。」
言われたとおりに叩いてみると…
「ほえぇ…!」
ブローチはステッキへと姿を変えた。
「そいつを軽く振って願い事を唱えるとあら不思議!なんでも叶っちゃうんだ!早速なにか魔法をかけてごらんよ!」
言われるがままステッキを振り、
「出てこいカレーライス」
と、唱えてみた。
ポンと音を立ててカレーライスが床に落ちた。
「……」
「どうどう?びっくりした?ふふ!すごいでしょ!魔法って!」
ニャンティは得意げに笑う。
「魔法は自由に使っていいよ!りりかの願い、すべて叶えるんだ!」
私の…願い…
「例えばそうだなぁ…女の子なら好きな人と相違相愛になりたいだとかさ。美人になりたいだとか…どう?」
魔法が使えるなら…
私なら…
「魔法の力がすごいことはわかった。でも慎重に使いたいから、よく考えるね。」
「うんうん。魔法は逃げないからねぇ。ゆっくりじっくり考えるといいさ!」
「うん!」
ご飯を食べて、お風呂に入ってる間も考えたけど、いまいちピンと来なかったから、今日はひとまず眠ることにした。
どこからか舌打ちのようなものが聞こえたような気がした。
ーーーーー
「摩訶木、あの子は元気?」
「ね、猫?あーうん!元気だよ!」
「そうか、よかった。それはそうと野鳥展のこと忘れてないよな?」
「ちゃんと覚えてるよ。だって、タクトくんと行くから…」
う、うわ、恥ずかしいこと言っちゃった。
「…日曜まで待てなくなるだろ!やめろよ!」
「ふ、ふぇ!?ご、ごめん…」
な、なんか怒らせちゃった…穴があったら入りたい…
タクトくんから目を逸らしたくなって空を見上げた。
空からなにか降ってきてた。
え?え?なに?鳥?
違う…
い、岩!?
なんで!?ううん、そんなこと考えてる場合じゃない!
このままじゃ私もタクトくんもぺしゃんこだよ!!
そうだ!魔法!
すかさずステッキを取り出し振った。
「空から降ってきてる岩、なくなれ!」
間に合った!よかったぁ〜…
岩はポンと音を立てて消えた。
安心してタクトくんの方に向き直ったらタクトくんは目を丸くしていた。
「え…」
「あ…」
ひゃーーーーー見られたーーーー!!
当たり前ですよねーーーー!!
「た、タクトくん今の、忘れて!」
ステッキを振った。
そのまま逃げるようにその場を去った。
ーーーーー
帰宅。
ニャンティはベッドの上に座っていた。
あの調子でニャンティが訪ねてくる。
「どう?一回くらい魔法使った?」
「二回使っちゃった。一回目はね、岩が降ってきたからそれを消すのと、二回目はそれを…タクトくんに見られちゃったから、見なかったことにしてって。」
「そうか…」
一瞬、ニャンティが深刻な表情になった気がした。
「み、見られたのまずかった?」
「ん?いや、そうじゃないよ。りりかが気にすることじゃないさ。」
「そう?……ねぇニャンティ。私、願い事決まったかも。」
「うん?にゃににゃに?」
「魔法を使ってね、大切な人…タクトくんを守るの。」
今日魔法を使ってわかった。
自分がぺしゃんこにならなくてよかった〜じゃなくて、タクトくんがぺしゃんこにならなくてよかった〜が先だったもん。
「いーんじゃないかなっ。りりからしいや!」
ニャンティの笑顔がどこか冷たかった。
《続く》




