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す~ぱ~魔法伝記。  作者: 山咲ケン
第一章
2/11

《マジカル☆りりか》

もしも、


私が魔法を使えるようになったなら、


その時は、


大切な人を、守りたい。


それだけって…変かな?



ーーーーー



「摩訶木、鳥は好き?」


突然、そう聞かれて胸が二重の意味で高鳴る。


「ふぇ?ん、と、強いて言うなら…苦手…かな…」


「そっか、残念だなぁ…摩訶木さえよければ野鳥展に連れていこうと思ったんだけど…」


「ほええ!?い、行く!と、鳥ってお、お肉の方と思っちゃったの!野鳥は好き!」


「ほんと?よかった。じゃあ行くなら次の日曜がいいなぁ。空いてる?」


「ひゃい!も、もちろん!」


「じゃあ、10時に市駅で落ち合おう。寝坊するなよ!じゃ!」



風のように現れて、


風のように去っていく。


私、摩訶木りりかは、そんな彼、タクトくんに恋をしています。


本当は野鳥も苦手。


でも、折角デートできるんだもん。


ちょっとぐらい我慢我慢…



ーーーーー



下校途中、子猫が小学生たちにいじめられているのを見かけた。


私、鳥だけじゃなくて動物はみんなわりと苦手なんだけど、


動物をいじめるのは、ありえないと思う。


相手は小学生だ。と自分に言い聞かせ、


勇気を振り絞って叫んだ。


「コラーーーーーー!!!!」


私の顔を見るなり蜘蛛の子が散るように一目散に逃げる小学生たち。


取り残されたボロボロの真っ白な子猫。


この現場をタクトくんが見たらどう思うだろうか。


子猫を恐る恐る抱っこしてみた。


相当弱ってるのか、抵抗する気配はない。


とりあえず、近くの動物病院に連れていくことにした。



ーーーーー



「た、タクトくん!?」


動物病院に入るやいなやびっくり。


だってタクトくんがいるんだもん。


タクトくんは怖がる犬をなだめているみたい。


「摩訶木、どうしたんだ?」


「タクトくんこそ…」


「ここ、僕の父さんがやってんだ。知らなかった?」


そういえば、私タクトくんのこと、すごい動物好きだってことぐらいしか知らなかった…


あぁ!それどころじゃない!


「こ、この子!小学生たちにいじめられてたの!それでここに…」


「ちょっと見せて…ふむ…外傷はなさそうだな…でも内臓に被害が及んでるかも。父さんならすぐにみてくれるよ。」


「え…?」


慌てて子猫を見た。


さっきまであんなにボロボロだったのに、いつの間にか土埃すら消えていた。



ーーーーー



子猫は無傷だった。


それどころかどこも綺麗でとても野良猫とは思えない。


「摩訶木、この子ホントにいじめられてたのか?」


「ほ、ホントだよ?なんでだろ…」


困惑する私の手に子猫がすりついてきた。


「はは、懐かれてるな。…首輪もついてなさそうだし…摩訶木、預かってくれるか?」


「ええ!?えっとぉ…」


躊躇う私の背中を押してるつもりなのかな…


子猫が私の服にしがみついて離れようとしない。


「んーそうだなぁ。摩訶木、特別だぞ?子猫用ご飯セットを僕が買っといてやる。父さんが厳選したやつだからいいのんばっかだ。どう?預かる気になった?」


「…う、うん…」


やむを得なかった。


摩訶木のそばにいた方がそいつ幸せそうだしな〜なんて笑うタクトくんの手前、断ることなんてできないし…


何よりこの子離れてくれないし。


仕方なく、もらったご飯セットを持って連れて帰ることにした。



ーーーーー



部屋に着くと子猫は元気に部屋中を歩き回った。


動物って苦手だけどこうして見ると、結構可愛い…かも。


そう思いかけてた時だった。


「んー。女の子にしてはこう、夢のない部屋だねぇ」


耳を疑った。


目も疑った。


だって子猫が二本足で立ち上がってしゃべり始めたなんて…!


「やぁやぁ、僕の名前はニャンティ。夢あるものに希望を与えるため魔法の世界からやってきた者さ。よろしく。」


子猫はそう言ってにっこり微笑んだ。


私はショックのあまり意識を失った。


《続く》

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