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いち、に、の姉妹論。  作者: 陽向夏月
保護者の章
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ニコ編 前② 天使な幼児と美少女メイドさんに好かれました (改訂版)

「本当に、どんなにお礼を申し上げても足りないくらいです」

「あの、ホントにもういいですから。私はその子が無事にお家に帰れただけで満足ですし」


 たまたまあの場所にいただけで、ヒーローよろしく颯爽と助けたわけじゃないからそんなに頭を下げられると、若干どうしたらいいか分からなくなるんで止めてもらいたいです、はい……。

 それを説明してみても、目の前で三つ指揃えて謝罪を続けるメイド服の美少女さんは全然顔を上げてくれない。

 事情説明をしてからずっとこの体勢なんです……。困ったなぁ。

 それに部屋でずっとパニクっていた私を助けてくれたのは、物音を聞きつけてやってきたこの人で、むしろ感謝したいのは私の方なんです。

 明らかに不審者な私を見ても悲鳴を上げないで冷静に優しく対応してくれたときは、本気で女神さまが降臨したと思いましたよ。


「私の不手際で大切なベリルさまを賊に攫われ、アナタさまのような争いとは無縁の女性に助けて頂いたというのに謝罪の言葉もなく御もてなしもしなかったでは、領主さまとベリルさまのお顔に更なる泥を塗ることでございます」

「うう……」


 なんと頑なな方なのでしょうか。

 というか、そうこられるとこっちの方が弱いんです……。

 そもそも何故この美少女さん――シャロンさんっていう名前だそうで――がここまで私なんぞに頭を下げ続けているのかといいますと。


 シャロンさんがベリルくん――自己紹介しました! ―― とお買い物に出掛けた際、お支払い中の僅かなタイミングでベリルくんを奪われ、あっという間に魔法? で逃げられてしまったそうなんです。

 白昼堂々の誘拐にシャロンさんも町のみなさんもすぐに手分けして探し回ったんですが、犯人の行先が分からない上に、今日は運悪く頼りになる領主さまやその大半の部下の方々が不在で、か弱いメイドさんたちや町の人たちでは魔物――普通にその辺にいるとのこと……――が住んでいる森の奥深くへは行けなくて途方に暮れていたところに私たちが帰ってきて感謝感激状態なんですよ。


 シャロンさん曰く、私は救世主なんだそうで……。

 だからずっとこの超低姿勢。それはもう美しい土下座です。

 自分の失態が恥ずかし過ぎるのと自分への怒りで顔なんて上げて話せないと。


「……私は領主さまに武術と魔法の腕を買われて本日のベリルさまの護衛の任に就かせて頂いたのです。……それなのに僅かであったとしても自分の力を過信したばかりにベリルさまを危険な目に遭わせ、無関係なお方、しかも女性にお手を煩わせてしまったのは変えようのない事実なのです」


 んん? 武術と魔法の腕?


「え? シャロンさんはメイドさんなんじゃ?」

「はい。この領主邸付きのメイドではありますが、私はあるお方のご厚意で女一人でも大概の事は自力で解決できる術を学ばせて頂きましたので、普通のメイドよりは荒事の経験と耐性があるのです」


 それは武闘派メイドさんということですか!?

 すごっ! カッコイイ!!

 ああ、だからこその落ち込み方なんですね。

 私もたまに、ホンットにたまにお姉ちゃんから頼まれごとをされるんですけど、何度か大失敗をした覚えがあります。

 あれはヘコんだなぁ……。信じて任されたのに自分のミスで台無しにしたときの絶望感といったら、世界の終りを感じるよりも終わり過ぎている気がしました。

 でも今までのシャロンさんの話し方を聞いていると、とても油断をするような人には思えないんですよねー。

 自他共に認めるお馬鹿さんな私でもたった一回の説明で理解できたんですよ? お姉ちゃんなんて面倒臭がって一切説明してくれないのに。

 ……んむ。話が脱線してしまいました。戻しまーす。


 思うにシャロンさんはお姉ちゃんや幼馴染みのように『ニコ的賢い人』だと思うんです。

 とても顔色や気配を読むのが上手ですし、私やベリルくんが飽きないように短くも的確な表現でお話ししてくれましたから。

 だから、あの誘拐犯たちにシャロンさんを出し抜けるなんて思えないんだけどな……。

 どうお世辞を言っても田舎のチンピラくらいの実力だろうし。大人二人で行動しているくせに幼児一人に逃げられるお粗末さは知能犯でもなければ、か弱いニコちゃんに成敗される程度の路地裏のゴロツキさんにもなれない半端な誘拐犯なのに、世の中不思議です。


「というか、あんなアホな誘拐犯たちのせいでシャロンさんが偉い人に怒られるのは理不尽だと思うんです」

「……え?」

「まず女の子と子供相手に大の大人が男二人掛かりで仕掛けてくるその根性が気に入りません。最低です。魔法でトンヅラするのも気に喰わないです。白昼堂々と誘拐事件を起こすくせに度胸があるのかないのかハッキリして欲しいものですね」

「あ、あの」

「女子供だからって、自分たちよりも力が弱いからって力尽くでどうにかしようとするヤツは大ッ嫌いです。そんな最低野郎どものせいで泣くなんてムカつきませんか!? ああっ! どうせならもっと痛い方法でやっつければよかった!」

「…………ニコ……かっこい」

「ありがとうベリルくん。お願いだからあんな大人にだけはなっちゃダメだよ」

「…………う……」


 ああ癒しだ! 小さい子可愛い!

 紅葉の手でオモチャを握り締めながら決意に満ちた顔のギャップが鼻血レベルで愛くるしいっ!!

 こんな天使を誘拐して、美少女に土下座までさる外道は私とお姉ちゃんが一匹残らず地獄に送るのです。ちゃんと顔を撮ってあるから絶対に報復してやりますよ。


「…………」


 あ、シャロンさん。やっと顔を上げてくれましたね!

 ポカンとしている表情も絵になるなんてどれだけ美少女なんですか! ツヤツヤの金髪、クリクリ二重の碧眼! 眼福です、ごちそうさまです。

 実は一人で熱くなってしまったのがちょっと恥ずかしかったんですが、シャロンさんの驚いている様子もけっこう面白いのでお揃いということで羞恥心なんてない!

 でも何にそこまで吃驚しているんでしょうかね?


「――アナタが困っているように、その勇ましいお嬢様もアナタの頑なな姿に困っていらっしゃるのですよ、シャロン」

「……アンヌさま」


 アンヌさん? って誰でしょうか。

 え? いやいやいや、いつの間に……?

 シャロンさんの後方にある扉の前には、スッと鼻筋の通った綺麗な女の人が立っていて、シャロンさんは慌てて立ち上がり背筋を伸ばす。

 対してアンヌさんとういう知的そうな美人さんはスタスタ歩いてくると、シャロンさんよりも一歩前まで来てスッと立ち止まった。

 それから何故だか私に深くゆっくりと頭を下げて。


「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。スピネル領、領主邸のメイド長のアンヌでございます」

「こ、九重ニコです?」

「ニコさま、でございますか。ニコさま。ベリルさまの件、このシャロン引いてはお仕えするすべての人間を代表致しまして深く御礼申し上げます。……本当に、本当にありがとうございました」


 ……よく見ると床に向かって下がるアンヌさんの前髪がフルフルと揺れていた。

 それだけでベリルくんがこの町の人たちに大切に想われているのが伝わってきて、出会って短い私まで嬉しくなってくる。

 小さい子が大事にされている町って何か良いですよね。子供たちも安心して遊べるし。


「あの、アンヌさん」

「なんでございましょうか」

「出来る限りでいいのでシャロンさんへの罰? が軽くなるように動いてもらえませんか。本当は罰がない方が良いんですが、私は部外者ですしそこまで口を出せないので。だからせめてアンヌさんだけでもさっきみたいにシャロンさんを助けてくれると私も気持ちが楽になります」

「ニコさまっ!?」


 シャロンさんがハッと表情を硬くさせたけれど、私は逆にへにゃっと締まりのない顔を返して答えた。


「私の行動がベリルくんとシャロンさんを助けたのなら、二人も私を助けてくれましたよ。ベリルくんは人がいる場所に連れてきてくれた。シャロンさんは怪しい人間にしか見えない私の話をちゃんと聞いて信じてくれた。……すごく嬉しかったんです。どんなに心細くても一人で何とかしなきゃいけないって強がっていたんですけど、やっぱり誰かに会って、話をして、信じてもらえるって幸せだなぁって」


 土と汗で汚れきって、自分たちとは全く違う服を着ている人間をすんなり受け入れてくる。恥ずかしいけれど、私に同じことができるかと訊かれたら多分できないと思う。


「お願いします。シャロンさんを助けて下さい」


 シャロンさんと同じように私は膝を折り、頭を下げる。

 それから短い沈黙が落ちて、誰かの小さな溜息が聞こえた。


「……他ならないニコさまご自身がそう仰って下さるのでしたら、このアンヌ、そのお言葉に出来る限りの協力をさせて頂きます」

「アンヌさん!」


 顔を上げた先にアンヌさんの優しげな苦笑があって、その後ろではシャロンさんが両手で口元を押さえて涙の溜まった瞳で私を見つめていた。


「ニコさまっ……ニコさまっ!」

「はい」

「な、なんとお礼を申し上げればっ!」

「あー……私なんかよりもアンヌさんに言ってくださ、わぁっ!?」


 ぎゅうッ。


「私、一生ニコさまに付いていきます……っ!」

「えーっと、エヘヘ……。すっごい照れますね」


 泣いている美少女に熱く抱きしめられながら『一生着いて行きます宣言』ってマンガやアニメじゃなくても本当に嬉しいものなんだなぁ。

 ちょっと世の男性諸君に今すぐ自慢したいんだけど。

 君たちのドリーム、ニコちゃんが一足先に叶えちゃったテヘッ!! って。

 それにシャロンさん、柔らかくて良い匂いがする! マジ天国! だけどそろそろ本気で鼻血出そうで危ない。かなり名残惜しいですが、離れなくてはいけませんよねー。ざんねん。

 何故か私よかちょっと渋るシャロンさんをペリペリ引き離して、一連の出来事を生温かく見守っていてくれたアンヌさんと眼が合うと、そのアンヌさんからビックリ発言が飛び出してきました。


「ニコさまはベリルさまだけではなく、シャロンにも大変慕われておられるのですね」

「私がベリルくんにですか!?」

「はい。ベリルさまが女性とあのように親しげに楽しげにお話していらっしゃるお姿を久方ぶりに拝見させていただきましたわ。いったいどのような魔法をお使いになられたのかと不思議でしたが、今は魔法などではなくニコさまのお人柄によるものだと理解致しました」

「私は特別なことは何もしていないんですけどね……」


 まぁ、でもこんな私でも気に入ってもらえたんだから嬉しいことだよね!

 それにしても今の話からするとベリルくんは女の人が苦手なのかな?

 たしかにアンヌさんやシャロンさんと会話している様子はなかったなぁ。その代わりアイコンタクトが多かったのはそういう事情から?


「それではニコさま」

「はい?」

「湯浴みに向かいましょう」


 …………はい?

 ゆあみとは何でしょうか。

 ニコちゃん、冗談抜きに歴史系が壊滅的なんで現代よりも前に使われていた単語を出されると眠くなってしまうんです。助けてお姉ちゃん!


「あのー……ごめんなさい。ゆあみって何ですか?」

「湯浴みとは身体を洗ったり、浴槽に浸かったりすることでございます」

「つまりお風呂ということですか?」

「オフロ……。そうですね。そちらの呼び方と意味は変わりありません」

「ニコさまが住んでいらしたお国ではオフロの方が浸透しているのですね」


 シャロンさんに頷きながらこの世界と元の世界の違いを認識する。

 アンヌさんたちには『お風呂』って言い方のが伝わり難いのか。

 単語自体は知っているみたいだけど、馴染みがない感じ。

 外人さんの「銭湯って何?」みたいな反応に似ているなぁ。

 というかお風呂ー……あ、理解。私小汚いですよねー。最初は戦場にいたし。こっちの気候も夏に近いようだから熱くて汗ダラダラだったし。


「では、ニコさまの身の回りのお世話はシャロンに頼みますね。着替えは私が準備をして参りますので、シャロンはニコさまを浴場に案内し、お身体を洗うお手伝いをして下さいね」

「はい!」

「え、いや! お風呂くらい一人で大丈夫ですよ!? 何より恥ずかしいですしッ!」

「…………ベルも、ニコといっしょにはいる」

「ベリルくんも!?」


 美少女とお風呂に入るのだって羞恥で気絶しそうなのに、ベリルくんまで来るって言ったらどう頑張っても断れないじゃん!


「それではニコさま、ベリルさま。参りましょう」

「…………ニコ、いこ」

「えっ? え、ちょっ……ちょっと待って!?」

「はい。お話はお湯に浸かりながら致しましょう」


 いや、話を聞いて下さいって!!

 だけど私の言葉なんて笑顔でスルーしていくシャロンさんとアンヌさん。他にも、追い打ちをかけるように私のスカートを引っ張って歩き出すベリルくんに何も出来ませんでした……。



「あの、ニコさま。これでは私は自分の仕事ができません」

「シャロンさんのお仕事はそこで待機じゃなかったでしたっけ?」


 そこと言うのは浴室と脱衣所を繋ぐ扉の前で。


「シャロンさんのとっっっても分かり易い説明でだいたいの使い方は分かったので、あとはゆっくり休んで待っていて下さい」

「お褒め頂き光栄にございます。ですが、それはそれ。これはこれでございますわ」

「ちなみにそのドアをシャロンさんが開けた場合、幼児の純粋な瞳が迎え撃つので色んな意味でかなりの覚悟をして下さいね」

「……ニコさま、それはあんまりにございます」


 あんまりなのはシャロンさんですよ。

 先にベリルくんの服を脱がせて私の退路を無くすんですから。

 あれは、私がこんな絵に描いたような超天使さんとのお風呂を断れないと分かっての行動でしたよ。

 だからまたまたお相子なんです。

 それに私の脂がのりまくった贅肉なんて見せたらシャロンさんの澄んだ瞳が穢れてしまうじゃないですか!

 ベリルくんはいいのかって?

 彼は現在、私のお腹のお肉をキラッキラした眼でタプタプしながら遊んでいるので大丈夫でしょう。そんなに気に入りました? おねーさんは悲しくて涙が出てくるよ……。


「もうそろそろ上がりますから、待ってて下さいねー」

「……分かりました」


 やっと諦めてくれましたか。

 さっきも思いましたけど、シャロンさんは中々の頑固さんですね。

 責任感が強いことの裏返しなんでしょうが、もう少しだけ肩の力を抜いてもいい気がするんです。

 お姉ちゃんなんて抜き過ぎて常時やる気がないのに。お互いの爪の垢を煎じて飲んでみればちょうどかもしない。

 ……真面目なお姉ちゃんか。真面目にニコちゃんを構ってくれる、いや愛でてくれるお姉さま。イイ! すごくイイッ! 興奮で鼻血垂れる!


「…………ニコ、まっか?」

「え? いやっこれは、アハハハッ! ダイジョーブだよ!? なんでもないから!」

「……?」


 危ない、危ない。

 純粋無垢な幼児の前で華の女子高生が鼻から流血する姿なんて見せたら、トラウマになりかねないよね……。それこそ私は犯罪者呼ばわりされるわ、お姉さまから。

 ……うん。もう上がろうか。

 バスタオル、バスタオル。


「大丈夫でございますか、ニコさま? お顔が……」

「はい……大丈夫です。少し興奮……じゃなくて逸れたお姉ちゃんを思い出していただけですから」

「お姉さまを?」


 火照った身体を冷ますのとまずベリルくんを先に着替えさせるために、バスタオルを巻いたままの恰好で、首を傾げながら訊いてくるシャロンさんからベリルくんのタオルを受け取って濡れたクセ毛をなるべく丁寧に拭いていく。


「私、すごくお姉ちゃんっ子なんですよ。それこそ周りの人が心配してくるくらいに大好きでして。その人たちからしたらどうしてあんな人をそんなに好きなのって疑問に思うくらいに色んな面がめちゃくちゃなお姉ちゃんなんですけど、私にとってはたった一人の大好きな姉で、無愛想で厳しいけど強くてカッコイイ頼りになる自慢のお姉ちゃんなんです」

「お姉さまをとてもお慕いしていらっしゃるのですね」

「はい。男の人にも負けないくらいに強いお姉ちゃんだけど、やっぱり少しは心配なわけでして、無茶ばっかりしてないかなーって思ってたんです」

「ニコさま……」

「まぁ、私が心配したところであのお姉ちゃんが無茶をしなくなった例はないんであんまり意味がないんですけどね」

「そのようなことはありません。私にも実の姉のようにお慕いしている方がいらっしゃいますが、その方を想わない瞬間はありません。……たとえその方のお耳に想っていることが入らずとも、想うことは自体は無駄ではないとある人に教えて頂きました。その祈りがいつの日か報われるときが必ずやってくると、想いが運命を変えることもあるのだと。ですから、ニコさまも意味がないなどと仰らないで下さい。ニコさまの想いはきっとお姉さまにも届き、無事にニコさまと再会できるように働いて下さいますから」

「…………う。ニコ、だいじょーぶ……」


 無駄なんかじゃない、か。

 本当にそうなったらいいな。ううん、そうなるようにお姉ちゃんの無事を祈ろう。


「ありがとう。シャロンさん、ベリルくん」


 シャロンさんの柔らかな微笑みとベリルくんの小さな頷きに笑い返しながら、水滴と一緒に頬を伝って来た一筋の涙を静かにタオルで拭いた。


 それからベリルくんの着替えを済ませてアンヌさんが用意してくれた一般的な服――最初は煌びやかなドレスが置いてあったので断りました……――をシャロンさんに手伝ってもらいながら何とか着た。

 ……一般的な服なのにコルセットがついているなんて。

 でもあのドレスよりはマシだよね。あっちのウエスト絶対におかしい。絞り過ぎて死んじゃう。口から胃が出てきちゃうよ。

 やー、それにしても本当に汚かったんですね、私……。

 お風呂の前と後での肌の色が全く違っていました。なんか黒かったです……。乙女としてもショック。

 そんでもってさっちゃんがいなくて良かったなぁ。

 あの子、私よりも私の肌のことをうるさく言うから。

 まぁ、おかげでいつもモチモチスベスベでした! ありがとうっ!


 しかしですねー。何でか知らないんですけど、どこかでシャロンさんのスイッチが入ってしまいまして軽くイジられました……。あんな輝いた瞳を向けられたら断れないよッ!!


「とてもお綺麗でございますよ」

「そーですか……?」

「はい」


 ……満足そうですね。

 私的には「鏡で映った人誰!?」状態な劇変ぶりでビックリです。

 これで薄化粧なんですからもっと驚きですよねー。

 いや、大変可愛くしてもらったんですけど、何か照れくさくって……。

 あれですね。メイドさんのメイク技術すごい。……すごいけど何か言い知れない恐怖を感じたのは気のせいじゃないはず……。


「…………ニコ、かぁい」

「ありがとう、ベリルくん」

「本当に大変お可愛らしくお綺麗ですよ」

「シャロンさん持ち上げ過ぎです」

「ところでニコさま」


 スルーされた!?


「何故その髪飾りだけはお外しにならないのですか?」

「これは私の宝物なんです。見た目は古いんですけど一番の宝物だから外したくないんです」


 淡いピンクの花柄のシュシュ。

 これだけはシャロンさんにムリを言って髪に付けてもらった。

 だってこれは私とお姉ちゃんを繋ぐ大切な宝物。

 お姉ちゃんに会うまでは出来る限り付けていたかったから。



 そして慣れない服と靴でヨロヨロと変な歩き方をしつつアンヌさんが待っている部屋に着くと。


「ニコさま、お湯加減は如何でございまし――……」

「?」


 あれ? アンヌさんだけじゃなくて周りのメイドさんや執事さんっぽい人たちが一斉に固まっちゃいました。……そんなに似合いませんか!? なんなら制服に着替えて、


「…………モルガさま……」


 モルガさま?

 誰?



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