可哀想な私を魅て
人の愛されるべき姿はホンモノかニセモノか
私は、人に好かれる方法を知っている。
そんなに難しいことじゃない。
その人が好きそうな顔をして、その人が喜びそうなことを言えばいい。
雑誌に書いてあるような男の子が好きな表情、服装、言動をすればちゃんとモテる。
小学校のとき、それに気づいた。
クラスに一人はいる明るい子。
誰とでも仲良くできる面白い子。
男子に人気の、ちょっと天然な子。
困っている子をほっておけない優しい子。
私は、その全部になれた。
その場で一番好かれる女の子を選んで、着替えるみたいにキャラを変える。
そうすると、みんなちゃんと笑ってくれる。
「ゆいこっておもしろいよな」
「一緒にいると楽しいわあ」
「クラスの女子の中で絶対可愛い方に入るよなあ」
その言葉を聞くたびに、胸の奥が少しだけ安心する。
ああ、大丈夫。
今日も私は、ちゃんと好かれている。
でも、ふとしたときに思う。
じゃあ、本当の私はどこにいるんだろう。
明るい私?
天然の私?
それとも、どれでもない私?
……まあ、いいか。
どうせ誰も、本当の私なんて見たがらない。
みんなが見たいのは、好きになれる私だけだ。
だから私は今日も、その「好きな私」を作る。
高校に入って最初の春の日も、そうだった。
教室の窓が開いていて、風がカーテンを揺らしていた。
ざわざわしたクラスの声の中で、私はいつものように笑っていた。
そのとき、窓の外からスケートボードの音が聞こえた。
ガラガラ、と乾いた音。
思わず目を向けると、校庭の端で一人の男子がボードを蹴っていた。
ラフなパーカー。
少し伸びた髪。
笑っているのか、睨んでいるのか分からない目。
ハーフなのかな?あの感じ。
クラスの誰かが言った。
「孝之助しょっぱなからいかつすぎ笑」
私はその人を、少しだけ長く見てしまった。
その瞬間、彼もこっちを見た。
ほんの一瞬、目が合う。
私は反射的に、いつもの顔を作った。
少し天然で、少し無邪気な、
男子が好きそうな笑い方。
彼は一瞬だけ眉を上げて、すぐに視線をそらした。
なにか手に入れなければならない耐えがたい衝動を自分の中に感じた。




