第51話:遊戯と平和――リオン式第三形態、ゲームで戦争を超えてゆけ!
ユニオン・クロス都市、未来記念公園中央ステージ。
その日、リオンは宣言した。
「次の教育は、“戦わないための戦い方”を教える。」
「これが、リオン式第三形態――《戦争のゲーム化》です。」
場内が静まり返る中、リオンは自信満々にスマートフォンを掲げた。
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《VR魔導装置・エデュプレックス》――
魔石による感覚転送術とスマホ連携により、視覚、聴覚、触覚、重力感覚、さらには軽度の魔力感応までも共有可能な“仮想空間共有システム”だった。
これにより、プレイヤーたちは“本物さながらの戦場”や“極限環境”を体験できるが――
実際の血は流れない。
身体は安全に保たれ、データと感覚のみがやり取りされる。
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最初に発表されたのは、シミュレーション型
・地形生成は実際の国土情報に準拠
・魔導兵器、気候、補給戦などリアル再現
・国ごとに軍事理論、交渉力、戦略AIの研究成果を投入可能
各国の軍部は、実戦の代替としてこのVR戦争に参加することを選びはじめた。
勝敗で得られるのは、威信と協定変更権のみ。
だがその緊張感は、現実以上だった。
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そしてもう一つ、より民間向けに開発されたのが――
《VRスポーツリーグ・コスモ・アスリート》
魔導空間で繰り広げられる“超感覚競技”
・空中三次元ラグビー
・重力制御フットレース
・魔力障害物スキー
・術式チェス・ライブ対戦
個人戦から国家対抗戦まで、エンタメとスポーツが融合した巨大な新産業となった。
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さらに、教育型エンタメとして
《VR冒険譚型RPGシリーズ・リオンクエスト》が開始。
・歴史・言語・地理・論理・魔術理論を“体験しながら学べる”構成
・クイズや実技をクリアして進む知識型RPG
・学んだ内容が実際の試験・就職・特許評価にも反映される
老若男女が“遊びながら学び、競いながら仲間を得る”世界が、ついに現実のものとなった。
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そして、リオンは締めくくる。
「本当に争いたいなら、数字で勝てばいい。」
「勝ちたいなら、よく考えて、よく学んで、よく遊べばいい。」
「それなら、誰も死なない。“平和”って、そういうことじゃない?」
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リオン・フォン・エルトレード、6歳と6ヶ月。
彼が築いたのは、“遊びが戦争を超える世界”だった。
それは、教育の到達点であり、可能性の始点でもあった。
つづく。




