第49話:繋がる都市、瞬く命、守られる未来――すべてを結ぶ世界の輪郭
大陸中央部、かつて無人だった高原地帯。
そこに、今、巨大な建築工事が進行していた。
計画名――《ユニオン・クロス都市計画》
これは、王国、東方帝国、南大陸連合、そして新国家アーグラの四国が共同で建設を進める、
“国境なき中立連携都市”の誕生だった。
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都市の核にあるのは、《リオン式・転送拠点複合中枢》。
各国からの“直通転送路”が都市中心部に通じ、
一瞬で国境を越え、物資、人材、知識が流れ込む。
その結果、医療、研究、教育、物流、すべてが“国籍不問”で共有される。
通称:クロスポイント。
ここは、“大陸で一番、遠くて近い都市”として語られるようになった。
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さらに、この拠点から派生した新たな部隊が組織された。
《転送災害支援隊(MTR)》
・災害時、現地に転送で即時展開
・スマホで被害状況を自動共有
・医療部隊、資材班、魔術補助班が連携行動
《転送医療特化班(M-MED)》
・各地の転送医療施設と連携
・緊急時、重症者を即座に専門病院へ
・治療記録はスマホで即時医師に送信
いずれも“助けを求める場所”と“助けられる手”を、距離なく繋ぐために生まれた仕組みだった。
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その支柱となるのが、スマートフォンによる《個人識別魔導式(MSID)》
個人の身分、年齢、医療履歴、災害時の位置情報、通報機能、発信制限――
すべてを“本人の同意のもとで”運用し、“自らの生活を守るために使える”仕様とされた。
リオンはこう語る。
「管理じゃない。“信頼”だよ。」
「安心して生きていい、って証明が“スマホ”なんだ。」
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ある街では、迷子の子供がスマホをかざして“保護モード”を起動し、
一瞬で親元へ転送された。
ある夜、暗がりで脅されていた女性が“非常スライド”を使い、
護衛士が3秒で転送されてきた。
ある村では、土砂崩れで孤立した住人たちが“自動位置共有”で全員救出された。
誰もが口にした。
「ここまで、“守られている”って、感じたのは初めてだ。」
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リオン・フォン・エルトレード、6歳と4ヶ月。
彼が創ったのは、都市でも、軍でも、制度でもなかった。
“繋がり”そのものだった。
それが、世界を救い、支え、未来へと導く。
つづく。




