第48話:移動を制す者が、未来を紡ぐ――魔導転移、インフラの夜明け
王国育成庁・第七技術区画。
そこに立ち上がった新プロジェクト。
《魔道式移動装置 民間転用開発計画》
リオンが発した一言が、すべての始まりだった。
「“話せる”だけじゃ足りない。“会える”ようにしようよ。」
こうして、通信魔術を応用した“転送投影式・魔導転移装置”の開発が始まった。
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基本設計はこうだ。
・スマートフォンによる個人認証
・転移装置との“術式接続”による位置固定
・魔力波を使った“座標召喚・転位術”の制御
・転移術式の消費魔力は、リオン式魔力供給網(通称:リス電)から課金式で供給
利用者は、自分のスマホから“移動申請”を行い、定額魔力プランの範囲内で転移装置を利用できる。
魔力を持たない者でも、“転送インフラの恩恵”を受けられる社会へ――
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試験都市での実証実験では、以下の効果が確認された。
・都市間移動時間:従来の馬車→2日→スマート転送→“4秒”
・災害時避難:都市部→郊外安全拠点へ1時間で3万人移送
・緊急医療転送:重症者を専門治療所へ即時転送
市民の声は、一様に高揚していた。
「仕事が終わったら、母の畑仕事を手伝いに一瞬で飛べる!」
「遠く離れた婚約者にも、毎晩会いに行けるようになったんです!」
「“通話できて転移もできる”……これが、スマホの進化か……!」
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そしてリオンは次の構想を口にする。
「この移動システムを使って、遠隔地の工房と畑、研究所と学校、病院と薬師を“直接”つなごう。」
「“離れている”という制限を、完全になくしてしまおう。」
こうして、各地に“転送拠点”が整備され始めた。
村には、都市の技術が届いた。
山には、海の恵みが届いた。
国と国、島と島、人と人が、空間を超えて“つながる時代”が始まった。
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リオン・フォン・エルトレード、6歳と3ヶ月。
彼の「つながりたい」という願いが――
今、世界を“ひとつの地図”に変えようとしていた。
つづく。




