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転生特典のない俺は最強の布陣で異世界に挑む  作者:


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32/60

第32話:戦を止めるのは、剣でも金でもなく、“知”だった

場所は、両国の国境にある旧修道院。


ここが、王国と帝国の和平交渉の場となった。


王国側代表:宰相デュラン、軍務卿ライナー、そして育成庁代表――リオン・フォン・エルトレード。


帝国側代表:元帥バルゲン、宰相エルベルト、外交補佐官ロザリエ。


その中央に、静かにリオンが座る。


誰よりも小さく、だが最も重い言葉を持って。



---


会談は、王国側が完全に主導。


「王国はすでに帝国軍を各戦線で包囲。現在は貴国の自発的撤退によって無血回収が進行中。」


「さらに補給線断絶により貴軍の継戦能力は大幅に低下している。」


「戦を続ける合理性は、貴国側にはないと判断されます。」


帝国側は、言葉を返せない。


事実が、すべてを語っていた。


そこでリオンが、口を開く。


「……降伏条件は提示します。でも、それは“命令”じゃない。“提案”です。」



---


【和平条件】(王国→帝国)


1. 帝国は戦闘行為の完全停止と撤兵を行う


2. 今後10年に渡る定期交流会談の設置


3. 王国からの“リオン式教材”の安定供給


4. 帝国側各地に分校設立支援(希望制)


5. 帝国民の希望者に対する“育成庁研修”の提供


「我々は、戦わずに済む力を渡します。“戦いの強さ”ではなく、“戦わなくてもよくなる力”です。」



---


帝国側、沈黙。


そのとき、外交補佐官ロザリエが立ち上がる。


「……どうして、そこまでして“教える”のですか?」


リオンは、しばし沈黙した後、言った。


「“教える”って、“信じる”ってことだから。」


「あなたたちは、変われるって思ってる。だから渡す。力じゃなく、“希望”を。」



---


帝国宰相エルベルトが深く、頭を下げた。


「……この条件、受け入れます。共に歩みましょう。新たな“学びの時代”を。」


会談は、和平で終わった。


だが、それは“始まり”でもあった。



---


リオン・フォン・エルトレード、4歳と11ヶ月。


彼は、剣も振るわず、血も流さず、国を救った。


そして、別の国も、救おうとしている。


次に始まるのは――“帝国教育改革”である。


つづく。

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