第19話:「学ぶのは子供だけだと思ってる?」 by 4歳児
「問題は……親だな。」
フォローアップ班の報告を読み終えた俺は、ついに“根本”に手をつける決意をした。
「子供が変わるには、大人も変わらなきゃ意味がない。」
「リオン様……それを、まさか……?」
「うん、やる。親の特別授業、俺がやる!」
ロルフさんが無言でメモを取り始めた。今やもう「リオンの唐突な決断→体制構築」は通常業務だ。
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まずは育成所への“保護者招待制度”を試験実施。
地方から親たちを招き、数日間滞在してもらう。
内容は食事、見学、体験、そして最後に「リオン特別講義」!
「緊張してきた……。」
「リオン様、いつもの“偉そうでちょっと生意気な風”で大丈夫です。」
「どんなアドバイス!?」
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中庭に集められた約30名の保護者たち。
農民、木工職人、魚屋、元兵士、酒屋の女将……多種多様な“大人たち”が並ぶ中、俺は台に立った。
「皆さん、こんにちは。育成所代表、リオン・フォン・エルトレードです。」
ざわ……と空気が動く。
「うそ……あの子が代表……?」
「まだよちよちしてるような……。」
よちよち言うな!ちゃんとしたステップだこれ!
俺は咳払いし、堂々と宣言した。
「今日は“教養の必要性”についてお話しします。テーマは――“学ばない大人が、子どもの未来を壊す”。」
空気がピシッと固まった。
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「子供は、“見たものをまねる”んです。
字を読まない大人を見れば、“字は読めなくていいんだ”と思う。
学ぶことを馬鹿にする大人を見れば、“勉強しても意味ない”と思う。
……それ、ほんとに言いたいことですか?」
数人が、うつむいた。
「もちろん、大人になると忙しい。わかります。
でも、たった10分でもいい。本を読むふりでもいい。
“学ぶってことは、かっこいいことなんだ”って、背中で見せてください。」
老いた漁師がぽつりと漏らした。
「……わし、読み書きできねぇ。でも、孫に“かっこいい”って言われてみてぇな。」
「その気持ちがあれば、もう始まってます。ようこそ、リオン養成所・親の部。」
その場にいた全員が、笑った。
俺は締めの言葉を口にした。
「子どもは育つ。でも、大人も“育て直し”できる。
だから俺たち、大人も、がんばりましょう。」
拍手がわき起こった。誰も俺の年齢を口にしなかった。
このとき、俺は“先生”だった。
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リオン・フォン・エルトレード、4歳と1ヶ月。ついに“大人に教える側”に立った、冬の光差す午後である。
つづく。




