第15話:帰れる場所があるという安心が、人をまた歩かせる
ある夜、寝る前の俺の枕元に、ロルフさんがそっと差し出したのは――
「リオン様宛ての手紙が、また数通届いております。」
「また……って、最近めっちゃ増えてるよね。」
それは、俺が送り出した元部下たちからの便りだった。
毎週のように誰かが送ってくる。報告もあれば、相談も、ただの近況もある。そして、今回の手紙の一つに、俺の目が止まった。
それは、王立魔術院で研修を受けているはずの、サーシャからだった。
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『リオン様へ
こんにちは。元気ですか?
わたしは、元気では……あるけれど、ちょっとだけ、心がしんどいです。
まほうの勉強は好き。でも、まわりがすごすぎて、ぜんぜん追いつけません。
わたし、“すごい”って言われて送り出されたけど、ここじゃなかったのかも……って、思うときがあります。
リオン様が言ってた、「迷ったら、戻ってこい」って言葉、ほんとに戻っていいのかな。
ごめんね、へんな手紙で。
サーシャ』
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「……あのバカ真面目が、ここまで書くってことは、よっぽどだな。」
俺はすぐに、便せんを広げた。
文体は“ちょっと大人風”。
でも内容は俺らしい率直なものにした。
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『サーシャへ
お前が今しんどいのは、“ちゃんと戦ってる”証拠だ。
才能あるやつが、才能の塊に囲まれると、必ずぶつかる。自分が“普通”だと思う瞬間が一番きつい。でも、それは成長の種でもある。
戻ってきてもいい。うちには“再育成制度”ってのを作った。別の道を探して、もう一度送り出す。それが俺のやり方だ。
でも、お前がもう少しだけ頑張ってみようと思えるなら、もうちょいだけ、そこで踏ん張ってみ。
失敗しても戻れる場所があるって知ってるだけで、明日がちょっとマシになる。
リオンより』
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翌日。
俺は“再育成制度”を正式に設立した。
●名称:「リターン・トレイル・システム」
●対象:斡旋後の子供たちで、進路変更希望者
●内容:元所属者への再訓練と進路再斡旋
●条件:悩んだらすぐ連絡すること(恥は捨てろ)
「育成ってのは、人生の道しるべだけじゃなく、“灯台”でもあるべきなんだ。」
「素敵な言葉ですね、リオン様。」
「今、自分で言っててちょっと照れた!」
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数日後、サーシャからの返事が届いた。
『もう少しだけ、がんばってみます。灯台があると思えたら、ちょっと泣けました』
リオン・フォン・エルトレード、3歳10ヶ月。はじめて“帰ってもいい”制度を作った、柔らかくて温かい秋の始まりである。
つづく。




