第12話:育成制度って言ってみたら、両親が本当に事業と思った
「というわけで、君たちは“中級育成コース・特別修了組”に認定された。」
朝の中庭。俺は手作りの木札を配りながら誇らしげに言った。
そこには“中級育成班”の5人と、“初級訓練生”として新たに迎えた子供たちの顔が並ぶ。
訓練メニューは今や3段階制。レベルごとのステージと、師範役を務める中級者という構図だ。
「リオン様!これすごい!キラキラしてる!」
「木札に銀粉ふりかけただけだぞ!」
「うおおおおお!!高級感!」
モチベーション、爆上がりである。
俺はというと、最近は“教育運営”に集中している。
年齢的に限界があるのは自覚済み。
でも、そのぶん“育てた側”としての権威が育ち始めている。みんな、俺を“ちっこいけどすごいやつ”として扱ってくれる。
「問題は人数だな……もう20人超えたか……。」
部屋数ギリギリ、食費も微妙、そして――
「リオン様ー!また子供が門前に!」
「うそ!?誰が連れてきた!?」
「リオン様です!!昨日、スープ屋の裏で拾ってました!」
「おれ!?……あー、記憶にある!!」
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そしてその夜、ついに――
「リオン。」
「聞きたいことがある。」
母と父、同時に部屋にやってきた。いつも優雅で気さくな両親だが、今日は妙に真剣な表情だ。
「最近、やけに子供が多いな。……なにか“事業”でも始めたのか?」
「え、ちが……いや……その……そう見えます?」
「見えるどころか、お前が自作した“育成記録帳”が屋敷の書庫に保管されていたぞ?」
「わぁ!ロルフー!!」
「管理体制として正しいと思いまして。」
両親は顔を見合わせ、そして、ふっと笑った。
「……悪くない。むしろ、非常に良い。」
「才能のなさを早期に理解し、他人を育てることに集中する判断力。なにより、この人数を回して混乱が起きていない。見事だ。」
「おまえのカリキュラム表、母が読み込んで“これは国でも使えるかも”とまで言ってたぞ。」
「やばい、うちの家族、全員スパルタ教育の申し子だ。」
それでも俺はうれしかった。
両親に“評価”されたのが、じゃなくて、子供たちと築いた“この形”が認められたことが。
「……じゃあ、正式に……“リオン育成所”とか名乗っていい?」
「いいとも。“育成庁長官”としての肩書も付けてやろうか?」
「肩書の重みで潰れそう!」
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リオン・フォン・エルトレード、3歳3ヶ月。育成事業家として、家族公認となった春の夜長の出来事である。
つづく。




