第9話「無言の眼と、錆びた義手」
舞台
ヤゴ市場
【1. ヨゴロウの作業小屋】
レイナが袋から慎重に制御チップと放熱モジュールを取り出し、作業台に並べる。
ヨゴロウ「間違いねぇな。悪くない出来だ……ほれ、見とけよ」
ヨゴロウが火花を散らしながら、ユイの義手を分解して再構築していく。
欠損部分には古い医療アームの構造体、神経接続には信号変換器を使用。
ミナ「わぁ……動いてる!」
ユイの右腕が、ゆっくりと、でも確実に五本指で“グー・パー”を繰り返す。
ユイ「……動作、正常……ありがとう、ございます」
ヨゴロウ「まだ粗いつくりだが、戦えはする。使いすぎんな。冷却落ちるぞ」
【2. 市場のざわめきと異変】
三人は補給のため市場をぶらつく。
雑多な人混みの中――異様な沈黙が周囲に広がる瞬間があった。
ミナ「……なんか、空気が変じゃない?」
レイナは素早く頭巾を被り、視線の先を切るように動く。
市場の西口付近に――黒いジャケットの5人組。背筋が真っ直ぐで無駄がない。
企業エージェント。
表情がない
小型端末で人間をスキャン
一人が何かの顔認識データを確認している
【3. 簡易炊き出し場:静かな対峙】
三人は路地裏の炊き出し場で簡易スープとパン代用品を受け取り、小さなテーブルへ。
だが、レイナの視線が一点で止まる。
――向こうの席、立ったままこちらを見ている男。
無表情。黒のジャケット。目線はユイの義手へ。
レイナ(……気づかれたか? それとも――まだ“探ってる”だけか?)
背を向けて歩くレイナの耳元で、エージェントの視線が突き刺さる。
声はかけられなかった。
だが、あの沈黙が――すべてを物語っていた。