52_ガーディアンAIの矜持
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・第七章
「勝手な判断をして申し訳ありません」
赤井の連絡を受けて天則のドームへ駆けつけた周防からイヤーカフを受け取ると、すぐにフレイヤから通信が入った。
「全然大丈夫。むしろ君の判断でロディが来てくれたから解決したようなもんだ」
小津は周防たち警察が現場捜査や検証をしている場所から少し離れたところでフレイヤと通話する。
そして、簡単に経緯を説明して最初に言われたことは「なんて無茶を…」だった。
「そんな危険な場所に向かって何かあったらどうするのですか。というか十分危険な目に遭ってるではないですか。心拍数が通常値より18パーセント高いようです。横になって深呼吸してください」
「大丈夫だよ。過保護だなぁ」
「行動ログを〈高リスク〉判定域に跳躍させた事実は残ります。予防的回避プロトコルの作成が必要です」
「要するに、もっと慎重に動けってことね」
「はい、小津には赤井様やナギサ様のような戦闘力が皆無です。今回のような行動はその自覚が欠如していると言わざるを得ません」
「…相変わらず淡々とディスってくるね。なんだか嬉しいよ」
「その反応は通常と異なります。やはり何らかの心身的異常、もしくは後遺症が―」
「ないない。大丈夫だから。心配してくれてるんだね」
「以前にもお伝えしたはずです。小津に危険が及ぶことは、私のプログラムが許容しません」
その発音はAI特有であるかも知れないが、毅然としていて安心感のあるものだった。小津は少しだけ反省する。
「わかったよ。ありがとう」
「これからどうするのですか?」
フレイヤの問いに、小津はすっかり暗くなっている空を見上げて深呼吸する。
「もう一人、止めなきゃいけない人がいるんだ。ソフィアが言ったように、復讐になる前にね」
ep.52 わからなくても困らない用語
▶︎プロトコル…お約束と読み替えてOKです
「もう一人、止めなきゃいけない人がいるんだ。ソフィアが言ったように、復讐になる前にね」
▶︎【ep.9_ソフィアの依頼】




