ー第7話YouTube
静岡から帰って翌日。
ミュージックショップお友達の狭い店内にメンバーが集まった。貸しスタジオの時間まで、20分有る。
「聡君YouTube見た?」
お友達のおばさんが言う。
「いえ。耳鳴りで、見てないです」
「ファウチ代打バンド50万再生。お友達チャンネル。おっさんが撮ってたの」
「まじですか?」
メンバー全員がスマホを出す。
「すごいすごいすごい」
ミレエメリラが小躍りする。
お友達のおっさんが奥の商品の中からムックリ出てくる。
「ファウチのミヤ剣がね。前座でライブ勉強しないかってさ。オリジナル有るよな?」
ダニーボーイが疑い深そうに言う。
「今日エイプリルフールだった?」
「もう終わった。酔っ払てたんですねミヤ剣さん」
お友達のおっさんは微笑んだ。
「マネのマキさんも素面だった」
「大学どうしよ?サトシ会社どうする?」
「今日は4月16日。来年の5月からアメリカツアーの前座のオファー。考える時間は有る。慌てず良く考えた方が良い」
練習どころではなく、スタジオ内で話合いになった。
「ミレエメリラはどうする?」
フリーゴーが黙っているミレエメリラに聴く。
「お母さんは多分賛成。お父さんは駄目かも。サトシは?」
「家の母親はさ。とっととデビューして出てけって人だから…」
ミレエメリラはサトシを見る。
「会社の徹さん、がっかりする?」
「喜んでくれるよ。でも僕が抜けると仕事が大変になる」
「後輩育てなきゃ?」
「そういう事。来年の5月までに間に合わす」
ミレエメリラの顔がパッと明るくなった。
「サトシのドラムなら、私出来る。お父さん説得する」
ダニーボーイが二人を見比べる。
「いつからそういう事になったんだよ?お父さんの為に式も上げて行けよ」
フッと沈黙が流れた。
フリーゴーが沈黙を破る。
「アメリカツアーだぜ!バンド名は?」
サトシが言う。
「ミレエメリラだ」
「うううん」
「じゃあなんだよミレエメリラ?」
「ミカミバンド×(バイ)ミレエメリラ」
ダニーボーイが上を向いて考える。
「カッコいいじゃん」
バンド名は決まった。