ー第5話ライブ
開場され、2万7000人が会場を埋めた。
洲応社長がゆっくりとセンターマイクに向かう。
聡はドラムセットの後ろで、イヤモニをして、アルバイトテックになる。ダニーボーイはギター側で、フリーゴーはベース側でアルバイトテックになっている。
ミレエメリラはセンターの後ろで待機。
「本日は多くの皆さんにお集まりいただき。ありがとうございます。ご案内の通り、ファウチの風メンバーの乗った新幹線が強風により運行停止となりました。ですがメンバーは車輌でこちらに向かっております。19時以降に到着する予定です。ライブは19時以降メンバーの到着次第行います」
会場がどよめく。
「…現在18時。それまで、スタッフによる演奏でお楽しみ下さい」
洲応社長が去り、ミレエメリラがセンターに立つ。会場が騒然となり。罵声が上がる。
マニュピレーターの「Go!」の声がイヤモニに入る。テックとアルバイトのライブが始まった。
ポンポンさんの作った刺さるチューニングの音が弾ける。ファウチの風のデビュー曲「やってらんねえ」が始まった。
ミレエメリラが震える声で歌い始める。
沁みるような歌に、罵声が止んだ。
会場の後ろから観客が歌い始め、全体の合唱になる。
1曲目が終わり、観客は悪くないと熱狂し始めた。ファウチの風のファンは、テックとアルバイトのファウチ愛に気付いたようだ。
2曲目「ルンルンラルルー」の途中で、カサカサと云う音が入り始めた。
ー聡。スネアの針金が切れてマイクを擦ってる。道具箱からニッパーを探して切れ!ー
ポンポンさんがドラミングしながら叫ぶ。
ニッパーニッパーと言いながら、マグライトで道具箱を探る。
ー焦るな。落ち着け。黄色の蛍光テープがついてる!ー
聡は見つけて、椅子の下をくぐり、ピンと立って震えている針金を切った。
ーいいぞ!飯おごってやる!ー
聡は針金を丸めて、記念にポケットに入れた。