ー第3話アルバイト
聡はGrandmenuに夢中になった。
バンドの仲間にも聴かせると、コピーする事になった。ボーカルの本名桜井まる事「ミレエメリラ」は男性ボーカルに躊躇したが、歌ってみると悪くなかった。
私はセクシーグルービー
ロックンロールウイドウ
でもその歌だったら
浮気したげてもいいわ
ロックンローラー
溶けちゃいそう
ロックンローラー
その声で
ロックンローラー
逝っちゃうわ
エンディングを決めると、全員が大爆笑する。
「なんて歌詞だよ?明らかに翔んでるな?」
ギター本名美南谷政人事「ダニーボーイ」が、ベースの本名布里駒豪事「フリーゴー」に言う。
「でもさ。作詞がKoriだから女かな?私はセクシーグルービーだもん」
ミレエメリラが神妙に言う。
「これラブソングだよ」
聡が言う。
「判るな。でも意外に照れ屋かな」
ダニーボーイが神妙な空気を止める。
「グランがラブソング?ないない。次オリジナル行くぞ」
終わって、倉庫のような店内でミレエメリラが使用料金を払う。
お友達のおばさんが、紙を差し出した。
「…アルバイト募集。音楽機材の運搬設置…ファウチの風ワンマンライブかぁ…」
「やってみる?お友達のおっさんの手伝いだけど?勉強になるよ?プロの機材とかセッティングが見られかもよ?交通費食事は無料。アルバイト料は5000円。ライブはタダ」
全員がミレエメリラの肩口から募集用紙を覗き込んだ。
「スゲー。ファウチはチケット取れない。行こ行こ行こ!」
「学校は?月曜で静岡だよ?」
三上以外は大学生だ。
「オレはまだ叔父さん殺してないから、冠婚葬祭でやすめるよ。三上は?」
「大丈夫。お母さんは音楽なら許してくれる。ミレエメリラは?」
「三上が行くなら行く」
「ヨシッ!お友達のおばさん。僕らアルバイトやります!」
商品の山の中でお友達のおっさんが微笑んでいた。