ー第1話オフセットプリンティング オペレーター
手は真っ黒。印刷用紙を印刷機に積む為、人差し指が細かく切れ、インクが入って落ちない。背が低いので、腹部が当たりインクで汚れる。もう1時間待っている。
原稿の間違いが有り、訂正に手間取っている。
「サトシ。明日に延期。片付けて帰る」
印刷機長の徹さんが言い、仕事は終わりになった。
中古のローバーに乗り込み、鏡島大橋に向かう。降りて右折して、十六銀行の裏にローバーを止める。十六銀行の駐車場だが支店長は黙認してくれる。ファンキー末吉モデルのドラムスティックだけ持って降りる。スマホにカードケースに、金はポケットに小銭が少々。
表に回って、ほとんど倉庫みたいな小さな店舗に入る。「ミュージックショップお友達」が名前。音楽機材とギターにレコードCDDVDが思い付きとしか思えない有り様で、狭い店舗に積み上げられている。しかし、この中から一発で商品を引き出せる魔法使いが、店主の「お友達のおっさん」だ。
「お友達のおっさん。仕事終わっちゃったんで来ました。座ってて良いですか?」
埋もれるようなレジから「お友達のおばさん」が言う
「ミレエメさんの人ね?18時からだけど、空いてるから入っていいですよ?お金は18時からで良いよ」
「マジですか!お願いします!」