ー第9話説得
大江千裕はわざわざミレエメリラの家に来てくれた。グッズを段ボール箱にいっぱい持って。
嬉しさを隠せないが、許しは出ない。
膠着状態になった。
「桜井さん。私のマネージャーをね。付けます。元々ハリウッドでショービジネスをやってましてね。私が強引に引き抜いた。ハリウッドに戻してやりたい」
「そんな。あんな馬鹿娘の為に」
「いや。娘さんは馬鹿じゃありませんね。試しにコンサートのスタッフにね来てもらいました。細やかだ。歌もうまい。世界で通用する人だ。どうかチャンス与えてやって下さい」
なんと演歌の大御所が手を突いて、頭を下げた。
「そんな…頭を上げて下さい」
「お許しをいただけますか?」
「いや心配なんですよ。性的に緩い世界でしょ?」
「すべて緩い訳では有りません」
サトシが進み出た。
「ミレエメリラ、いやマルさんは僕が守ります。僕を信じて下さい」
サトシは桜井お父さんと睨み合う。
「守れなかったら?」
「死んでお詫びします」
ダニーボーイとフリーゴーも言った。
「僕達も死んでお詫びします」
大江千裕も顔を引き締めて言う。
「私も、死んでお詫びします」
桜井お父さんは陥落した。




