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番外編1 銀の左手

蒼い肌に長い黄色髪の男は、元王女を仕留め、妖精の森へ戻って来た。

「首尾は?」

「指示された通りだ、兄者」

「ご苦労だったな」

蒼い肌に長い黄色髪の男は、兄に労われた。


二人は双子の兄弟だったが、兄の方は森から出られないため、森の外での任務は弟が全て請け負っていた。


兄がこの森から出られないのは、妖精の女王の逆鱗に触れたからだ。

彼はかつて一族ではない人間をこの森に入れてしまったのだ。


当時まだ若かった彼は、面倒事に巻き込まれた手負いの人間を放置できずに、追っ手から隠すために森へ引き入れた。

その者が傷を癒し一人で森を出てゆく体力が回復するまで、食べ物を与え匿った。


しかし女王の知るところとなり、その助けた者は女王によって消され、兄も殺されかけた。

それを庇った弟が右腕を失うことになったが、その時兄も同時に左腕を失った。


二人の腕は再生すると、硬質な銀の輝きを放つ手を持つようになった。

古びたマルカジットのような右手と左手をそれぞれが持つのはそのせいだ。


彼らが自在に扱う毒蛇は、互いに切り落とされた自分自身のかつての腕が変容したものだ。


そうやって彼らは妖精の森の番人としての厳格さを身に付けて行った。


彼らがひれ伏す妖精の女王は、兄の助けた人間を消したのではなくて、森での記憶を消して王家へ戻した。元々その末裔だったからだ。


その王家はベシュロムだった。


女王は王族さえ妖精の森へ入れることを許さない。


兄が助けた王家の末裔が、真の王族である妖精公爵一族を害するようになった現実を、二人は己の甘さに忸怩(じくじ)たる思いを噛みしめていた。


『そちが助けた血に滅ぼされてはならぬぞえ』


この後始末は、自身でするしかあるまい。


自身が助けた者の末裔を自分の手で滅ぼす、それが自分の贖罪なのだ。


幕引きは自分の手で。


滅びを招く者は、助けても結局は自ら滅びを選ぶのだ。



彼は森の入り口へ歩を進め、カレン·バディムへ放つべく、その鈍い銀色を放つ左手で毒蛇を掴んだ。



(了)

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