表と裏を合わせたら 1
お父様やお兄様のように、私には妖精は見えないし、妖精とも話せない。だから、妖精の啓示も受けることもできなかった。
妖精公爵の一族ならば、みな妖精が見えて啓示も受けることができるのが当たり前なのだと小さな頃は思っていた。
でも、そうではないことを、自分自身が誰よりもよくわかるようになった。
アリステア兄様ばかり見えてずるい、レイモン兄様と私は見えないのに。
なんて思ったりもしたけど、それは口に出したことはない。
「見えない方、聞こえない方がいいこともあるぞ」
「妖精の啓示や妖精の言うことに翻弄されたり悩んだりしない方が楽だよ」
お父様とアリス兄様は時々そんなことを言っているからだ。
自分の伴侶についての啓示を自分で見たり聞いたりできるなんて素敵なのに。
私はそれができないから残念なの。
そんな私だから、きっと普通に王立学園に通い、家格が釣り合う貴族の誰かに嫁ぐのだろうなって思っていた。
平凡な結婚でも、お父様のような愛妻家と結婚できたら幸せだろうな。
レイモン兄様も文官として王宮勤めをし、フィオナ様という素敵な婚約者もいる。
なのに、お父様が私の結婚についての妖精の啓示を受けたら
『表と裏の王家の血を混ぜよ』
なんて言われてしまったのよ。
それって、私は王家へ嫁ぐ、王族と結婚するということよね?
自分も家族も驚いていたら、それからすぐにシャゼルの第二王子の妃候補の打診が来てしまったの。
「大丈夫、なるようにしかならないから」
お兄様達はそう慰めてくれたけれど、お父様は少し難しい顔をしていた。
「将来的にベシュロム王家は滅びるだろう。お前達の代か子の代ぐらいで、何か大きな動きがあるかもしれない。ジュリーが王家に入るということは、その布石もあるのかもしれないな」
「ベシュロム王家へ嫁げということではなくて良かったですね」
「まったくだ」
母も父と結婚するまでに、ベシュロム王家から横槍を入れられたり暗殺されそうになった人なので、ベシュロム王家には良い印象がない。
シャゼル王家がどのようなものかはわからないけれど、少なくともおとぎ話の世界の王家とは違うのだろうなとうっすら感じていた。
その時はまだ私は12歳だったから、表と裏を合わせたらどうなるかなんて想像することもできなかった。