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【相談スレ】ワイ悪の組織の科学者ポジ、首領が理不尽すぎてしんどい【掲示板形式】  作者: モトオ
本編

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34/76

Lリアちゃんのこと


 リリア・ヴァシーリエヴァが神霊結社デルンケムに身を置いたのは今から二年と少し前のことである。

 日本で生まれ育ったリリアがロシア人の母の姓を使うのは、単純に父を嫌っているからだ。働かない父と虐げられる母。リリアが中学生の頃に母は亡くなり、父は下品な笑みを浮かべて言った。


『高校にいかず働け。その見た目ならいくらでも稼げるだろうが』


 当時十五歳だった彼女を男に売ろうとするゲスだ。しかし子供は親に逆らえない。リリアは当たり前のように売り飛ばされた。


『いらないなら私がもらおうじゃないか。まったく、世間には親を名乗るべきでない者が多すぎる』


 ただなにかの手違いで、リリアは売春組織ではなく悪の組織に連れ去られた。

 目隠しをされていたせいで顔を見ることはできなかったが、少し冷たそうな男の人の声だった。

 彼女は実の親に売り飛ばされ、悪の組織の誰かに救われたのだ。

 

 デルンケムでの立場は戦闘員。名前こそ物騒だが内実は会社における社員に相当する。

 本当に戦うのは総合戦闘局の戦闘科の人員くらいで、組織の運営のために総務科や通信システム科、厚生科などが存在している。

 また戦闘員の中でも幹部直属の部隊があり、カーム・セイン幹部付きなら研究開発の分野を、ルオナ幹部付きなら諜報関連を、といった具合に専門性の高い業務を負うらしい。

 リリアが配属されたのは通信システム科。

 基地内の連絡放送・出撃部隊との連絡確保、機材の管理。また索敵情報取得及び各部通達等も通信システム科の業務だ。

 配属された理由は幹部であるミーニャ・ルオナから聞いた。


『戦闘する機会がほとんどない部署だから。うちにはそういうのを気にする人がいる、にゃ』 


 日本侵略を掲げる組織だからこそ、日本で生まれ育ったリリアを矢面に立たせたくないと考えた人がいるそうだ。

 父親よりも侵略者の方が優しいとは笑い話にもならない。

 悪の組織での生活は日本での暮らしよりも遥かに楽しかった。

 まだ幼いアイナ・ルノ・リハー。少し年上のサーヤ・カナ・ナヅナウ。同じ通信システム科の少女たちとも仲良くなれた。

 もっとも、声をかけてもらえた理由は「リリアがつらい境遇だと思って」だったが。

 

 どうも彼女達の産まれた世界では、名前は【個人名】・【守護名】・【家名】で構成されるらしい。

 守護名とは、両親から「この子を災厄から守ってください」と願い与えられる名前。通常だと五歳までは守護名を名乗って過ごすそうだ。

 だから守護名のないリリアを、親から愛情を与えられなかった捨て子だと思ったようだ。似たようなものではあるのだが。

 

 ともかく、新しい居場所でリリアは懸命に働く。それが恩返しになると信じて。

 だからこそ彼女はこの組織の奇妙さに気付いてしまった。


(部署は区分されているのに、結局ハルヴィエド様が仕事している⁉)


 そう、真剣に働けば働くほど見えてくる歪さ。

 悪の組織なのに全体的に牧歌的、にもかかわらず一人だけブラック企業の社畜のように働き続けている。参謀として計画立案した後に実働部隊として出撃した際は、出来の悪いコントを見せられている気分になった。

 だというのに、科長がロリコンだからと働かない戦闘員。

 とりあえずハルヴィエドに振ればなんとかなると思っている首領。

 ハルヴィエドの膝枕で眠るミーニャ。

 首領が男か女かで争っている時はさすがのリリアもキレて「そんなのどっちでもいいから働いてくれませんかね」と言ってしまった。

 あと戦闘員スーツに関して陳情したら結局ハルヴィエドの仕事になった。すっごくごめんなさい。


(なにこの一人ブラック体制。デルンケムすごく危険です)


 皆のほほんとしているが、ハルヴィエドが過労で倒れた時点で組織が崩壊する事実に誰か気付いてほしい。

 だからハルヴィエドが補佐役を求めていると知った時。その候補に選ばれた時、リリアは心から喜んだ。


『お任せください。必ずや私が、ハルヴィエド様の負担を減らしてみせます……!』


 彼女は燃えていた。

 苦痛しかない日本から救ってくれた組織のために頑張ろう。

 そして女性戦闘員のために徹夜して防御用魔道具を作り続けるお人好しな幹部がせめて週休二日はとれるように、補佐役の任に全力で当たるのだ。







334:名無しの戦闘員

 首領ちゃんってやっぱり外に出ないの?


335:名無しの戦闘員

 正直害悪度で言ったら喫煙者の方が上

 首領ちゃんのためにも喫煙者を滅ぼそうぜ


336:名無しの戦闘員

 病気の件がなくてもデルンケムのお偉いさんが気軽に出歩いちゃダメだろ


337:名無しの戦闘員

 あれ? ハカセは?


338:名無しの戦闘員

 ハカセはその……ハカセだから……


339:名無しの戦闘員

 首領ちゃんお菓子屋さんに連れてってあげたい

 絶対お目目きらきらにして喜んでくれる


340:名無しの戦闘員

 悪の組織のトップとして確実に間違ってるイメージなのに簡単に想像できるのが嫌だw


341:ハカセ

 うーん、たまには外でお散歩もええと思うんやけど本人が乗り気やない

 いっそフィオナたん達とお友達になってくれたら楽なんやけど


342:名無しの戦闘員

 友達になれる? 

 みんないい子なのは分かるけどさ


343:名無しの戦闘員

 下手すると速攻バトル展開

 大切なモノを奪おうとする相手は好意的にゃ見られん


344:ハカセ

 侵略者と正義の味方じゃ衝突は避けられんわな

 そもそも首領はまだ先代に報いるって考えを改めとらん


345:名無しの戦闘員

 でも最近ハカセちょっと余裕ある感じじゃない?


346:名無しの戦闘員

 昼の書き込みも時々あるよな


347:ハカセ

 資金もそこそこやし補佐役が頑張ってくれとる

 首領が肩叩きしてくれるし、実際わりと楽になっとるよ

 問題がないとは言わんけど


348:名無しの戦闘員

 なんかフィオナちゃんともちょこちょこお話してるみたいだしなw


349:名無しの戦闘員

 二十六歳の遅れた青春……むずがゆいぜ


350:名無しの戦闘員

 また戦闘員がやらかした?


351:名無しの戦闘員

 デルンケム相変わらず問題多いね


352:名無しの戦闘員

 安定してきたってことは裏ではそこそこ侵略が進んでるのか……


353:名無しの戦闘員

 これは濃厚なハカセ酷使の予感。なにか悩みがあるなら聞くぞ?


354:名無しの戦闘員

 隠し切れない笑いへ期待


355:ハカセ

 >>348

 この前ついにフィオナたんとお手々繋いだぞ!


 やらかしたって言ったらやらかした

 そして笑い話じゃないレベルになってきとる

 実は最近、補佐役のLリアちゃんがすこぉし難しい感じなんや


356:名無しの戦闘員

 そこまで言うとなるとマジなやつっぽいな


357:名無しの戦闘員

 意外な名前出てきたぞ。


358:名無しの戦闘員

 今までのレスから想像するとわりとマジメっ娘やなかった?


359:名無しの戦闘員

 ロシアの血を引くの期待の新星

 絶対かわいい(確信


360:ハカセ

 かわいいし仕事はマジメに取り組むええ子やぞ。他の戦闘員は見習って?

 そして真面目だからこそちょっと困る

 ある日、Lリアちゃんはワイにお願いをしてきた


 Lリア「ハカセ様、神霊工学について、さわりだけでもご教授いただけませんか?」


 詳しく聞くとな、補佐役として少しでもワイを支えたいと考えてるみたいなんや

 そのためにワイが専門とする神霊工学について少しでも知りたいんやと


361:名無しの戦闘員

 めちゃくちゃいい子じゃねぇか


362:名無しの戦闘員

 なんで日本で徴収された人員が本家異次元からの戦闘員よりやる気に溢れてんのw


363:名無しの戦闘員

 実は俺も神霊工学って何なのか知りたい。

 今まで出てきた情報って魂や魔力をなんやかんやする、くらいしかないし。


364:名無しの戦闘員

 怪人とかマジックアイテムも神霊工学で造った

 でもハカセは魂と人体のエキスパートで、なのに一番デカい成果が異空間基地の建設

 わりとなんなのかよく分からん


365:名無しの戦闘員

 あとなぜにカワイイ女の子型怪人がいないんですかね?

 ド定番の大事なヤツじゃないすか


366:名無しの戦闘員

 特撮の女怪人は男の子にいけない性癖を植え付ける貴重な体験だよなw


367:ハカセ

 神霊工学ならウチでは一般的なモンやから別に説明くらいはできるで

 むかーし、むかし、ある哲学者は考えた


『人が神の偉大さを理解できるのは、その身に神を宿しているからだ』


 人間って自分が全く知らない概念を理解するのは難しい

「せめてバイトしないと働く人の大変さは分からない」みたいな感じか? 

 対象を理解するには判断基準となる要素がないとできん

 ってことは、神様が偉大って分かる=人間にも神様的な要素があるってことじゃない?

 論理の飛躍やとは思うけど神霊工学の出発点はそこやった


368:名無しの戦闘員

 ゲーテとかの神様論みたい


369:ハカセ

 その『人間の神様要素』が架空器官である魂なのでは?

 それが事実とすれば魂が生成する魔力を利用すれば神の御業───『奇跡』を実現できるのではないか

 ならば魂の特性を研究し、魔力の作用やエネルギーとしての性質を把握し、実用化することで局所的な奇跡……『神秘』にまず辿り着こう

 それを積み重ねていけば、いつかは神に届くかもしれない

 つまり神霊工学っていうのは「魂や魔力の基礎研究を下敷きに、未だこの世に存在しない奇跡を実現する」、霊的要素を現世利益に還元するエンジニアリングなわけや


 だから怪人を造るのも、魔道具作製も魔力の医療利用も、異空間の創造も神霊工学的見地からすれば全部いっしょ

 魂の基礎理論に基づいて、魔力を活用し、局所的な奇跡を起こしとるからな


370:名無しの戦闘員

 あ、だから神に愛された子供なのね


371:名無しの戦闘員

 ハカセの異名って天才の詩的な表現じゃなかったのか


372:ハカセ

 ワイは昔、神に愛された子供なんて呼ばれ方をしとった

 そんだけ神に近しい存在、本物の奇跡に辿り着く可能性のある人材ってことや

 神様の奇跡を商売道具にするって神様に嫌われるような奴やと思うんやけど、そこら辺どうなんですかねぇ


373:名無しの戦闘員

 異名なんてノリで付けられるもんだから深く考えてもしゃーない。


374:ハカセ(童貞中)

 あと女の子型怪人は造れません

 途中どうやったってじーっと裸体を見なあかんやろ?

 常識的に考えてワイが耐えられると思うの? 恥ずかしくて無理です


375:名無しの戦闘員

 この童貞w


376:名無しの戦闘員

 なんだその理由w


377:名無しの戦闘員

 ぴゅあJ民(二十六歳)


378:ハカセ

 神霊工学の話(女怪人以外)をLリアちゃんはそりゃあマジメに聞いてくれた

 そういやなにか言う度に小まめにメモとっとったけど、あれって日本の慣習なんかな?

 ともかく真剣にワイの補佐役を務めようとしてくれとる

 十七歳、まだ成人して間もないが地頭がいいのか、なかなか優秀でな

 ワイとしても助かっとる……と、最初は思っとった


379:せくしー

 もしかして第一秘書計画の危機でしょうか……


380:名無しの戦闘員

 お、不穏な感じ


381:名無しの戦闘員

 実はマジメないい子は擬態でハカセの地位を奪おうとする悪女的な?


382:名無しの戦闘員

 ハカセ追放の流れか


383:ハカセ

 全然ちゃいます


 Lリア「ハカセ様はどう考えてもおかしい量の仕事を押し付けられています」

    「他の幹部が離脱した今、仕方のない部分はあるかと思います」

    「だからこそ私は、ハカセ様の負担を軽減できるよう努力します」


 Lリアちゃんはマジメで優秀でよく頑張っとる

 おかげでワイの仕事もすっごくスムーズ

 ええ子や、本当にええ子なんや……


384:名無しの戦闘員

 ならいいじゃん


385:名無しの戦闘員

 結局何が問題なん?


386:名無しの戦闘員

 お前らアホか問題しかねぇわ

 仕事=日本侵略がスムーズにいったら一番困るのはハカセだろうが

 こいつの目的は首領ちゃんのために考える時間を捻出することなんだから


387:名無しの戦闘員

 Lリアちゃんルートも考えなきゃ(迫真


388:名無しの戦闘員

 あ……そうか

 ロスフェアちゃんも首領ちゃんも無事なようにしたいのがハカセなんだった


389:名無しの戦闘員

 Lリアちゃんはマジメで優秀だけどその分やり過ぎるってことか


390:ハカセ

 >>386

 それも一つではあるっちゃある


 もちろんLリアちゃんのおかげで一足飛びに日本を制圧とまではいかん

 当面はワイの仕事が普通に楽になった、程度のもんや

 現状あかんのは遅延工作に気付かれることやな

 もしかしてハカセ様が首領を裏切ってるんじゃ……みたいな疑念を持たれるのは困る

 それでも長短あれど長が勝る、Lリアちゃんには感謝しとるよ

 ただ差し迫った危機がございまして……


  ワイ「ありがとうな、Lリアちゃん。でもそんなに無理はしないでええよ」

 Lリア「優しいお言葉、ありがとうございます。ですが、無理などしていません」


391:名無しの戦闘員

 ここまでちゃんとした戦闘員初めてでちょっとびっくりしてる


392:名無しの戦闘員

 なんだかんだSやかちゃんは仕事中の態度はしっかりしてない?

 N太郎もM男も真面目っぽいし。I奈ちゃんはメスガキだけど。


393:ハカセ

 もともと複雑な家庭の子やからな

 あんまり日本に対して愛着持ってないんよね、この子

 そのせいと言うか、忙しいワイを気遣ってるというか


 Lリア「ちゃんとトレーニングもしていますのでご安心ください」

  ワイ「ん? トレーニング?」

 Lリア「はいっ!」

 

 しっかりと頷いた彼女は、そらもう花の咲くような笑顔で言う



 Lリア「いずれはハカセ様の邪魔をする浄炎のエレスを、この手で討ち倒してみせます!」



 ……うん、魔導装甲を完璧に運用したら本当にやれちゃうかもね

 ワイを上司として尊敬し、その助けになろうとしてくれとる

 組織の一員として真面目に頑張ってくれとる。気遣いだってできる優しい子や

 その結果、最悪のエレスちゃんキラー・Lリアちゃんが爆誕した


394:名無しの戦闘員

 またエレスちゃんの知らないところで事態が動いてる……


395:名無しの戦闘員

 悪の組織としては正しい頑張りなのにハカセの胃にはダメージw


396:ハカセ

 なんでや

 補佐役有能なのに、有能なのにぃ……


 Lリア「だから、ハカセ様こそあまり無理はなさらないでください。今は頼りないかもしれませんが、私たちも、きっとあなたを支えられるようになってみせます」


 ぶっちゃけこれワイの正しい態度ってなんなん?

 Lリアちゃん応援したらエレスちゃんぶっ倒すために動くんやけど

 あと神霊工学を習いたいんは、いつか自分で魔導装甲を造りたいからでもあるとのこと

 もちろん、一番はワイの補佐のためらしいけど

 首領もロスフェアちゃんたちもLリアちゃんも皆いい子すぎてツラい。


397:名無しの戦闘員

 Lリアちゃんは本気でハカセのためを考えてんのなw


398:名無しの戦闘員

 これに関してはコウモリ的立ち位置のハカセが悪いとしか


399:ハカセ

 ワイが一番悪いのは大前提よ

 あ、フィオナたんからメッセージや


「お休み前に少しお喋りしたいです。お時間大丈夫ですか?」


 君こそがワイの癒しや……


400:名無しの戦闘員

 これもうLリアちゃん抱き込んだ方が早くね?


401:ハカセ

 というか実はワイが思っとるより時間ってないのかも

 どこかで小さな爆発を起こすくらいはするべきかな

 フィオナたんたちには悪いけど




 ◆




「リリア・ヴァシーリエヴァよ。ハルヴィエドの補佐役として励んでいるようじゃな」


 ある日、デルンケムの首領・ヴィラベリートに呼び出された。

 謁見の間に入れるのは幹部とその直属部隊のみ。リリアはハルヴィエド付きの補佐役として、その栄誉を賜ったのだ。

 ヴィラベリートは先代首領の実子らしく、組織に長くいる人たちはその姿を知っていたらしい。

 リリアは今日初めて見たが……これは、凄い。

 透明な美しさ。悪の組織の首領どころか、幻想世界の姫君にしか見えない優美なお方だった。


「あれは有能だが背負い込み過ぎる。助けになってやれ」

「はっ! 仇敵たるロスト・フェアリーズを倒すために全霊を尽くします!」


 組織内でのヴィラベリートの評価は決して高くない。

 なにせ実際に組織を動かしているのはハルヴィエドだから、首領はあくまでも神輿だと口さがない者は言う。だがリリアは決して嫌いではなかった。


「あと、そうじゃな。ハルヴィエドの命令には不可解なものもあるとは思う。だが私に報告する必要はない」

「そ、それは、どういった意味なのでしょうか?」

「あれはな、色々と足らない私のために無理をしておる。勝手をしているように見えても、それは私の利に繋がる計略。そして、あやつが自ら報告をせぬのなら私が知る必要はないということ。そこを追及して余計な負担を増やすのは忍びないのじゃ」


 一度咳払いしたヴィラベリートは見惚れるくらいの微笑みを浮かべた。


「だから、リリアよ。おぬしには私に従うのではなく、あくまでハルヴィエドの補佐役でいてほしい。……私のわがままに付き合ってくれるもう一人の兄に、せめて何かをしてやりたいのじゃ」


 それが神霊結社デルンケム首領、ヴィラベリート・ディオス・クレイシアというお方だ。 

 嫌いになれるわけがない。きっとハルヴィエドも同じ気持ちなのだろう。

 そういう人たちだから、リリアも力になりたいと願う。


「……はっ! 了解しました!」

「うむうむ。こうまで意欲を持った配下というのは嬉しいのう。あ、とくに毒婦のフィオナにはちょっと強めの一撃を入れるのじゃ。頼むぞ」

「毒婦の、フィオナですか?」

「確認されているロスト・フェアリーズは三人。浄炎のエレス、萌花のルルン……そして毒婦のフィオナじゃ。あやつは恐ろしいぞ。男をたぶらかし奪おうとする生粋の悪女なのじゃ」

「にゃ」


 ちょっとこういうところは子供っぽいと思うけれど。

 それでもリリアは悪の組織が大好きなのだ。



 ◆

 


 その夜、沙雪に美衣那からメッセージが入った。

 

 み~な【めんご、にゃ】

 Sayuki【どうしたの?】

 み~な【大丈夫。私、沙雪のこと好き。それはそれとしてなだけ】

 Sayuki【ありが、とう?】

 

 意味は分からないけれど、友達だと思ってくれているようです。



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