白いふくろう
まっくらやみ。
ぽちゃん…
ぽちゃん…
雫が水たまりに落ちる音が響く。
なにも見えない、まっくらななか。
自分自身さえ見えなくて。
不安と恐怖だけが肌で感じる…場所。
すると。
バサリ。
大きな羽音のようなものが、後方から聞こえてきた。
ぶわり!
突然突風が私の頭の上から通りすぎた。
思わず目を瞑る。
バサリ。
バサリ。
私の頭のすぐ上で大きな羽音のようなものが聞こえる。
恐る恐る目を開くと。
そこには、闇のまんなかに白く光るおおきいもの。
ふくろうだ。
白く神々しく光るふくろう。
ふくろうは私のことをじっと見つめ。
バサリ。
振り向き、飛んでいった。
光る羽をひとつひとつ落としながら。
バサリ。
バサリ。
飛んでゆくふくろう。
ふくろうの落としていった羽。
ゆらゆらと波紋をつくる。
どうやら、私の目の前には池か湖があるようだ。
私は恐る恐る、その光る羽につま先を乗せる。
…ぽちゃん。
つま先立ちで、白く光る羽に全身を乗せてみる。
沈まない。
私は恐る恐る、少し前に浮かぶ光る羽につま先で移る。
沈まない。
恐る恐る、水に浮かぶ羽の上をぴょんぴょんと進んでゆく。
水に浮かぶ白く光る羽しか見えない、まっくらやみを。
ぴょんぴょん。
ぴょんぴょん。
恐る恐るだった足取りは、だんだんスキップになる。
まっくらでよく見えないけど、なんだか楽しくなってきた。
ぴょんぴょん。
ぴょんぴょん。
ふくろうの羽を辿って水の上を進んでいくと。
最後の羽のところの傍に、さっきのふくろうがいた。
最後のひとつの羽に飛び乗ると。
──もうここには迷いこまぬようにな。
優しいおじいさんのような声が、ふくろうの方からすると。
バサリ、バサササ!
ふくろうは白く光る羽をたくさん散らし、そして。
パアアアアア………
まっくらやみだった世界が、白く晴れ渡って行く。
…ありがとう、ふくろうさん。
きっと二度と出会わないであろうふくろうに。
私は心から感謝するのだった─────