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12話

 普通、こういうパターンはゾンビみたいな枕がつくものだろうに。弱体化どころかレベルのが上の敵が出てくるとは。

 モンシロはこちらのカバーをするつもりか。ウソゴトさんはフリーズしているのかと言うぐらい固まっている。

 新しく湧いたピッグゴブリンには、既に十字の杭が刺さっている。目を凝らすと『エンチャント・クロス』のエフェクトがしっかりと発生していた。そしてHPも半分以下の敵が多い、HPがほとんどない敵もいる。このゴブリンの群れは見た目以下の脅威だな

 とするとマスピッグゴブリンの方が本命か。

 マスピッグゴブリンに刺さっていた、十字杭は全て取り除かれている。ついでに、HPも全回復か。見たところ体格も少し変わっているように見える。モーションからしても回復の線は薄いな。


「とすると最大HPの低下か」


 最大HPが低下したことで、あたかもHPが回復したかのように見えたのなら理屈は通る。減ったHPとデバフを切り離した。なるほど厄介だ。こちらの戦法はそのデバフである『エンチャント・クロス』だより。相応に本体が弱体化するのなら構わないが。心なしか、機動力が上がっているように見える。

 

 「モンシロ、問題ない。お前はそっちをなんとかしろ」


 ここでモンシロがマスピッグゴブリンから目を離すのは不味い。あの肉塊がこの場で最も危険だ。何より。こっちは俺のほうが相性が良い。


『赤の烙印』


 最もHPが低い敵を『赤の烙印』で始末する。途端マスピッグゴブリンを含めた全ての敵に烙印が感染する。烙印が刻まれた敵の防御力は体感でおよそ3%低下する。それだけでもなかなか悪くない数字だが。この効果は重複し、乗算される。


「2体目。3体目」


 コレで防御力は4分の1。このまま、『赤の烙印』の餌にしてやる。幸い奴らの動きは相変わらず単調、少しずつなら、無傷でも仕留められるだろうけれどそれでは時間がかかりすぎるな。

 しかもモンシロの奴、押され始めていやがる。仕方ないな、初心者に頼るのは、変にプレッシャーを与えそうで嫌なんだが。


 「ウソゴトさん。ウソゴトさんがモンシロを助けろ」


 何をしょぼくれている。そんな暇は無いぞ、敵を前に目を覚ませ。動き始めろ。ここからお前の冒険を始めろ。


「ストラテジーと同じだ、自分の手札を見つめ、相手の戦力を分析しろ。インプットが終わったら体を動かせ。そして全力で楽しんでみろ」


 任せたぞ。 


記憶解放(メモリーリリース)、エクスキューショナー」


 小型の敵にこれが有効的なのは実証済み。俺も雑魚を片付けてそっちに合流する。

 大地を揺らし。敵を転倒させる。後は首を断てば良い。転倒状態の敵は大抵無力化されている、敵を倒す度に防御力が減っていく。低耐久の取り巻きは、やはり最高に『赤の烙印』と相性が良い。

 時間制限からか、重ねがけに制限があるのか、体感60%アップが上限か。

 敵を残しておけば『赤の烙印』をボスにかけることは出来るが、それよりも三人で相対する方が火力も安定感も上がる。容赦する理由も無い。

 残り5体。

 4足歩行型が2、通常型が2、新型が1。攻撃の種別が頭に入っている前2つはともかく新型を転倒中に処理仕切れなかったのは痛いな。時間がかかる。

 レベルの高い個体は、一定を超えると攻撃力やHPなどの基礎ステータスに加え速度や攻撃方法が増える。4足歩行型は飛び掛かりの待機モーションが短くなり、通常型はウソゴトさんの使っている豚剣を所有していたり変化は様々。新型も何か見た目に分かる特徴が有るのではと思うが、剣すら持っていない。

 それともう一つ。ついに集団戦を覚えたのか連携らしきもの仕掛けてくる。他の変更よりも場合によってはこちらの方が厄介だろう。

 正面からの攻撃に遭わせ、横や背後やから多角的に奇襲を仕掛けてくる。少し前のウソゴトさんよりよほど連携が上手だ、良いAIを積んでいやがる。おっと、口に出したらまた怒られてしまうな。

 特に大斧なんて取り回しが悪く、コレにはなかなか苦戦するだろう。俺で無ければだが。


「本来、槍とかみたいな長柄の武器で使う技なんだが、エクスキューショナーが斧というより斧槍にバランスが近いことで助かった」


 正面の肩口に斧頭をたたき込み、斧の持ち手の天地を反転させ、横から迫る敵の脳天に柄の先端で突き上げる。


「槍ってのは先端だけを警戒してりゃ良い訳じゃ無いんだよ、棒術でも勉強してくるんだな、コレ斧だけど」


 閉所じゃ剣が強いって?バカ言え、馬上槍みたいな超長いバケモン武器じゃないんなら、短く持てば良いだろうが。

 背後からの殺気。瞬時に半身にむき直し、視界の端で敵を捕らえる。的は新型。少し距離が離れた所からの攻撃で武器も無いとすると遠距離型か、痰でも吐いてくるのか?

 子供のケンカのように体ごと振り回されたその腕は、鞭のようにしなり、鋭く伸びる。

 腹の上を鞭が通り過ぎる。片膝をつき海老反りになって、不格好ながらも反射で避けはしたが体制が不味い。コレなら受けた方がマシだったか。いやそういえば防具就けた無いんだったな。

 左に握られたエクスキューショナーを、握力だけで投げやりに振り回す。斧を体も使わず片手で振るのはとてもできっこないが、さっきの真似事だ、手放さないようにだけ気をつけて、鞭のように遠心力に任せ、刃の向きも気にせず頭を叩く。

 痛てー。コレ現実でやったら肩はずれそう。

 痛みとも違う、ゲーム特有の不快感が左肩にじんじんと渦巻く。ダメージがないしそれぐらい、見逃してくれよ、ゲームなんだからさ。

 どうやら新型は、体を変形させてくるらしい。確かにマスピッグゴブリン君も体をウネウネさせてるけど、いよいよゴブリンって何だよ。鬼でも妖精でも、ヨガマスター顔負けの変態変体生物なんて聞いたことないよ、仕舞いには火を吐くのではなかろうか。


「けどコレで、3体終了」


 味方の鞭と斧でスタンした3体を断頭して。残りは2体。


「それじゃあ、死ね」

 

 ザコを片した後には、『赤の烙印』でこれまで以上のの速度でHPを減らしていくマスピッグゴブリンだけが残る。

 ウソゴトさんの攻撃も加わり、残り半分を切ろうとしていた。


「ウソゴトさん。第三形態を警戒だよ」


 序盤で随分ビックリさせてくれたが、あれだけ派手な変形をしておいて終わりですとはならないだろう。もう一度分裂するのか、はたまた別か。十中八九、第3形態がある。


「ブルゴオオオオオォ」


 雄叫びを上げる肉塊。

 みるみると姿を小さくし、蒸気か腹に溜まったガスか、煙をまき散らす。


 ドーン っと爆発音と共に、中から現れたのは2つの影。


【マザーゴブリンlevel1】


「こいつらやっぱゴブリンよりエイリアンとかパラサイトとかに改名した方が良いんじゃないか」


 それは2つの角を持ち二足で歩いている。しかし体は沼のようで、そこに鹿やら豚だのといった動物の体が見え隠れする。


「なるほど。確かにこれから生まれた怪物なら、合体したり分裂したり伸びたりするのも、繁殖力が高いのも、何故か序盤のザコ敵であるゴブリンが豚と融合してるのも一応納得できる」


「謎なのは、なんでコレにゴブリンと命名したのかと、何故序盤エリアに配置したかの2つだけですね」


 そりゃアレだろ。だってゴブリンだし。スライムゴブリンみたいな合体失敗しそうな組み合わせじゃなかっただけよしとしよう。


「それじゃ、気合い入れてやりますか」


 どうすんだよ。第3形態どころ1体増えちゃったよ。

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