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マリーの日記帳4



 わたしと似ていると思っていたその子を、じっと見ていて気づいた。存在そのものが輝いて見えて気づけなかったけれど、色が、わたしよりも深かった。


 わたしより濃いピンク色の髪はウェーブに合わせてその表情を変えて、わたしより深い水色の瞳は肌の白さと、淡く色付く頬と唇をより一層引き立てていた。


 子供の様な色合いのわたしと違い、その人は、大人っぽさや気品の様なものを感じる。



 そうやってじっと見つめていれば、不意にパチリと目が、合った。




 わたしの不思議な力は、相手がわたしを見ている間だけ、その人のわたしに対する好感度、の様なものが見えるのだ。




 だから、その、わたしに似た人も、わたしを見たので、見えたのだ。




 ハートが。






 確かに、わたしを見た。わたしと目が合った。だから、間違いない。間違うわけがない。それにこの能力は、わたしに対する好感度なのだから、間違えようが無い。だから、確かに、あれは、あのハートは、わたしへの気持ち。




 わたしに似たその人の傍らに、真っ赤に脈打つハートが、佇んでいた。




 幻覚?


 あまりにもわたしが渇望し過ぎて、都合のいい夢を見ているの?




 でも、確かに、そこには、真っ赤なハート。




 わたしを愛しているという証明。





 でも、どうして?わたしはあの人の事を何も知らない。それなのに、わたしを、愛しているだなんて……。



 確認したい。聞いて、確かめて、どういう事なのか、納得したい。わたしたち、会ったことがあるの?わたしの事を知っているの?どうして、わたしの事を愛しているの……?



 そんな縋る様な高揚感と期待に強い興味が引かれる。



 するとどうした事か、突然その人の身体がグラリと傾き、そのままドサリと倒れてしまった。驚きに思わず小さく悲鳴をあげてしまった。次第に人々の動揺が波のように伝わり、騒がしくなる。


 先頭にいた輝く様な金髪をした男子生徒が一言で場を制したかと思えば、赤髪で体格のいい男子生徒が倒れた女生徒を抱きかかえて講堂を出ていこうとして、同じ列に並んでいた栗色の髪の男子生徒が倒れた生徒と幼馴染であると言い出し着いていこうとしている。

 そんな目まぐるしい状況が一気に起きた。


 倒れた人と幼馴染だと言っていた人が薬を持っていると言っていたけれど、あの人は病気なのだろうか……?だとしたら、教会に静養中に出会って、それで、わたしを愛して……?

 そこまで考えて、倒れた人の心配の前に自分のことを考えるなんて……と自分の未熟さと醜さに急に恥ずかしくなった。


 その後も講堂の中には静寂だけが残っていたが、暫くするとまたザワザワと人の話し声が聞こえてきた。ヒソヒソと交わされる言葉は批判的な物ばかりだけれど、そんな言葉に耳を傾けるより、わたしの興味は講堂を出ていった集団に注がれていた。



 暫くすると講堂のドアが開け放たれ、一気に静寂が訪れる。


 式の始まりの号令や挨拶、国王陛下からの祝辞が読み上げられ入学試験で優秀な成績を収めた生徒が代表で挨拶をして行った。


 武術部門で最優秀だった騎士科のレオンさんは、先程ピンクの髪の女生徒を運んだ赤髪の人だった。魔術部門はジルベール・グレゴワール魔術士爵令息様という人だった。学術部門の挨拶は深い緑色の髪を後ろで緩くまとめ、眼鏡を掛けているフレデリク・フェルナンド伯爵令息様。代理、という事だったので、本当はあの倒れたピンク色の人だったのだろう。あんなに綺麗な人なのに、頭も良いなんて……頬が紅潮して胸がドキリと高鳴るのを感じる。


 そして最後は、総合成績で最優秀だったと言うあの金髪の人が登壇した。その人物はなんとクリスチアン・クリフォード第二王子殿下だったのだ。あの騒動を一言で制する事が出来た人物だ。当然、と言えば当然なのだろうか?納得してしまった。


 クリスチアン・クリフォード殿下、フレデリク・フェルナンド伯爵令息様、あのピンクの人に、わたし。特進科はこの4人だ。わたしはこれから、こんなにすごい人たちの中で生活していくのかと思うと、期待と不安で胸が高鳴った。

 それに、なにより、わたしを愛してくれている人が近くにいる……。それだけで今までの全ての人生が報われて、これから先の未来が全て輝きに包まれているような、そんな気持ちにさせられた。キラキラと、愛が溢れ出す。ドクドクと脈打つ、赤いハート。私がほしかった物。わたしが憧れていた物。もう、手に入らないと思っていた物。


 まだ名前も知らない、わたしを愛してくれている人。貴女はどんな人なの?どうしてわたしを愛してくれているの?貴方はどんな物が好きなの?好きな色は?好きな花は?好きな食べ物は?

 わたしを愛してくれている人。あなたの事を、わたしに教えて――。



 王立学院に入学できて、特進科に選ばれて、本当に本当に良かった……。



 これからも、わたしを愛してくれる人と、一緒に居られる……。同じ教室で勉強をして、生活を共にして、同じ時間を共有して……。あなたの事を、もっと知りたい。わたしを愛してくれる、貴女のことを――。





 

 

 

  

今日から3日連続投稿になります!明日も同じ時間に投稿予定です(*^^*)

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