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56話 テスト前の勉強会



 狩猟大会が終わり、次にマリーの名声を上げるためのイベントはペーパーテストだった。


 学力のパラメーター上昇率の高いフレデリク様を誘って、放課後はしばらく勉強会を開く事となった。



 あの後もフレデリク様とレオンの関係は良好で、自然と笑顔がこぼれる。クリスチアン様もふたりの変化に気づいたようで「エマが何かしてくれたの?」と聞かれたので、わたしは何もしていない事と、ふたりで話し合った事だけを伝えた。

 するとクリスチアン様は納得したような表情で、優しく頷くだけだった。


 それにしても、ヒロインの介入がなくても、皆の心の澱は解消できるということが分かった。これは大きな希望ではないだろうか?

 

 マリーはクリスチアン様を救って、ふたりは結ばれる。一方、他の攻略対象達にはどうにか頑張ってコンプレックスを解消してもらう。


 攻略対象の悩みは、主人公がそのキャラと共に支え合いながら生きる事で解消される。でもわたしは主人公ではないから、そんなこと出来ない。だからゲームとは違う方法を使わなくちゃならない……。

 

 

 なんとも抽象的だけれど、これで皆が幸せになれるはず……。幸いな事に、コンプレックスを解消するためのカギを、わたしは知っているのだから。


 


 



 そんな浮かれた心のまま、わたしは図書室で勉強会に参加していた。





 

「あーさっぱりわかんねー……」


 レオンが渇いた声を上げる。なんと、レオンは自らフレデリク様にテスト勉強を見てもらう様に頼んだのだ。少し前までの関係からは、お願い事をするなんて考えられなかった。ふたりが揃っている姿を見るだけで、笑顔になる。


「……なに笑ってんだよ」


「ふふっどこが分からないの?」


 レオンがムスッとしながらも、分からない所を指し示す。


「……全部じゃないか」


「フレデリクやクリスチアンとは頭の出来がちげーんだよ!しかたねーだろ!」


 呆れて苦笑いをうかべるクリスチアン様に、レオンが口を尖らせる。


 そういえば、狩猟大会の始まる前にフレデリク様とレオンが口論になった時にも思ったけれど、レオンはフレデリク様を呼び捨てにしているんだな……。ゲームではクリスチアン殿下と呼んでいて「いずれ国に仕えた時に、オレの主君になる人だからな!」と言うセリフもあったはずだ。


 それに、ゲームではここまで礼儀作法について、フレデリク様に注意されていただろうか……?


 レオンの勉強の進み具合を見ても、簡単な文法や単語もあやふやの様だし……。



 まぁ、些細な事かもしれないし、所詮夢で見たゲームの中の記憶、という事だろうか……?


 みんなのコンプレックス解消のためにゲームの記憶を頼りにすると言いながら、早速自分の記憶を疑う事になろうとは……。





 そんな事をぼんやり考えていたら、目の前に手が投げ出された。勉強に疲れたレオンが、机に突っ伏した状態だった。


 チラリと見える手の平は、豆が何度も潰れて厚くなっていた。徐に、手の平の厚くなっている部分を指で押す。子供のようにコロコロ変わる表情とは裏腹に、ゴツゴツした手は精悍な男性そのものだった。


 そういえば、ドニの手も、いつの間にか、こんな手になっていたな……。


 わたしが覚えているドニの手と言えば、小さくて、モチモチしている、そんな手だったはずなのに……いつの間にか――


「……なにしてんだよ」


「えっ?……!ごめん!」


 レオンが唇をツンっと突き出して、不満声を上げる。わたしは咄嗟に手を離し謝る。


「ゴツゴツしてて、男っぽい手で……ドニの手も、いつの間にかこんな感じだったなぁ、って……」



 ドニを男と表現したことに、違和感が拭えない。ドニは幼なじみで、子供の頃から知ってて、姉弟みたいに育って、ずっと一緒で――それでも、男の人で……。


 そんな当たり前のことを意識してドキリと一度、胸が熱く脈打つ。


 


「あのさぁ、エマとドニってどんな関係なわけ?」


 レオンは突っ伏した状態のまま、下からジト目でこちらを見つめる。


「え?どんなって……ただの幼なじみ……」


 レオンはグッと状態を起こして、こちらに向き直った。


「ドニに聞いた時も同じようなコト言ってたけど、どう見たってオマエら――」

「レオン、図書室では静かに」


 何かを言いかけたレオンに、フレデリク様が静かに、けれども迫力がある声で制した。


「あ?あぁ、おう……」


 レオンはまだ何か言いたそうにしていたけれど、その後も口を開かなかった。



 わたしとドニは、ただの幼なじみ。口の中で、それを復唱する。

 


 当たり前で、気にした事すらない、そんな言葉。




 それを、今更になって意識するなんて……都合が良すぎる。





 暗くなった思考を振り払うように、わたしは目の前の資料に目を通す。ゲームの知識でテストの問題がどんなものか分かっている。ゲームでは四択問題が5問表示されて、その正否でテストの点数が決まる。わたしは全て暗記するほどゲームをやり込んだので、きっと全問正解するだろう。けれど、現実のテストが5問だけなんて、そんなのは考えられない。だから、それ以外の問題はわたしの実力という事だ。なんだかズルをしている様で心が苦しくなる事もあるけれど、それでも、実力を出し切って頑張ろうと思い直した。



 チラリとマリーの方を伺うと、小声でクリスチアン様に問題の解説をしてもらっている。仲睦まじい雰囲気だ。フレデリク様とレオンもポツリ、ポツリと小声で会話をしながら問題を解いていた。


 はやく皆が幸せになれる世界が来るといいな、なんて思いながら、わたしはまた手元に視線を落とした。



 

 

 


 


 

GW期間中は毎日投稿中です。

明日も投稿します!

連載の励みになりますので、よろしければ下の方にある星マーク☆☆☆☆☆とブックマークで評価のご協力をお願いいたします(´˘`*)


追記

誤字報告ありがとうございます!

修正いたしました。これからも何か気づいた事があれば、ぜひご連絡お待ちしております!

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