表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/153

53話 燃える赤に照る夕陽



「フレデリクすげーじゃん!ま!オレは1位だけどな!」


 レオンは挑発的にニヤリ、と笑う。一瞬で空気がピンっと張り詰めて、緊張感が漂う。


「エマさんの機転のお陰です」


 クリスチアン様が何か発言するよりも早く、フレデリク様がにこやかに言葉を発した。クリスチアン様は何かを感じ取ったのか、静観の体制に入る。

 フレデリク様の言葉を聞いたレオンの眉が、ピクリと動いた。


「あーあ!女に頼りきって恥ずかしくねーのかよ!」


 レオンの発言にムッとしてしまう。だが今回は、グッと堪える事ができた。なんとなく、この言葉の向けている相手が分かったから。レオンはわたし――女性ではなく、フレデリク様を貶める為に、この言葉を選んでいるのだという事が。


「私は、自分が入賞出来るとは露ほども思っていませんでした。今回の経験で、自分の能力を活かすとはどういう事なのか実感し、そして体験することが出来ました。これは未熟だった私の成長、なのかもしれませんね」


 フレデリク様はそう言って、レオンに穏やかに笑って見せた。また言い合いになるのでは、と思っていた緊張感が緩む。それはクリスチアン様も同じだったようで、小さく息を吐く音が聞こえた。


 レオンはフレデリク様の言葉を聞いて戸惑う様な、唖然とした表情を浮べるばかりだった。思っていた反応と違い、狼狽え二の句を継げられずにいる。


「少しずつ、自分の中の苦手意識と向き合っていきたいと、そう思えました」


 何故か、優しく微笑むフレデリク様と目が合う。フレデリク様がこちらを見ているとは思わず、バチリと目が合ったまましばし固まってしまった。


 

「……お前のそういうトコ、すげー腹立つ」


 レオンはつぶやく様に、静かに言葉をこぼす。途端、レオンがバッとわたし達の間を駆け抜ける。


「レオン!?」


 わたしは反射的にレオンを追いかけていた。背中から「エマ!?」と言うマリーの心配そうな声が聞こえたので、一度だけ振り返り「大丈夫!」と手を振ってから、またレオンを追いかける。



 



 駆け足でレオンを探していると、芝生の上で大の字に寝転んでいる赤髪が目に入る。


「レオン!みつけた……!」


 ハァハァと肩で息をするわたしを見て「体力ねーなー」とレオンは笑う。けれど、その笑顔はいつもより、元気がなくて……。


「レオン、2回も優勝するところ見逃して、ごめんね?」


 わたしは寝転ぶレオンの隣に腰掛ける。おそらく、レオンを不機嫌にした原因はわたしにあるだろうから……。

 わざとでは無いけれど、2回も見逃してしまった事は、本当に申し訳ないと思っている。


 

「別に気にしてねーから、もういいよ」


 そう言うレオンは、それでも少し怒っているように見えた。


「オレさぁ……フレデリクと初めて会った時から、いちいち鼻につく話し方とか、すぐ注意してくる所とか、何かと難しい言葉ばっかり使う所とか、すげー嫌いだったんだ」


 レオンは寝転んだまま、赤く染った空を眺めていた。わたしも、なにを見るでもなく同じ空を眺める。


「アイツと話してると、自分の頭の出来がどれだけ悪いか、嫌でも思い知らされるんだ……」


 ぽつり、ぽつりと、レオンはゆっくりと言葉を紡ぐ。真っ赤な空が、ふたりを照らす。


「アイツが何か難しい事言う度にイライラして、オレにできる事がお前には全然できねーだろ!って言っちまうんだけど……言った後も全然スッキリしなくて……それどころか、頭の中が余計にモヤモヤして……」


 視線を夕焼け空からレオンに移す。紅く照らされたレオンの姿は、何故か悲しげに見えた。


「ほんとオレ、バカだよな……」


 そう呟いた声は、低く、重かった。

 


「けどさ、さっきフレデリクが言った言葉、あれはオレでも分かったし、なんか、ちょっと好きだな、って、思った……」


 その声は、暖かさに包まれていた。やっぱりレオンは、フレデリク様が嫌いな訳では無いのだ。だだ、少し関係が拗れてしまっただけで……。

 

「そう思ったらさ……なんか……急に、自分のしてる事が恥ずかしくなったんだ……」


 レオンは寝転んだまま、腕で目元を覆う。


「フレデリクもクリスチアンも凄くてさ、初めて会ったのなんて、本当にガキの頃で……それでも、ふたりとも……将来の夢とか語ってて……オレは今だって、父ちゃんが騎士団長だから、オレも騎士になるって、それだけで……」


 レオンは空いたもう片方の手で、芝生を握りしめる。ジャリっと、乾いた音が鳴る。


「アイツらのことすげーなとか、誇らしく思う気持ちも勿論あるけど……それと同じくらい……オレは、自分のやりたい事すら何もわかんねーようなバカで……オレは、本当に何も考えてねーなって……」


 なんとなく、レオンの事が分かった気がした。ゲームの知識ではなく、目の前に居る、レオンという一人の人間の事が、分かりかけている気がした。


 どうして、フレデリク様とレオンが衝突するのか、その理由も。そして、どうしたら、ふたりが仲良くなれるのかも、なんとなく、分かった気がした。


 

 

「きっと、何にも考えてねーから……フレデリクにもバカにされんだろーな……」


 レオンは、そう吐き捨てる様に呟いた。それは、自傷的な言い方だった。




 



GW中は毎日投稿していく予定です!

明日も投稿しますので、スキマ時間に読んでいただけることを楽しみにお待ちしております!

連載の励みになりますので、よろしければ下の方にある星マーク☆☆☆☆☆とブックマークで評価のご協力をお願いいたします(´˘`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ