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52話 一触即発の気配



 わたし達の表彰が終わると、そのまま次の受賞者の表彰に移る。4位の受賞者の表彰が終わり、3位のペアの名前が呼ばれる。


「クリスチアン・クリフォード殿下、マリー。ご登壇ください」


 クリスチアン様とマリーの名前が呼ばれる。2人には1位になって、皆に実力を認めてもらえる流れになったら嬉しいなぁと思っていた。それでも3位は凄いことだし、素直に祝福の拍手を送る。


 クリスチアン様は慣れた様子で堂々と登壇する。その後ろをマリーが戸惑いながら着いていく。マリーが階段を登ろうとしたら、クリスチアン様がスマートに手を差し出し、エスコートをした。恥ずかしげに戸惑いながらエスコートされるマリーは、目眩がしそうなほど可愛らしかった。


 手を取り合い登壇するふたりの姿に、ときめいてしまった。こんなに美しくてお似合いのふたりの姿を見たら、認めてくれてもいいのに!


 クリスチアン様とマリーの表彰が終わり、次は2位の表彰に移る。




「ニコル、ドニ、テオ、ベン、エッボ、ディル、ヤン。以上7名は登壇ください」


 ザワザワと賑やかになる。無表情のニコルさんを筆頭に、ドニ達がカチコチに緊張しながら登壇してくる。





 

 わたしは、あまりの衝撃に、声も出なかった……。




 表彰の言葉が続いているはずなのに、何も耳に入ってこない。驚きのあまり、言葉が入ってこない。







 


 わたしは、ゲームの知識で、勝手に、2人組だと、思い込んでいた――。







 大会の規定にも、先生からも、そんな事、一言も、言われていないのに――。









 特進科の4人でチームを組んでいたら、マリーを1位にする事が出来たのに……わたしは、ゲームの知識に囚われて、また、間違ってしまった――。








 


 先程まで浮かれていたのが嘘のように、身体は一気に冷えきった。



 







 


 わたしがペアになる事を勧めたせいで――。





 






 その後も1位になったレオンの表彰があったが、全く覚えていない。わたしが呆けている間に、いつの間にか閉会していた。




 



「ごめんなさい……わたしが、2人組になる事を勧めなければ……」


 前を歩くマリーの背中に語りかける様につぶやく。それに気づいたマリーが、フワリと振り向く。

 立ち止まったマリーに気づいたフレデリク様とクリスチアン様も、こちらを振り向いた。



「ドニ達がグループを組んでて……それまで、わたし……全然気づかなくて……わたし達が全員で組んでいたら……きっと……」


 取り留めもないわたしの話を、皆は真剣に聞いてくれていた。自分のせいで、優勝できたかもしれない機会を潰してしまった。ズッシリと、頭が重くなる。

 後悔に追い立てられる。


「先程もお伝えしましたが、今回エマさんと組めた事で私自身、成長できたと思います。そして、今回の反省を来年の狩猟大会へ活かしましょう」


 ゆっくりと視線を上げれば、フレデリク様が優しく微笑んでくれていた。ギュッと締め付けられていた胸が、スっと解れていくような、そんな笑顔。


「そうですよ!エマのおかげで、来年はわたしももっと役に立てる筈です!」


 マリーが可愛らしく両手を握り、身を乗り出して訴えかけてくる。そんな無邪気さに、頬が緩む。


「全員で組む事を思いつかなかったのは、皆同じさ。エマだけが気負うことは無いよ」


 クリスチアン様の優しさが、ゆっくりと全身に染み渡る。みんなのお陰で、わたしに差した影がスっと薄くなる。


「来年の狩猟大会は、今から先約を入れさせて貰わないとね」


 クリスチアン様は、少し悪戯っぽい笑顔で微笑む。いつもの大人な表情ではなく、美しさの中に年相応の可愛らしさが含まれる、そんな笑顔。


「はい!」


 後悔を重ねてばかりだけれど、それでも確かに、前へ進めている実感を感じて、笑顔になる。わたしは3人の元へ駆け寄った。



「来年はわたしも、エマと同じ勲章を受け取りたいです!」


 マリーの隣へ並ぶと、無邪気に微笑んでくれる。今回は違う順位だけれど、来年はきっと、同じ順位になろうね。そんな想いが溢れ出す。


「来年もきっと、実力を出し切りましょうね」


 フレデリク様にそう言って微笑むと、眼鏡の奥の琥珀色の瞳を優しく細めながら「もちろんです」と、短く返事をしてくれた。




 4人で並び歩いていると、校舎に差し掛かった辺りで人影が揺れた。レオンが校舎に掛かる日影から、姿を現す。夕陽に照らされた赤髪は、正に燃えるようだ。


「よ!今回はちゃんと見てただろ?」


 レオンは無邪気にニッと歯を見せて笑う。 


「あ」


「あ?」



 そう、わたしは見ていなかった。ドニ達がグループを組んでいた衝撃で、表彰式のことを、覚えていなかった。


「ご、ごめんね……レオン……」


「またかよ!オレが呼ばれた時お前も居ただろ!?」


 レオンは呆れた様に驚きの表情を作る。


「ごめん……ドニ達がグループ組んでた事にビックリして……」


 わたしは二度もレオンの優勝を見届ける事が出来なくて、とても申し訳ない思いが押し寄せる。


「はぁ!?なんだよそれ!意味わかんねー!」


 レオンは分かりやすく、プンプンと効果音が出そうなほど怒っていた。


「まぁまぁ、来年また頑張ろう。ね?」


 クリスチアン様が分かりやすくレオンを宥める。レオンは口をツンっと尖らせてはいるが、それ以上何も言うことは無かった。声を掛けたのがフレデリク様だったら、きっとレオンは激昂していた事だろう……。



「それにしても、フレデリクの名前が呼ばれた時は驚いたぜー!」



 そう安心したのも束の間、なんとレオン自らフレデリク様に話しかけたのだ。








 

一年間エマたちの物語を応援してくださり、ありがとうございます(*^^*)

これからも続きますので、引き続き応援よろしくお願いします!

次回の投稿は5月3日(水)14時を予定しています。

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