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51話 栄えある表彰式



 狩猟大会の上位5チームが、登壇して表彰される。

 

 魔植物がポイントとして認められれば、それなりに高ポイントになると思うのだけれど……。さすがに無理かなぁ……と諦観してしまう。

 



「フレデリク・フェルナンド様、エマ。両名は登壇ください」


「エマさん、5位ですよ」

「……え?」


 フレデリク様が優しく声を掛けてくれる。……え?5位……?わたしたちが!?



「うそ!?魔植物が本当にポイントになったんだ!」



 わたしはあまりの嬉しさで、人目も憚らず大喜びしてしまう。両手でフレデリク様の手を握り「やったー!」と言いながらジャンプまでしてしまった。


「え、エマさん……その……あまり跳ねると、危ない、です、よ……?」


 フレデリク様はわたしの行動が余程恥ずかしかったのか、顔を赤くして俯いてしまう。

 余りにも嬉しくて、まるで子供みたいな行動をしてしまった……しかも、皆が注目している中で……。反省して周りが見えてくると、羞恥心が猛烈に追い立ててくる。人目を確認するのが怖くて、俯く。



「コホン……両名、登壇を」


 先生に促され、わたしは顔を赤くしながらフレデリク様から両手を離し、歩みを進めた。


 



「とても栄誉ある事だとはわかりますが、もう少し慎みを持って下さいね」


 登壇すると、表彰の言葉よりも先に、注意されてしまった。わたしは俯きながら「はい……」と小さく返事をした。


 

「狩猟大会で、魔術科が造った人工魔物の魔石を集めず、魔植物を提出して上位者に名を連ねたのは今回が初めてです。この新知見を踏まえ、来年度からの狩猟大会がより実りある競技となる事でしょう」


 賛辞の言葉が嬉しくて、フレデリク様と微笑み合う。今回わたし達がした事で、今後の大会の発展が認められたなら、それってとても嬉しい事だよね。

 そんな事を思うと、自然と顔がニヤける。



 

 先生に名前を呼ばれ、フレデリク様と交互に賞状を受け取る。受け取りの所作が合っているのか、妙にドキドキする。悪い事をしている訳では無いのに、身体に冷汗が伝う。

 ヒヤヒヤしながらも何とか受け取り、所定の位置まで戻る。


「今回ふたりの偉業を祝して、勲章の授与は魔術科の首席から授けるものとします」


 その発言の後に、スっとジルベール様が姿を現す。ゆっくりと歩みを進め、私の前で立ち止まる。

 ジルベール様はいつもと違い、制服の上にはマントを羽織り、寝癖が目立つ髪の毛は綺麗に整えられていた。

 漆のような艶やかな黒髪が、整えられた事でその魅力を増していた。それでも、感情の読めない隈がちな目元はいつも通りだった。


 

「お前なら、きっと持ってくると思ってた。あの魔植物たちは、僕が人工魔物を造る片手間で植えてたんだ」


「ジルベール様が……?」


 人工の魔物を造る片手間に……?そんな事本当に有り得るのだろうか……でも実際にやったのだから出来るのだろう……。わたしには異次元の事すぎて、凄いを通り越して唖然とする事しか出来ない。


「エマなら、きっと持って来ると思ってた」


 ジルベール様は疲れたような顔を、笑みの形に変える。信頼を感じられるその言葉がくすぐったくて、照れてしまう。


「魔力を使わないと採取出来ない物は、フレデリク様に全部任せ切りでしたが……」


 申し訳なさから、フレデリク様をチラリと伺う。フレデリク様は気にしていないとでも言うように、優しく微笑んでくれた。その笑顔を見て、ホッとする。


「そこは……まぁ、来年まで頑張れ……」



 ジルベール様はそう言うと、勲章を渡してくれた。そのままジルベール様は品のある動作で、フレデリク様の元へ移動する。




「……お守り(おもり)、大変だっただろ」


 ジルベール様はフッと乾いた笑みを浮かべる。お守りって、わたしの事だろうな……。まぁ、確かに迷惑しか掛けてないけど……魔物倒せなかったし……寝ちゃったし……魔法使えないし……。うぅ……でも表彰式なのに!



「いえ、私の方がご迷惑をお掛けしていたかと……それに――」


 フレデリク様は薄く微笑むと、眼鏡を直す仕草をする。


「この短時間で、とても勉強させられました。私も人間として、成長しなければと思い直しました。エマさんと行動できたお陰です」


 フレデリク様は言いながら、わたしに優しく微笑む。眼鏡の奥の琥珀色の瞳が、優しく色付く。深い緑色の髪が、サラサラと揺れる。


「わたしも、フレデリク様と一緒で嬉しかったです」


 狩猟大会で魔植物を採取して持ってくるなんて、フレデリク様と一緒のペアでなければ思いつかなかっただろう。思いつけたとしても、それを実行できるだけの知識がフレデリク様にはあった。


「私たち、ふたりが力を合わせた結果ですね」


 フレデリク様は少し恥ずかしそうに頬を赤らめ、更に目を優しく細める。わたしも入賞できて浮かれちゃったけど、フレデリク様もそうなのかな?そうだったら嬉しいなぁ……。




 ジルベール様はフレデリク様に勲章を渡すと、これで役目は終わりとばかりに降壇して行った。



 その後も、わたし達より上の順位の表彰が続く。







 そこでわたしは、あまりの驚愕に言葉を失うことになる――。

 


 

 




 



来週からGWなので、連日投稿が続きます。

時間が経つのは早く、もうこのお話も一年続きましたね。

終わりに向けて少しずつではありますが、進んでいますので、これからも応援よろしくお願いいたします!

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