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49話 夢に夢見る。

 


 剣術の実技授業で、わたしたちのグループも形だけの打ち合いが出来るようになってきた頃、王立学院主催の武術大会がある事が知らされる。



 わたしはそれを聞いて、驚いてしまった。


「大丈夫ですよ、エマ!全員が参加する大会じゃないですから!」


「出場するもしないも個人に委ねられていますから、心配せずとも大丈夫ですよ」


 わたしが驚いているのを見て、マリーとフレデリク様が声をかけてくれた。わたしはそれに曖昧に微笑み返すことしか出来なかった。



 わたしが驚いているのはそこでは無いのだ。


 だって、武術大会のイベントは、レオンの好感度が一番高い時に起こる。



 でも、マリーは、クリスチアン様との好感度が、高い、はず……。そのはず、だよね?



 レオンとマリーが知り合ったのだって、タイミングはわたしと変わらないはず。マリーがレオンと友達以上の親密な関係になっていたとは、思えないけれど……。


 でも、わたしが登校していなかった数日でクリスチアン様と打ち解けて、クリスチアン様の問題を解決できたマリーなら、有り得なくは無い、の、かも……?



 ラブメモには攻略対象毎の個別ルートがあり、全員を同時攻略する事が出来ないゲームだった。わたしの知っている限りは、だけれど……。



 クリスチアンの人間不信をヒロインが解決するイベントは、ストーリーの後半にある。もちろん個別ルートに入ってからだ。


 今のクリスチアン様の態度は、人間不信を解消した後のゲームのクリスチアンそのものだった。だから、マリーがクリスチアン様ルートに入っている事は確実で、それならレオンを攻略する事なんて出来ないはず……。




 ここは現実で、ゲームとは違う。


 でも、今までのイベントだって、ラブメモのストーリー通りに動いていたのに……。




 でもでもだって――。そんな風に考えたって、わたしには何も分からないんだから仕方ない!

 無理やりに思考を切り替える。今気に掛けなければならないのは、マリーだ。



 マリーへのいじめは、マリーが一人になった時に起こっているのがわかった。ならば、一人にしなければ良いと思ったのだ。


 お昼はもちろん、少しの移動でもマリーと共に行動していれば、きっとマリーに悲しい思いをさせなくて済む。



 わたしに解決出来るなんて、到底思えないけれど、マリーに悲しい思いをさせないように、出来ることをしよう。



 この世界がラブメモと同じなら、マリーが優秀な成績を取る事で周りの生徒にクリスチアン様との仲を認められて、いじめが無くなるはず。


 アンナさんはゲームと違いドニの事が好きみたいだから、ヒロインのマリーをいじめる理由はないし、実際にいじめてはいない。


 エヴァンズ様は……交流が無さすぎて分からない。ゲームの通りなら、いじめを指揮しているはずなんだけれど……。


 実際にエヴァンズ様を見ると、いじめをするようなタイプには見えないというか……。ツンデレ?



 ――じゃあ、誰がいじめを?



 運命の――ゲームの強制力で、別の誰かがその役割を担ってる……?




 どんなに考えても、やっぱり思考はここに戻ってきてしまう。ラブメモ、主人公、ゲーム、現実、ヒロイン、攻略対象――そんな事ばかりが頭の中を掌握する。





「応援、がんばりましょうね」


 甘く澄んだ声に、一気に現実へ引き戻される。マリーが両手を握りしめて、愛らしく微笑んでいた。


「ちゃんとオレの応援しとけよ〜?優勝してやっからさ!」


 いつの間にか隣にはレオンが居た。レオンはイタズラっ子の様に歯を見せながら笑っていた。


「フレデリクも応援席からオレが優勝するとこ見てろよな!」


「レオン……貴方はその態度を改めなければ――」


 レオンは意地悪そうに言うと、フレデリク様がそれを咎めようとしたが「オレは練習忙しいから〜」と言いながら笑って立ち去った。


「まったく、レオンはいつまで経っても……」


 レオンが悪戯にからかって、フレデリク様がそれを咎める。ここ数週間ほどで見慣れた光景になってきた。


 慣れてきた自分に、なんだか少し悲しくなってしまった。


 ふたりには仲良くなって欲しいけれど……。



 マリーが本当にレオンを攻略しているなら、ふたりの仲直りイベントが起こるはず。


 ふたりのどちらかを攻略している時、好感度が一定以上溜まると必ず起こるイベントだ。だから、ふたりを攻略する上で必ず通るイベントなのだ。



 でも、ふたりが仲良くなれそうな気配はしないし……やっぱりマリーはレオンを攻略していないのだろうか……?



 そんなマリーを見ると、今も愛らしくわたしに微笑みかけてくれていた。



 ラブメモリー、主人公、ゲーム、攻略対象、イベント、好感度……なんでわたしはこんな夢を見たんだろう……どうしてわたしは、こんなに夢に囚われているんだろう……。




 最初からこんな夢を見ていなければ、わたしは今頃どうしてたんだろう……?



 王立学院に行こうなんて思わず、ダンテ師匠ともグー先生とも会うことはなく、ずっと村で、ドニと一緒に居たのかな……。


 




 

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