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44話 終わりはいつも突然に

 


 剣術授業の後は、必ず筋肉痛に悩まされる。日常生活に支障をきたす程に。

 それはわたしだけでは無いようで、最近はマリーとフレデリク様との筋肉痛談義が、通常会話のようになってきていた。


 クリスチアン様は上位グループで稽古をしているのに、まったく筋肉痛の素振りを見せないので感服してしまう。その事を本人に伝えても、ただ微笑むばかりだった。


 ……もしかして、貧弱過ぎて言葉も出ない、とか?


 最近は疲れたからと寝てばかりで、あまり運動できてなかったから体力が落ちてるのかも……体力作りも頑張ろう……。




 今日も皆で集まって昼食を取っていた。合同での剣術授業があり、共通の話題があるといつもより会話が盛り上がる。



「あれっ?お前ら今日もそんな事してんのか?」


 自主練終わりであろうレオンが、通りがかりに声をかけてきた。そこにいつもの明るさはなく、訝しんでいる様な声色を含んでいた。


「まさか毎日してたんじゃねーよな?あんま言いたくねーけど、こんなつまんねー事で厄介事起こすなよー?」


 レオンはそんな言葉だけを残すと、ヒラヒラと手を振りながら立ち去る。


 残された言葉がチクチクと胸に刺さる。


 言われるまで気づかなかったけれど、わたしは特進科の優待制度を利用して昼食の食材を分けてもらっていた。友達だから、という理由で皆と分け合って。



 王立学院の学食は、平民の常食にするには値段が高すぎる。それはドニ達だけではなく、皆一緒のはず。それなのに、わたしがこんな事をしていたら不満を持たれても可笑しくない。




 『まさか毎日してたんじゃねーよな?あんま言いたくねーけど、こんなつまんねー事で厄介事起こすなよー?』




 そんなレオンの警告が、わたしの胸を抉る言葉になる。余りにも軽率で軽々しい行動に頭が痛くなる。


 いつも同じ事で繰り返し後悔している自分に、嫌悪感すら抱いてきた。



 皆も同じ事に思い至ったのか、ぎこちないまま今後の昼食会も中止するという方向に話が進んだ。



 わたしが思い付きでこんな事を始めてしまって、皆に迷惑をかけてしまったかも……。


 これからはわたしも学食で昼食を摂るのかぁ……。おそらく特別ラウンジを使う事になるのだろうけれど、あそこは高貴すぎて気後れしてしまい美味しく昼食を頂けなさそう……。



 そんな様々な後悔や不安を抱えたまま、最後の昼食会は終わってしまった。突然の終わりに戸惑う事すらも出来なかった。そんな終わりだった。





 ひとつの習慣が突然の終わりを告げても人生は待っていてはくれなくて、またいつもの様に日常が始まった。



 今日の剣術授業ではいつもより一歩進んで、打ち合いをする為の基本の型の練習をしていた。わたし達は三人グループなので、ふたりが打ち合いの練習をしている間にひとりは見学の様な形をとっていた。


 フレデリク様とマリーが打ち合いの練習をしている間、わたしは見学をしていた。するとレオンが駆け寄って来る。


「まだそんな事やってんのかよー」


 レオンはわたし達の光景を見て、無邪気に笑った。わたし達なりに頑張ってはいるが、やはりレオンなど剣術が達者な人達からするとお遊戯程度にしか見えないのだろう。ぐうの音も出なかった。



「さっきは忠告してくれて、ありがとう。皆が悪く言われる前に気づけてよかったよ」


 話題を変えるために、先程の話題を持ち出す。レオンは驚いた様に目をクリクリと見開くと、頭の後ろで手を組んだ状態のままこちらを注視する。



「ん、まぁ……ならよかった」


 レオンはフイっと顔を正面に戻すと、ふたりの打ち合いを眺めていた。一瞬の沈黙があったから、何か変な事を言ったのかと不安になったけれど、杞憂だったみたい。



「三人だと大変だろ?オレが相手になってやろうか?」


「わたしは嬉しいけど……レオンは退屈なんじゃない?」


 レオンの提案はとても嬉しいけれど、わたしにしかメリットが無いように思えて気が引けてしまう。


「人に教えんのも修行の内だろ?」


 ニッと無邪気な笑顔を見せて、わたしの遠慮を吹き飛ばしてくれた。そのお陰で、素直にお願いすることが出来た。

 まだ筋肉痛で全身が痛いけれど、また今日もレオンとの打ち合いが始まった。


 前回とは違い、重心の移動の仕方や力の抜き方など丁寧に指導してくれる。根性論ではなく技術面で的確な指示を出してくれて、正直驚いてしまった。


 力の入れ方や抜き方、重心の移動を意識すると筋肉痛を軽減させながらも、力強い一撃を振るう事が出来た。ひとつひとつを丁寧に教えて貰えたおかげで、しっかりとした型を身につけられる。



 技術が大切な事は理解していたつもりだったが、ここまで変わる事が出来るのかと感動してしまった。それをレオンに伝えると、何を当たり前の事をとでも言いたそうに笑われてしまった。



 その後もゆっくりではあるが確実に、打ち合いの練習を指導してもらえた。レオンがこんなに教え上手な事には、本当に驚かされた。





 フレデリク様にもこんな風に教えてあげられる関係になってくれればいいのになぁ、と少し寂しく思ってしまった。


 




 

三連休連続投稿2日目です!

明日も投稿予定なのでよろしくお願いいたします!

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