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33話 魔法玉



「見てくださいエマ!」


 マリーが綻ぶ様な笑顔を携えて、こちらにパタパタと近づいてくる。その手の平には、一際大きな金色の魔法玉が光り輝いている。「上手に出来ました!」と言ってわたしにニコニコと見せてくれた。

 マリーの甘やかなピンク色の髪に、金色の光が柔らかく反射する。それはまるで天使と見紛う程の可愛らしさだった。そんなマリーと光属性の相性は完璧だなと思った。


 その可愛さに暫し見惚れてしまった。キラキラとしたアクアマリンの様な瞳は、期待で満ち溢れているようだった。


「すごいねマリー。お月様みたいでとても綺麗」


 するとマリーは頬を染め、恥ずかしそうに微笑んだ。その姿に癒されながら、わたしは気を取り直す。魔法玉を作るためにまた集中する。


 水属性の魔力を集めるイメージ……体内魔力とそれを混ぜるイメージ……魔法玉を作るイメージ……イメージ……イメージ……。

 もう出来ていないのは、わたしだけだ。わたしが出来ないせいで授業が止まっているのも、一目瞭然。チラチラと魔術科の生徒の視線も感じる。魔術が得意で魔術科に選ばれた生徒たちなのだから、きっとこんな事も出来ないわたしが不思議で仕方ないのだろう。それでもわたしは真剣に、魔法玉を作る事に集中する。


 頑張っているつもりでも、やはり手元に変化は現れなかった。


「いつまでやってるんだ?」


 頭上から声をかけられハッと視線を上げると、ジルベール様が居た。やはり今日も、目元にはくっきりと隈がある。そのせいで陰鬱とした印象を相手に与えているようだった。


「魔法玉が全然でなくて……」


 わたしは手元に視線を落とす。皆は特別魔法が得意で、わたしが特別魔法が不得手なのは分かっていたつもりだ。けれど、そのせいで迷惑をかけているのかと思うと、気後れを感じる。


「そもそも、何をそんなに力む事があるんだ?」


 ジルベール様がそう言うと、サッと手を半円を描くように手をかざした。


 すると、赤や青、緑など色とりどりの魔法玉が6つズラリと並んだ。均一に整えられた魔法玉は全て属性が違うのに、お互に干渉することなく静寂を保っている。それはわたしの知っている魔法玉と違い、まるでガラス玉の内側に各属性の魔力がそのまま閉じ込められている様に見えた。


 まるで宝石のような美しさに、思わず触れようとすると「吹き飛ぶぞ」と無感情に言われ、咄嗟に指を引っこめる。


「魔法玉は魔力の塊そのものだ。これだけ高密度の魔法玉に触れたら腕ごとなくなるぞ」


 ジルベール様に呆れた様に注意された。自分の不注意さに反省してコクリと頷く。

 ジルベール様はハァ……と一つ息を吐いた。


「魔力を選別して魔法玉を形成するだけだ。何をそんなに力む必要がある?」


「う……やってるつもりなのですが……」


 ゲームだったら音楽に合わせてボタンを入力するだけだから簡単だったのに……。現実はこんなに難しいんだ……。

 落ち込んで俯くわたしの視界に、ふたつの手の平がスっと差し出された。


「先ずは魔力の流れを感じ取ることから始めろ」


「魔力の流れを……?」

 

 わたしがどういう事か考えていると、ジルベール様はわたしの両手を下から掬い上げる様に掴んだ。


「今から僕が魔力を流す。お前はその魔力に意識を集中させて、魔力がどんな風に流れているのか感じ取れ」


 わたしは理解できないながらも頷いた。


 繋いだ手の平から魔力が流れてくるのを感じ取るために、わたしは目を閉じた。触れている手の平がポカポカと暖かくなり、これが魔力を流される感覚かと実感する。


 ドクドクと鼓動に合わせて熱が広がっていく。その熱を追って、魔力の流れを意識する。体の中心に向かってジワジワと熱が広がり、ポカポカとした感覚に包まれる。



 

 ――あれ?わたし、この感覚をどこかで

 


 

「どうだ?感覚は掴めたか?」


 ジルベール様の声が聞こえる。今までわたしの体の中を巡っていた魔力が、まるでその声に反応したかのように震えた。


 その瞬間、内臓がグルグルとかき混ぜられる様な感覚に襲われる。カッと瞬間的に体の表面が、顔が、熱くなるのに、体の内側は寒気に襲われるような、ゾクリとした感覚。

 


 遠くで何かが聞こえる。目を開けて確認したいのに、瞼が重くて開かない。ドンっと額が何かにぶつかる。



 「――!おい!目を開けろ!」



 その声と共に肩を揺すられた。その衝撃で薄らと目を開けることが出来た。


 あれ?こんなにジルベール様は近くにいたっけ?そんな事を思っていると、自分がジルベール様の胸の中にいることに気づく。


 もしかしてさっきの額の衝撃はジルベール様の胸だったの……!?


 恥ずかしさから顔も体も熱くなる。はやく避けなければと思うのに、体が動かない。



 こんなに近くにいるのに、ジルベール様の声が遠くに聞こえる。


 また瞼が重くなってきて、わたしは目を瞑ってしまった。もう一度、目を開こうとしても開かない。



 遠くで、ジルベール様の声が聞こえる。それ以外にもマリーの声が聞こえてきた。




 わたし、どうしたんだろう……。


 体が全然動かない。声も、出せない。



 すごく眠い。



 わたしは睡魔に抗えなくて、そのまま意識を手放した。

 

 

 

 


 

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