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32話 魔術実習

 


 パチリと目を開けると、優しく光に照らされている天井が見えた。朝日に照らされた、わたしの部屋。


 またわたしは、いつの間にか部屋に戻ってきていたのだろうか。そう思いながら、のそのそとベッドから降りる。夢、を見ていた気がする。まだわたしが、自分を主人公だと勘違いする前の夢。あの頃のわたしは、何を考えて、何のために生きていたんだっけ?


 そんな、どうでもいい事をボーッと考える。机の上に薬袋がいくつか置いてあるのに気づく。あれ?この前無くなったはずじゃ……?勘違いしてたのかな。最近ぼんやりすることが多いし、気をつけないと……。




 今日は魔術学の先生の所へ、補習を行いに来ていた。


「自然の中に溢れている魔力の属性を選び、それを体内に取り込んで自分の内にある体内魔力と練り合わせます。そうすると魔法を発動する事ができ、これを魔術と呼びます。」


 先生は丁寧に、淡々と説明を続ける。


「人にはそれぞれ得意な属性という物を持ち合わせています。取り込んだ魔力が、体内魔力と混じり合いやすい属性の事ですね。体内魔力の量は先天的なものですから、魔術を行使する事において、魔力属性を知ることはとても重要になります。体内魔力が無くなる、という事は、ただ魔術が使えなくなるという事ではありません」


 ひと呼吸おいてから、また話し出す。


「体内魔力は酸素や血液と同じように常に体内を巡っています。それが無くなるのですから、生命活動にも致命的な障害が発生する事や、それに付随する病がある事が近年わかってきました。魔力系統の疾患ですね」


 わたしは自分の胸に手を当てた。魔力系統の疾患。わたしは、恐らくそれなのだろう。飲んでいる薬も、疲れやすい体質から、という事だったけれど、きっと魔力の循環を助ける類の薬なのだろう。


「魔術医療分野はまだ未発達ですから、この話はまた今度。それでは話を戻します」


 先生が手に持っている資料に目を移す。


「エマさんは魔力量は多い方ですね。得意属性は水属性のようです」


 魔術不器用なわたしでも、水属性の魔法なら扱いやすいという事らしい。何も知らなかった以前のように無邪気にワクワクなんて出来ないけれど、少しでも自分に出来ることが分かったような気がした。気持ちに余裕が出来たからか、モヤモヤと残っていた焦燥感のようなものが少し落ち着いた。



 その後も何日かに分けて補習は続いた。そして今日は魔術科と合同の実技授業だ。魔術学の先生から、なんとか合格を貰えたけれど、それで魔術が上手くなる訳では無い事は分かっている。その上、魔術科との合同授業となると必然的にわたしが一番ヘタクソという事になる。


 少し緊張しながら、今日の授業の説明を受ける。


「魔術というものは魔法を発動させること自体は容易ですが、それを維持することは難しい。それは分かりますね?」


 魔術科の先生は当然と言うように、わたしたち特進科に向けてだけ語りかける。


「先ずは自分の得意属性の魔法を発動させ、魔力を流し続けて維持するのです。水属性が得意なら水属性の魔力を取り込めば、体内魔力と混じりやすく魔力消費も最小限で留められる筈です」


 うぅ……先生がわたしの目を見ながら話している気がする。発動させるだけでも大変なのに、維持をする事が出来るのかな……。


 不安な気持ちのまま魔術に取り組む。魔術科の生徒たちは、フワフワと色とりどりの魔法玉を浮遊させている。


 クリスチアン様は光属性と相性がいいので、金色の魔法玉を5つフワフワと浮かせていた。大きさはバラバラだけど、それが光のコントラストを描いて美しい。プラチナブロンドの髪に金色の光が反射して、キラキラと輝いている。

 そんな絵画の様に美しい姿に見惚れていると、金色の光に照らされたサファイアの瞳と目が合う。右耳に髪をかける仕草をしながら、ニコリと微笑まれる。


「魔力の出力をもう少し調整しないと、形が揃わないみたいだ。不格好で恥ずかしい物を見せちゃったね」


 言葉とは裏腹に、クリスチアン様の魔法玉は煌々と光り輝いている。


「そんな事ありません。クリスチアン様の髪の色に似て、すごく綺麗」


 それに比べてわたしは……。

 水属性の魔力を選別して体内に取り込むイメージ……そして体内の魔力と混ぜ合わせるイメージ……イメージ……。


 ただ力んだだけで、わたしの手元にはなんの変化も起こらない。


 ふと視線を手元から上げると、フレデリク様が緑色の魔法玉を浮かせていた。3つの魔法玉はきっちりと同じ大きさでピシッと並んでいる。風をそのまま固めた様な緑色の魔法玉。風が吹いているのか、フレデリク様の深緑色の髪がそよいでいた。

 わたしの視線に気づいたフレデリク様が、少し困ったようにこちらに微笑む。


「形を揃えることに集中してしまって、風属性の魔力の固定が疎かになってしまいましたね。風が漏れてしまいました」


 まだ魔法玉すら作り出せないわたしには、とても高度な技術の話だ。


「わたしも頑張ります!」


 自分に気合を入れて、また魔法玉を作るために力を貯める。体の中心にグッと力を入れて、手の平に集中する。

 自分でも気づかない内に呼吸を止めていたようで、息が苦しくなってからそれに気づく。


 やはり手の平には何の変化も現れない。


 わたしが落胆しかけていると、パタパタとこちらに近づいてくる足音が聞こえた。






今日は祝日分の投稿でした。

次の投稿は11月5日(土)14時になります。

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