表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/153

24話 呼び名

 


 マリーさんが落ち着いたのを確認すると、午後の授業が始まる時間が近づいてきていた。わたしたちは大急ぎで教室まで戻った。



 教室に入ってすぐ、わたしはフレデリク様にしっかりと叱られてしまった。冷静に、淡々と、何が悪かったのか諭されるように叱られた。怒鳴られるよりドッシリと心に響いた。


 そして運悪く、午後の授業は教養と礼儀作法の授業だった。昼休みの出来事が先生の元まで届いていたらしく、また懇々と諭された。


 フレデリク様も先生も、マリーさんにはサラッとした注意で終わったのに、わたしに視線を移した瞬間目の色が変わった……。

 いや、これが目的だったんだけどね?自分に注意を向かわせて、マリーさんに被害が及ばなければ良いんだけどね?

 自分が思っていたよりも酷い事をしていたようで……反省しました……。



 授業が終わって教室を出ようとしたら、クリスチアン様が「またいつでも私の事を“クリクリ”って呼んでいいからね?」と悪戯っぽく微笑んできたので丁重にお断りさせていただいた。




 その日はマリーさんと少し仲良くなれた気がして、多幸感に包まれながら眠りについた。





 朝になり支度を済ませ、食堂に向かう。女子寮を出ると、玄関ホールにマリーさんが佇んでいるが見えた。

 窓から漏れる朝日が、ピンク色の髪と白い肌に反射してマリーさんの純真さを際立たせていた。


 マリーさんがこちらに気づき、可愛らしい笑顔で「おはようございます」と挨拶してくれた。わたしもそれに応え、マリーさんの元へ駆け寄った。


「マリーさん!どうしたんですか?こんな早くに……」


 わたしが声を掛けると、マリーさんは目線を下げて手を重ねながらモジモジと話し始める。


「あのっ……エマさんが朝早くに食堂へ出かけているの、知ってて……」


 わたしは不思議に思いながらも、マリーさんの次の言葉を待つ。


「わたしっ!自炊とかしていたのでお料理は得意です!なので、あの……お手伝い、させていただければと……」


 最後の方は力なく俯いて、両手をギュッと握りしめていた。昨日まで、マリーさんと少し仲良くなれたかな?と思っていたけれど、まさか一緒にお料理出来るなんて!

 わたしは感動して「もちろん!」と笑いかけた。


 ふたりで並んで食堂へ行くと、いつものようにアンナさんが待ってくれていた。わたしがアンナさんに手を振るとアンナさんも振り返してくれたが、隣のマリーさんを見て硬直してしまった。

 アンナさんは人見知りのようだし、突然だったから緊張しちゃうかな?と思いアンナさんへマリーさんの事をしっかり説明した。アンナさんは怯えながらだったけど、頷いてくれた。


 3人で厨房へ入り、下拵えをする。ラブメモのヒロインとライバルキャラのアンナが、仲良く会話をしながらお料理を作る姿に感動してしまう。そして、ヒロインとライバルキャラでも仲良くなれる可能性を見せられているようで、胸が熱くなった。


 皆で下拵えを終えて、残りは昼休みに集まってつくることにした。アンナさんとは普通科の前で別れて、マリーさんと特進科の教室に向かって歩く。



 特進科の教室へ続く扉を開けようと手をかけると、マリーさんから呼び止められた。その声に反応して、わたしはそのまま振り返る。


「あっあの!これから、“エマ”と呼んでも、良いでしょうか……?わたしのことも、マリー、と……」


 少し頬を赤らめながら聞いてくる様のなんと可愛らしい事か……!


「もちろん、マリー」

「はい!エマ!」


 わたしがマリーと呼ぶと、まるで花が綻ぶ様な笑顔を向けられた。こんな事くらいで喜んでもらえるなら、いくらでも呼ぶし呼ばれたい。


 ふたりで扉を開けて、教室へと向かう。その間もマリーは楽しそうにしていて、見ているこちらまで嬉しくなってくる。


 教室へ入るとクリスチアン様とフレデリク様に挨拶をする。マリーはそのまま、わたしたちの呼び方が変わった事を、胸を張りながら自慢していた。なんだか微笑ましいような恥ずかしいような、そんな気分になった。


 クリスチアン様がこちらを向いてふわりと微笑んだ。


「エマ、私の事も気軽に――」

「遠慮いたします!」


 何を言いたいのか察して、最後まで言い終わる前にプイっとそっぽを向いて否定した。クリスチアン様は「まだ何も言ってないのに」と楽しそうにしている。

 フレデリク様と礼節の先生にあそこまでちゃんと叱られて、それでも尚クリスチアン様に失礼な事を言えるわけが無い。そこまで心臓は強くできていない。




 午前中の授業が終わり、マリーと食堂へ向かう。特進科と他の科を隔てる扉に手をかけると、反対側の手を掴まれる。反射的に振り返ると、マリーがわたしの手を握っていた。「えへへ」と照れたように笑っていて、あまりの可愛さに倒れそうになる。


 扉を開けると、アンナさんが廊下で待っていてくれた。アンナさんはやっぱりまだ緊張してしまうのか、わたしと一緒にいるマリーを見て硬直している。

 マリーはアンナさんの緊張を見抜いたのか、優しく微笑んで「アンナさんもエマもよろしくお願いしますね」と可愛らしく小首を傾げながら語りかける。


 アンナさんはやっぱり緊張していたのか、わたしの空いている方の手を握ってきた。その手が微かに震えていて、アンナさんの緊張が伝わってくるようだった。


「お昼休み終わっちゃいますよ、行きましょう!エマ!」


 マリーが笑顔でグイッと手を引っ張り、駆け足で進んでいく。手を繋いだままのわたしとアンナさんは引きずられる様について行く。


 そう言えば、アンナさんは走るの苦手じゃなかったっけ?と思い振り返る。アンナさんは口をパクパクさせながら泣きそうな顔をしていて、やっぱりつらいのかも……!


「ま、マリー!もうちょっとゆっくり……」

「ごっごめんなさいっ!楽しみで、つい……」


 てへっと恥ずかしそうに笑うマリーがとても可愛い。

 アンナさんに「大丈夫?」と声をかけると、俯いたまま頷いた。やっぱり小柄なアンナさんにはつらかったのかも……。


 マリーはわたしより少し目線が下な程度だけれど、わたしからアンナさんは、旋毛が見えるくらい小柄だし、やっぱり歩幅も違うから疲れちゃうよね……。


 教養科の教室も近い事もあり、3人でゆっくりと食堂へ向かった。



 

今日で連休最後の投稿です。

またいつも通り、土曜日の14時更新に戻ります。

連休続きで投稿の間隔が短くて大変でしたが何とかやり切りました.......!

ご褒美にブックマークと下の方にある星マーク☆☆☆☆☆で評価のご協力をお願いいたします( *´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ