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21話 後悔後悔自己嫌悪

 


 わたしより、すこし背の低いマリーさんを見て、罪悪感が襲ってくる。


 あぁ、またわたしは失敗したんだ。ここはゲームじゃないのに、マリーさんに、必要のない傷を付けた。

 見過ごした、こんなの加害者と何も変わらない……。


 恐らく、髪を引っ張られたりしたのだろう。乱れたマリーさんの髪の毛を手櫛で梳く。


 甘やかな綿菓子の様に優しい、光に透ける様なピンク色の美しい髪が、わたしの手を離れふわりと風に舞う。


 海面に反射する空の色のように、澄んだ美しいアクアマリン色の瞳が、真っ直ぐにわたしを捉える。



 マリーさんの白く繊細な指が、わたしの頬を滑る。


「わたしは大丈夫ですから、泣かないでください」


 マリーさんは心配そうに微笑んだ。どうやらわたしの涙を拭いてくれていたようだ。



 わたしは、泣いていたんだ……。どこまでも自分勝手で、嫌になりそう。



 周りを見ると、いつの間にか教養科の生徒の姿は何処にもない。


「……親睦会、行きましょうか?」


 わたしが手を差し出すと、マリーさんは一回り小さな手を上に乗せてくれた。その手を握って歩き出した。


 食堂にある特進科の専用ラウンジに着くまで、わたし達は何気ない話をしながら歩いた。「肌が綺麗だね?」「髪の毛がすごくサラサラ!」「どんな石鹸を使ってるの?」「スキンケアは?」など、女の子なら気になる話をした。わたしが一方的に、気になる事を質問責めにしたとも言うけど……。

 そんな質問だらけのわたしにも、マリーさんはにこやかに応えてくれた。なんとなく予想はしてたしていたけど、マリーさんのこの美しさは天然物らしい……。


 スキンケア用品は贅沢品なのでとても高価な上、平民であれば手に入れることすら困難だ。わたしも石けんや香油を手作りして使っている。


 本物の美少女は何もしなくても美少女だという事実に驚愕してしまう。少しでも美少女に近づきたかったが、まさか寮に備え付けの石けんで全身洗ってそれ以外何もしていないとは……恐るべし美少女。


 わたしの作った石けんや香油に興味があるから頂けませんか?なんて可愛らしい社交辞令まで欠かさない……まさに完璧美少女とはマリーさんの事では!?


 わたしがマリーさんの可愛さを噛み締めていると、直ぐに食堂に着いた。大広間を抜けて階段を上がると、特別ラウンジに繋がる扉がある。

 わたしは特別ラウンジを使うのは初めてだが、マリーさんは慣れた様子で扉に手をかけた。


 特進科のある教室もそうだけど、扉があるだけで威圧感がある。まるで拒まれているようだ。


 扉がゆっくり開かれると、中には既にクリスチアン様とフレデリク様が待っていた。


「お待たせしてすみません」


 わたしが慌てて声をかけると、クリスチアン様は不思議そうな顔をしてわたしたちを見つめた。


「仲良くなれたようでよかった」

「はい!」


 微笑むクリスチアン様にマリーさんは、繋いでいる手を見せつけるように掲げた。そんな子供っぽい仕草も可愛らしくて思わず笑みがこぼれる。


 懇親会が始まり、各々が昼食を取りながら会話に花を咲かせる。マリーさんはクリスチアン様と穏やかに会話をして、わたしはフレデリク様と本の話で盛り上がっていた。


「『最新の魔術医療分野について』という本を愛読されているご様子でしたね?」


「はい。王立学院に入るので、その勉強のつもりでしたが、とても面白くてついつい読み込んでしまったんです」


 わたしが素直にそう言うと、フレデリク様は少し不思議そうに「……面白い?」と言いながら、眼鏡の奥の深い琥珀色の瞳を細める。


「はい!光魔法を用いた治癒術についての記述が特におもしろいんですよ!個々人には魔法を使う上での適性や相性がある様に、治癒術を使われる側にもその相性が適用されるそうなんです!だから光魔法を用いた治癒術でも、光魔法の相性の善し悪しが治癒効率に影響をもたらすそうなんです!面白いですよね!?」


 好きな本の話が出来て、思わず興奮して捲し立ててしまったが、フレデリク様は「ふむ」とか「なるほど……」と相槌を打ってくれていた。


「――治癒術単体で考えれば光魔法の方が有用性は高いが、被対象者の魔法適正によっては、水魔法や風魔法を用いた治癒術の方が費用対効果が高い、という事でしょうか」


「そうなんです!魔法を行使する側と受ける側、それぞれの相性適性があるなんて、今まで考えてもみませんでした!」


「エマは随分しっかり勉強したんだね?」


 わたしが興奮気味に話していると、クリスチアン様がクスリと笑いながら話しかけてきた。そちらに視線を移すと、マリーさんがこちらをキラキラとした瞳で見つめていた。


「エマさんすごいです!わたしそんな事、考えたこともありませんでした!」


「あ、えと……わたしが考えたんじゃないよ?本を読んだだけ――」

「でも尊敬します!」


 キラキラとした瞳で言い切るマリーさんに気圧されて、何故か頷いてしまった。


「マリー、エマが困っている様だよ」


 クリスチアン様が困った様に微笑みながらそう言うと、マリーさんは恥ずかしそうに髪を整え、火照った頬に白い手を添えていた。可愛い。




次回の投稿は、9月23日になります。

また連休での連続投稿になりますが、がんばります!

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