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マリーの日記帳11



 エマさんはクリスチアン様のご友人と昼食を一緒に食べているという事なので、エマを誘う役割はクリスチアン様が担う事になった。せっかくエマさんと話せる機会だからわたしが行きたかったのだけれど、クリスチアン様の言い分が尤もだったので諦めるしかなかった。


 もしクリスチアン様がエマさんのことが好きだとしたら、わたしはまんまとクリスチアン様に出し抜かれた事になる。なんておそろしい!どうにかして、他の人の好感度も確認できるようにならないのかな……。


 ソワソワしながら待っていると、フレデリク様がメガネの奥の琥珀色の瞳を優しく細めながら話しかけてくれた。


「マリーさんは本当にエマさんが好きなのですね」

「はい!だって、この特進科でひとりだけの平民だったらとても不安で、混乱して、寂しかったと思います。それに、こんなこと言ったら思い上がりだと思われるかもしれませんが、見た目の色合いが似ているので親近感が湧きますし、あんなに凄い人と見た目が似ているってそれだけで嬉しいですよね!?頭が良くて優しくて綺麗で可愛くて可憐で儚くて……もっと仲良くなれたらいいなぁ……」


 だってエマさんは、わたしを愛してくれている人だから。そう口には出さずとも、思わずわたしはうっとりと語ってしまった。そんなわたしを、フレデリク様は目をぱちくり見開いて見つめていた。


「それに、ひとりでは乗り越えられない様な辛い出来事があっても、ふたりならきっと大丈夫ですから」


「……そうですね。おふたりには、私たちと同じ特進科に所属しているというだけで、謂れの無い扱いを受ける事もあるのでしょうね……」


 フレデリク様が、そう小声で呟く。特進科に居ると、確かに色々言われる。特に教養科の生徒からの風当たりは強い。

 わたしが普通科に入っていたら、こんな思いはせずに済んだのかな?と考える事はあったけれど、それを差し置いてもエマさんと会えたことのほうが大きい。


「わたしは、エマさんと出会えただけで、この学院に来てよかったと、そう思っていますよ」


 わたしが笑顔でそう答えると、フレデリク様は少し驚いた様な顔をしながらも頷いてくれた。



 そんな話をしていると、教室の扉がゆっくりと開いた。わたしはまだ誰が来ているかも分からないのに、エマさんが戻って来たと決めつけて「おかえりなさい!」と言いながら飛び出した。

 エマさんは驚きながらも「ただいま」と返してくれた。驚いている顔もとても素敵!そんな思いでニコニコしてしまう。


 そんなエマさんを見てニコニコ和んでいると、不意にクリスチアン様がクスクス笑い出し、その美しい笑顔のままエマさんを見つめている。


「可愛いね?」


 クリスチアン様のその言葉を聞いて、激震が走った。わたしはニコニコとエマさんを見上げていた顔をパッと下げる。

 やっぱりクリスチアン様はエマさんの事が好き……!?もし好きにまではなっていないとしても、可愛いと、好ましいとは思っている……!

 さっきは冗談で出し抜かれたなんて思っていたけれど、まさか、わたしの思い違いなんかでは無く……本当に?


「えっと、エマさん、明日の昼食は……」


 わたしは話題を早く変えたくて、無理やり声をかける。

 

「はい。ぜひ参加させてください。マリーさん、フレデリク様」



 ……あれ?エマさん……フレデリク様の呼び方が変わった……?わたしの知らない間にフレデリク様とも進展が……!?いえ、変わったと言うより、戻った、と言う方が正しいのだけれど……でも!何かはあったはず!呼び方が変わるような、何かが……。わたしの知らないところで、エマさんがわたしよりも先に他の人とどんどん親密になっていく……!わたしの事を愛してくれているんですよね!?それともこれがエマさんの愛の形なんですか!?



 わたしは頭を抱えたい気持ちを抑えて、その日の授業を迎えた。


 エマさんはまだ本調子ではないのか、授業中にうとうとしていることがあるけれど、先生に質問されれば的確に正解を答えられるので、純粋に凄いなと感心してしまう。


 まるで、質問される問題の、答えを知っているような……。


 そんなこと、以前もなかったっけ?とふと思う。そう、あれは図書館で――


「まるでマリーさんみたいだね」


「……えっ?」


 突然エマさんから声をかけられ、わたしの思考は停止する。先程まで眠そうな目をしていたが、パッと目を見開くと途端に焦り出す。


「わっあ、えと……澄んだ水色と春の陽射しのピンク色のイメージがマリーさんみたいだなって、思って……あの、ごめんなさい……」


 エマさんは口早にそう言い切ると、シュンっと項垂れる。見るとクリスチアン様が発表していた詩文の内容にそった言葉のようだった。全く聞いていなかった……。クリスチアン様はお兄様に向けて詩文を書いたようだが、兄弟仲が良いのだな、と感心してしまった。それとも、王侯貴族であれば家族に向けて詩を書くのは、普通のことなのだろうか?


「兄上は青色の瞳だからあの表現にしてみたんだけど、確かに詩の内容はちょっと情熱的だったかな?」


 そう言って、サファイアの様な瞳を細め、少し照れた様に微笑むクリスチアン様は美しかった。その顔を見て、エマさんの頬がポっと赤く染る。そのエマさんの表情のなんと可愛いことか……。わたしに向けられたものでは無いのに、こちらまで少し照れてしまった。


「いえ、あの、わたしが勝手に勘違いしたので……すみません」


 そう控えめに言う声色も、恥じらった表情も、赤らんだ顔を隠そうとする仕草も、その一つひとつがとても愛らしく感じる。わたしは胸を抑えるので必死だった。そしてその表情を向けられたクリスチアン様は、表面上は冷静を装っているが、先程より少し頬が紅潮していたのを、わたしは見逃さなかった。




 こうして考えると、わたしのライバルって多いのかもしれない……特にアンナさんは強力なライバルだ……。だって、こちらへの牽制をいつも忘れないから。そしてそれをエマさんに悟らせない二面性を持ち合わせている……。なんておそろしい……。

 







あまりにも進みが遅いので、いつもの倍の量にしてみました。読みにくかったらすみません……。

今日から3日連続更新です!

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