24 大会前夜の夜会 下
あの日、あのお茶会に参加したのは、本当の本当に気まぐれだった。
私が6歳の誕生日を迎える少し前、ファンタジーな異世界なら茶会というものもあるのではないかとふと思いついて、まだ専属になって間もないメルリィに適当に見繕ってもらったのが、アスティア侯爵家主催のお茶会だった。
アスティア侯爵家が筆頭に立つ大衆派閥。
『平民も貴族も手を取り合い仲良く暮らしましょう』をモットーにしているだけあって、このお茶会では富裕層ではあるが平民の子供も多く招待されていた。
12歳までという年齢制限のある中で、親なしでお茶会に出れると言うのはそれだけ落ち着きのある子だけであったが、それでもさまざまな家柄の子供が集まっていて、わいわいと賑やかなパーティーだった。
しかしそんな中、知り合いなんて誰一人としていなかった私はというと、隅の席でひとり可愛らしいお菓子に舌鼓を打っていた。
一切の隙なく手入れされた美しい春の温室に、高価で上品な家具が用意され、一丁羅を着込み会話に花を咲かせる少年少女たち。最初は表情が固かったものの、その緊張から徐々に解き放たれ楽しげに会話を繰り広げていく様は、それはそれは眩しかった。
そんな光景を傍観していた私は、しみじみと異世界ムーヴを感じていたのだ。
あれは本当に有意義な時間だった。
そして子供たちの中でも一際華やかさを放っていたのが、幼いエレナーレであった。
アスティア侯爵家の、大事な大事な一人娘。
ローズピンクの髪色が映えるクリーム色のドレスに身を包んだエレナーレは、まるでバラ園の妖精のようで、異世界の中でも更に異世界にいるような、そんな雰囲気を醸し出していた。
「――初めまして。あなたはどこの家のご令嬢なの?」
だから鑑賞の対象が、いきなり私に接触して来たことには心底驚いたのだ。
驚きと困惑で言い淀んだ私だったが、エレナーレの宝石のような瞳に釣られる様に「ロクサーナ・バートンです」とただ一言、口から漏れ出ていた。
「そう、仲良くしてね」とバートンの家名に嫌な顔一つ見せず、綺麗な笑顔と共に返してきたエレナーレ。
面食いの私にとってリアルお姫様は目の保養だった。
後日呼び出しの手紙が来るなんて微塵も考えていなかった私は、思考をふわふわと漂わせながら純粋にその会話を楽しんでいた。
すぐに他の子供に呼ばれたためエレナーレが私の元にいた時間は短かったが、幸せな時間だった事はよく覚えている。
これが私とエレナーレの出会い。
個別に会う様になってからは、家のために取り繕うつもりなんて一切ない私と箱入り娘のエレナーレの会話は想像以上に弾み、そしてお互い1番の親友になり、今や親公認の恋人同士である。
人生何があるかわからないものだ。
「――ゴホンッ。状況を説明してくれるかな、ロキ」
エレナーレに抱きついたまま視線を向けると、我らがグランドマスターが少し不機嫌そうな表情で立っていた。
そしてその後ろにはこの夜会のホストである皇帝と、この場にいた各国の代表者が勢揃いしている。
もはやこのメンツでないと収拾がつかないと考えたのだろう。
しかしグラマスと皇帝以外は揃いも揃って私に対して及び腰である。普通に王族もいるんだけどな。
ちなみに王国の代表は、皇帝の後ろにいるのを見たら分かる通り、王妃様と第二王女様である。ロキと顔見知りのクリスティアン王子が参席する話もあがったらしいが、彼の冒険者ランクでは招待される条件を満たしていないため、フェアじゃないと本人から断ったらしい。まぁ、試合自体は映像球を使って世界中で放映されるし、どうにか割り切ることができたのだろう。
しかしどんなメンツで来られようとも、私はまだこの温かい腕の中に居たいので、再びエレナーレの首に顔を埋めながら手に持っているグラスをグラマスの方に突き出した。
「・・・アズカリウスの毒です」
「ロキ様」
錚々たるメンバーを無視する様に一言で返した私に、エレナーレが諭す様に私の名を呼ぶが、腕に力を込めるのみで拒否の意思を伝える。
グラマスのため息が聞こえ、そして手にあるグラスが離れるのを感じた。
「全く・・・、Sランクの君が頭を下げる事はないとはいえ、それでも反省してくれよ。もっと穏便に済ませることもできただろうに」
「知りません、そんなこと」
「はぁ・・・、おい」
絶賛不機嫌中であると態度で示す私に、2度目のため息をついたグラマスが誰かを呼ぶ声が聞こた。
そして近づいて来たのは見知った気配。彼は私の首根っこを掴んで、エレナーレから私をベリっと引き剥がした。
「ったく、気持ちはわかるがそろそろ離れろ」
「ううっ」
私を引き剥がすために動員されたのは戦友ハーバードだった。
駄々っ子と化した私を言いくるめられるのはエレナーレの次にはこのハーバードなのだから、グラマスの人選は正しい。グラマスから直々に呼び出しをくらった本人は相当迷惑そうだが、その表情を隠す事なく私に見せているというのも、他の人間とは違い私が気を許している証である。
「それで?あの犯人はどうする?」
「・・・、・・・とりあえず話を聞きます」
「分かった。なら別室にーー」
「このままでいいですよ」
グラマスの言葉に食い気味で返答を返し、敵の元へ足を踏み出すと、人垣がザッと捌け、冒険者たちが敵を取り押さえている場所まで分かりやすい道ができた。
便利ではあるが彼らは相当私に怯えているらしい。
殺気に当てられ死を予感すればこうもなるか。
会場中から弱々しい視線を感じる中、目的の場所に辿り着き、その場でじっと私の指示を待ったいた冒険者たちに目配せし、拘束を解く様伝える。
その手が離れた瞬間、倒れている敵の心臓へ向けて微弱な電撃を放つ。
バチンと少し大きな音がし敵の体が痙攣を起こしたのを見て、改めて影を使い拘束する。
心臓の止まっていた敵は仮死状態から瀕死状態へ戻り、息を吹き返している。
しかし目を覚さないのを見て再び電撃を与える。
冒険者含め、周りは2度に亘る電撃に終始ビクビクしっぱなしだが、2度目の電撃を受けて敵が呻き声を上げたのを見てザワッと声を上げた。
膨大な殺気を一気に受けると心臓が止まると言うことは、割と知られた事実である。
ここにいる様な、公式大会に関わる仕事をし闘い事に関心の高い者は知っていて当たり前、つまり皆がこの息をしていなかった敵は心臓が止まっていると認識していた。心臓が止まる=死が常識のこの世界で、この光景は死者が生き返った以外何者でもないのだろう。
「心臓が止まってまだ5分ほど。何かしらのショックを与えて心肺蘇生さえできれば、人が死ぬ事はありませんよ」
別にこれぐらいの情報、どうって事ない。
電気ショックという概念が存在しないこの世界でも、医学者であれば知っている知識だ。
まぁ、5分経ってると脳へのダメージは避けられないが。
「もしもし、聞こえますか?」
蹲っている敵にそう問いかけると、敵は苦しそうに荒い息を繰り返しながら渋々顔を上げ私の顔を睨みつけた。
しばらく待っても何も話そうとしないのを見て、あくまでも優しく語りかける様に口を開く。
「・・・現状、私へ敵対する勢力は4つあります。一つ、ユミルとアスティアの影以外の私の情報が欲しくて欲しくて堪らない世界中の諜報機関。二つ、ある国への恨みを募らせているであろう亜人種国家。三つ、昨今巷を賑わせている謎の組織。そして四つ、今回の大会の出場者たち」
この会場にも当事者は大勢いる。
一つ目の諜報機関に関しても、その上層部の人間はこの場にはわんさかいるし、亜人種国家の代表も当然参列している。
そして謎の組織とは、悪魔(仮)のことである。クリスティアン王子が狙われたあの騒ぎで捕まえた敵たちは、やはり王太子の事件と同様に、密室の牢の中で殺された状態で発見された。故に仮想敵組織が悪魔であるとアスティア侯爵には伝えてあるが、さすがに公表できる様な情報ではできないので、あえて謎の組織として噂を出回らせたのだ。あの時は派手な市街戦で目立っていたし、変な噂が立つ前にこちらから意図的に噂を流した。
「一つ目から三つ目は色々と事後処理も面倒なのでアレでしたが、どうやらあなたは四つ目の該当者の様ですね」
四つ目、つまり、この大会の出場者である。
「・・・」
固く口を閉ざしたまま睨みつけてくる敵に微笑みで返す。
「沈黙は肯定と取りますよ。面倒ごとの少ない四つ目の該当者でありがたいですが、しかしその手段が頂けない。私があのまま気が付かなかった場合、あなたは今以上の地獄にいたでしょうし」
『正々堂々』という言葉があるが、それを有言実行できる人間は、実のところほんの一握りしか存在しない。
誰だって負けたくないし、死にたくない。
その気持ちはよくわかる。
綺麗事を並べ続けられるほど、人の心は強くできていないから。
「どう転んでも、あなたに未来のない選択肢であると分かりきっていたでしょうに」
ここは、なんでもありのファンタジーな異世界。
大会前に相手が不利に、自分が有利になる様な細工をしていても、バレなければ何だってセーフなのだ。
しかしこの大会の様に圧倒的強者が揃う場合、小細工は自ずとバレる危険が高くなるためリスクを考えれば普通は思いとどまる。
それ以上に、こういう場こそ煩わしいほど平然と『正々堂々』が求められる。皆、自分の実力に自信があるし、負けたとしても『負け』と言う結果にさえ誇りを持つ事ができるから。要するに、心が強い人間が集まっているのだ。
それでもやはり心の弱い人間は一定数いて。
過程にほんの少しの悔恨が残ったとしても満足のいく結果が得られるなら、ズルであろうと何だろうと、バレるまでのギリギリのラインを突き進んでしまう。
実際、危ういラインを行ったり来たりしている冒険者はいる。Bランクから下のランクでの話ではあるが。
目の前の敵の目的は私。この夜会でエレナーレを標的に選んでいる時点でそれは確定している。
しかし、そのエレナーレを選んだ時点でこの敵に未来はない。
最低でも即死。最悪、死んだ方がマシだと思わせる様な苦痛の中、寿命を迎えると言う罰が待ち受けている。
エレナーレが死んでいた場合、きっとすぐに首を跳ね、全身をミンチ状にしてその場で1年以上踏みしだいていた事だろう。来世まで呪うというおまけ付きで。その時は理性を吹っ飛ばしてるだろうから、この皇城の壊滅は避けられない。
これほど分かりやすい自分の未来なんてないだろうし、この敵は自身の命と引き換えに何を得たかったのか。
「話すつもりはないですか?」
私を睨んだままで返答が一切返って来ない敵の様子を見て、やれやれとため息を一つこぼしながらゆっくりと膝をつき、敵の胸ぐらを強く掴み上げる。
そして、至近距離で瞳の奥を覗きながら、これまで努めて貼り付けていた表情を消し去り、どす黒い感情の乗った瞳でジッと敵の目を見据えた。
「ヒッーーー」
「―――言え」
スキルは一切使っていない。
それでも暗く強い意志の乗った言霊は、敵の身体に纏わり付き、そして精神を恐怖で支配する。
「っ・・・、っ・・・、・・・。・・・、・・・大会を、中止にーー・・・」
その消えそうな細い言葉を聞いて、噛み締めていた奥歯がギリリと音を鳴らした。
どうやら彼は、エレナーレが害されることで、私が理性を飛ばし暴れまわることを狙いにしていたらしい。
自分の試合を有利に、どころの話ではなかった。
本当に腹立たしい。私の大事なものに手を出して利用して、己の欲を満たそうとするなんて。
しかし、私の表情を見てガタガタと体を震わせる敵を見て、何故だか途端に興が削がれた。
くだらないと、心底そう思った。
私の周辺に立ち込めていた感情の渦が掻き消えた事に、会場中の人間が揃ってほっと息を吐く中、敵の胸ぐらから雑に手を離し立ち上がる。
私が周囲の冒険者と衛兵たちに目配せをすると、彼らはすぐさまこちらへ駆けつけ敵を拘束、そして引き摺り会場の外へ連行して行った。
完全に敵の姿が消え、会場中を再びの静寂が支配する。
機嫌を伺う様な視線を集める中、無表情のまま無言で踵を返しエレナーレの元に向かう。
そして私は、徐に『収納』から光の精霊石を取り出した。
手のひらの上で風と水の魔法を使いそれを細かく加工する上で、【毒耐性】の付与を施す。
パチパチと魔力の閃光が煌めく様を、道を開けたままの周囲の人間は食い入る様に見ていた。
何の規則性もない無骨な形だった精霊石が綺麗にカットされた宝石へ変わり、粉砕された粒子状の精霊石はシルクの糸へ練り込んでいく。
他の鉱石も存分に使い、魔力によりそれらはシュルシュルと首飾りの形へと変貌する。
最後の仕上げに金具をつける頃、丁度エレナーレの元へ辿り着いた。
私の手にあるこれがどういったものであるのか、そして私がそれをどうしようとしているのか、それを察しているエレナーレは、私の顔を見て少し青い顔にぎこちない笑みを浮かべた。
その顔を見て少し躊躇してしまう。
この親友の顔は明らかに引いている時の顔である。
大切な親友の死を予感すると言う、前世も含めて最も心が大きく揺れる事象が起こったばかり。
それが余計に私の情緒を不安定にさせていた。
エレナーレの正面に立ち、未だ魔力の残滓が漂う掌の首飾りを見下げる。
己で生み出したそれに親友の身を守るための物であると勇気をもらい、顔を上げ緑がかった黄金の瞳をまっすぐ見据える。
「エレナーレ嬢。これを・・・、貰って、いただけますか?」
私との付き合いが長いからだろうか。
声と表情だけで私の心情を正しく感じ取ったらしいエレナーレは、戸惑いの表情から一変、ふんわりと優しい笑みを浮かべた。
そして、美しく弧を描いた唇からは穏やかな言葉が紡がれた。
「えぇ、喜んで」
***
『――さて、いよいよこの時がやってまいりました!5年に一度の祭典――冒険者協会公式世界大会、通称全世界公式戦。今大会は世界有数の大国、アルセリア帝国の帝都、アインツヘイルで行われます』
『アインツヘイルでの開催はおよそ80年ぶりとなります。しかし歴史の深い国ですので、当時の映像と比べても帝都の風景にあまり変化は見られませんね』
『国境線は外に広がっている様ですよ。20年前に帝国の西に位置していたシュバンツ王国が吸収されましたからね。その他にも周辺の部族との戦闘で、緩やかではありますが現在も国土を広げて行っています』
『さすがは武の国アルセリア。国力の停滞は許さないと言うことですね』
『現在アルセリア帝国を収めるのはルルヴィル2世。ルルヴィル・デュ・アルセリア皇帝陛下です。陛下が齢15の際に先帝がご病気でお隠れになったと同時に勃発した後継者争い。3名の兄君と2名の弟君をその手にかけ、陛下は皇帝の座を勝ち取りました』
『当時は世界中の関心が集まりましたからね。ご存じの方は多いかと思われます。しかし10年前、ですか。もうそんなに時間が経ってしまったのですね・・・』
『アルセリアの隣国、こちらも大国グランテーレ王国の現国王の戴冠式もほぼ同時期でしたから、周辺国家は対応に追われた様です。敵対してはいけない強国の君主の交代で、自国にどの様な未来が待ち受けているのか気が気ではなかったことでしょう』
『現帝は豪胆で聡明。政治にも自ら取り組み、そして前大会は武王戦の最終決戦まで勝ち進んだ強さの持ち主です』
『皇太子を定めることなく皇帝が身罷られた場合、皇位争いは避けられませんが、150年前とは違い、なるべきお方が皇帝となられ、我々ギルドもほっといたしました』
『記録によりますと、150年前の当時、帝国内で最も武力の強かったリゼナブリア公爵家が5歳の皇子を担ぎ上げ、皇帝に据えてからは傀儡として政治を牛耳っていたと』
『帝国低迷の時代ですね』
『公爵に政治の才はなかったのでしょう。帝国は次第に国力を落としていき、一時その国土を半分にまで減らしたと言われています』
『それに終止符を打ったのが、傀儡とされていた皇帝アーロンです。公爵の手により、薬漬けにされ多くの女性を与えられ後宮に押し込められるという徹底ぶりでしたが、薬が切れ理性が戻るほんの少しの隙に、ある侍女と恋に落ちました。彼女の献身によりアーロンは薬から切り離され、そしてアーロンが18の時、一人の男児を授かりました。生まれて間もない皇子を侍女の生家、ルノー伯爵家へ預けたアーロンは、数年規模で公爵を罠にかけ大規模な粛清をおこない、皇子が15になると共に皇位を明け渡し、すぐにこの世をさったと言われています』
『病を患っていたとも、自ら命を絶ったとも言われていますが、真相については記述がありませんでしたね』
『帝国の劇団では定期的に演じられている有名な悲劇ですね。遺された侍女カタリナの儚い表情がまた心にくるのよ・・・』
『君、この前の取材の途中で姿が見えなかったのはまさかーーー』
『ゴホン。では開催国の紹介は程々にして、出場選手の紹介に移りましょうーーー』
***
『公式戦が行われていますアルセリア帝国、アインツヘイルは本日快晴。雲一つない青空が広がっています。『朋竜戦』『武王戦』『魔王戦』のタイトルが決定し、今日と明日で星王が決まる現場は今大会、いえ、近年稀に見るほどの盛り上がりを見せていますが、まずは本日までに行われてた3タイトル戦について振り返っていきましょう』
『――今回の公式戦は怒涛の展開から幕を上げました。まず最初のタイトル戦である『朋竜戦』。5名までで結成されたパーティーが出場できるタイトルですが、このタイトルを前々回大会から保持しているのが、北の大陸ルーディル王国の最強パーティー『三日月』でした。そして今回、それを破って見せたのがグランテーレ王国のモンダールで活躍する『星降りメテオ』。彼らが3大会ぶりの新タイトル保持者となりました』
『『三日月』はSランクの魔法使いが1人、前・中・後衛の揃ったAランクが3人の計4名で構成されている壮年のパーティーでしたが、魔法職が一人もいないAランク3人で構成されている『星降りメテオ』が勝利したことにより、会場は歓喜の渦に包まれましたね』
『解説者、豪鋼のダーヴィドは『星降り』の勝因は経験の質であると話していました。『三日月』がホームにしている北の大陸にも、もちろんダンジョンはありますが、しかし難易度はA級までと、どれもモンダールほど過酷ではありません。それに『星降り』はあの一閃のロキと仲がいいですからね。最前線にくらべると浅層ですが敵の数が多い、もしくは魔法攻撃の多い隠し部屋にロキと共に何度か挑戦したこともある様です』
『年齢による経験の数の差では『三日月』の方が有利でしたが、経験の質の差で『星降り』が勝利を収めた、と言う訳ですね』
『しかし、少なからずロキの存在が『星降り』を強くせしめたと言うのは、皆やはり察していました。ズルだ、エコ贔屓だと口にする人もいましたがロキに一蹴されていましたね』
『――『星降りメテオ』の3人は私がSランクだから仲良くしている訳じゃない。私たちの交友が始まったのは私がCランクに上がった頃から。仲良くしようと声を掛けてきた3人の判断には先見の明があったし、冒険者にはそういった勘が働かないといけないんじゃない?それ以上に、私と3人の気が合ったのは、ただの運だしね。全部全部ひっくるめて、3人の冒険者としての実力だよ。――でしたっけ?機嫌悪かったですね、ロキ』
『誰でも友人を悪く言われたら怒りますよ』
『啖呵を切った後『星降り』と合流した際に、ロキがハーバードに撫でられていたのは尊い光景でした・・・』
『確かに、あの時のロキの満面の笑みの心からのおめでとうは心が洗われる様でしたね・・・』
『――さて次のタイトル戦は、魔法職の個人タイトル『魔王戦』でした』
『こちらは順当に前回タイトル保持者、『業火』のエーリオ・ボストレイがタイトルを防衛しましたね』
『業火のエーリオはその名の通り、一気に火力で勝ちに行くタイプです。頂上決戦は一瞬で決着がつきましたが見応えのある試合になりましたね』
『フィールド冒険者は周辺環境への影響を加味して、あまり派手な魔法は使えません。エーリオの魔法だと大火事になりますし、魔力のこもった大量の水は災害に繋がり、土もまた然り。フィールドで気を使わずに放てるのは風魔法ぐらいでしょうか。しかし殺傷能力の高い風魔法も結局森林破壊に繋がるので言わずもがな。派手で大規模な魔法を放つ事ができるのはダンジョン内ぐらいで一般の方が目にすることは少ないので、会場は朋竜戦と同じくらいの盛り上がりを見せました』
『それに加え、頂上決戦まで勝ち上がったのが魔法に長けたエルフ族だったというのも盛り上がりの一因でしょうね。エルフはあまり外界に興味を示さない種族ですので、タイトル戦に出場したエルフ族は彼女が80年ぶりとなります』
『本人曰く、例の事件でロキの様子を観察しに来たついでに出場したとのことです』
『ついでで頂上決戦まで辿り着いてしまうと言うのも凄いですよね』
『同理由で亜人国家所属の出場選手数は、前回大会の2倍となっています。出場権の得られるランクまで、貯めこんでいた昇級ポイントを使って一気に上げた様です』
『そして次に、つい昨日終わった、直接的な魔法攻撃不可の個人タイトル戦『武王戦』です』
『大迫力の魔王戦の次で少し地味に見えてしまう武王戦でしたが、魔法を使える比率が低い一般市民にとって、純粋な武器同士のぶつかり合いは白熱するものがあるため、声援には朋竜戦と似た熱が篭っていましたね』
『冒険者にならずとも武器を嗜む人は少なくありません。「今だ!」「そこだ!」と言った声が多く聞こえ、選手と観客一体となって盛り上がるその様は、公式戦の真の在り方だなと強く感じましたね』
『そして武王戦は、前回大会に引き続き『豪鋼』のダーヴィドが防衛しました』
『両手長剣を片手で振り回す様はまさに『豪鋼』。終始笑っていましたし狂戦士の様でしたね』
『――さて、皆様お待ちかねの時間が差し迫ってまいりました。この星の最強を決める『星王戦』。現在の星王はSランク『妖鬼』のニコライです。そしてそのタイトル奪取の最有力候補、いえ、既にニコライ本人からもタイトルの防衛はできないだろうという言葉も出ていますので、次の最強は決まったも同然でしょうか。頂上決戦まで勝ち進む事は必定、今大会で最も注目されているのは『一閃』のロキ。我々はその活躍を後世に伝えなくてはいけません。皆様、心の準備はできていますか?・・・では、『星王戦』――開幕です‼︎』




