サンタさんのクリスマス
クリスマスの頃、忙しくなる人がいますがそれは誰でしょうか?そう、サンタさんです。
サンタさんは24日の夜中に出発して25日の朝に子ども達が目覚めるまでの間にクリスマスプレゼントを届けなくてはいけないので大変です。
今日は12月23日。サンタさんはトナカイさんを呼んだり、ソリが壊れてないか確かめたり、明日世界中の子ども達の元へプレゼントを配るための準備をします。
でもサンタさんは最近、不安になっている事があります。
自分は何のためにプレゼントを配っているのか、分からなくなっているのです。
1年に1度の仕事だから一生懸命頑張ろうとは思いますが、毎年やってるせいか何のために頑張ってたのかをすっかり忘れてしまいました。
「おじいちゃん。どうしたの?」
「おじいちゃん、元気ないね」
サンタさんが準備している途中、サンタさんの孫がやって来ました。しっかり者のお兄さんとお姉さんです。
「うん。実はね」
サンタさんは孫に自分が不安に思っている事を話しました。話を聴いた孫のお兄さんが言いました。
「それじゃあ、クリスマスの町に行けば良いんじゃないかな?」
孫のお姉さんも言います。
「明日のプレゼント配りは私達に任せて。おじいちゃんはクリスマスの町を見てくればいいよ」
サンタさんは考えます。そう言えばいつもプレゼントを配るばかりでそれ以外は何もしていませんでした。
「それじゃあ、任せようかな」
「うん。任せておいて。おじいちゃんが毎年頑張ってた理由、思い出すと良いね」
「あ、そうだ。おじいちゃん、これあげる」
孫のお姉さんがサンタさんに服を渡しました。
「赤い服は目立つからね。サンタさんってバレないようにしないとおじいちゃんがゆっくり思い出せないよ」
「ありがとう」
サンタさんは孫のお兄さんとお姉さんにお礼を言いました。
12月24日。お昼頃にサンタさんは街にやって来ました。孫のお姉さんからもらった服のおかげで、すれ違う人は誰もサンタさんだとは気付きません。
サンタさんは自分が頑張ってた理由を思い出せるでしょうか?
「えーん、えーん」
サンタさんが公園を歩いていると、ベンチで小さい女の子が泣いていました。
「どうしたんだい?」
サンタさんは女の子に尋ねました。
「ともだちのね、くまちゃんのおててをちぎちゃったからね、ぜっこーするっていわれたの…」
どうやら女の子は友達とクマのぬいぐるみの取り合いになってしまい、ぬいぐるみを壊してしまったようです。
「おじいちゃん。サンタさんにあたらしいくまちゃんのぬいぐるみをおねがいしたらもらえるかな?もらったらね、それをともだちにプレゼントするの」
サンタさんは優しく答えます。
「ああ。お友達と仲直りしたいと思う君のような良い子のお願いを、サンタさんは必ず叶えてくれるよ」
「ほんとう?」
女の子はちょっぴり元気が出たのか、走り去って行きました。
サンタさんは女の子と別れた後、今度は街中を歩いていると小さな男の子とぶつかってしまいました。
「ごめんなさい」
男の子はサンタさんにすぐ謝りました。
「こちらこそごめんね。ボーッとしてたよ」
サンタさんも謝りました。よく見ると男の子は元気が無さそうなのでサンタさんは訊いてみました。
「どうしたんだい?今日はクリスマス・イヴなのに元気がないね」
「…ママとけんかしちゃった。おもちゃほしいっていってもかってくれないんだ。ねぇ、おじいちゃん。サンタさんってママとけんかするわるいこのところにはこないのかな?」
どうやら男の子はお母さんとケンカした事を気にしているようです。
「大丈夫。自分が悪い子だと思える子にはまだチャンスがあるよ。仲直りできれば良い子になれて、サンタさんは来てくれるよ」
「ほんと?じゃあね、ぼくもママもよろこぶプレゼントがほしいな。それでなかなおりしたい」
「それは良いことだね」
サンタさんは笑いました。
「あ、こら!そこにいたのね!?帰るよ!」
どうやら男の子のお母さんのようです。男の子はお母さんに手を引かれて行ってしまいました。
夜になりました。いつもならサンタさんはトナカイさんと一緒に空を飛んでプレゼントを配っていますが、今日はサンタさんの孫がやってくれます。サンタさんは空を見ていると、流れ星がキランと光りました。
「流れ星かな?いや、あれは孫だな。よく頑張ってくれているね」
流れ星と孫を見間違えたサンタさんは笑いました。
12月25日。朝になって子ども達にはプレゼントが届いているはずです。
サンタさんが公園を歩いていると昨日の女の子ともう一人の女の子見かけました。
「あの子が友達かな?」
サンタさんは木陰から女の子達の様子を見守ることにしました。
「これ、あげる。きのう、くまちゃんこわしてごめんね」
女の子は白いクマのぬいぐるみを友達に渡そうとします。
「ううん。いらない。わたしもぜっこーするっていってごめんね」
友達は絶交した事を謝りました。
「ママがくまさんのおててなおしてあげるから、なかなおりしなさいっていってたの。またいっしょにあそんでくれる?」
「いいよ。このこでいっしょにあそぼ」
「うん」
女の子達は無事に仲直りできたようです。
「しろのくまさんかわいいね」
「サンタさんからのプレゼントだよ」
女の子の幸せそうな笑顔にサンタさんは心が温かくなりました。
サンタさんが公園から出て街を歩いていると、昨日の男の子に会いました。昨日のお母さんの他に大人の男の人と一緒です。
「あ、きのうのおじいちゃん」
「やぁメリークリスマス。君のママとパパかな?」
「うん!これからゆーえんちにいくの!サンタさんのプレゼントがゆーえんちのチケットだったんだ」
「遊園地か。楽しそうだね」
「ぼくもパパもママもうれしいんだ!」
男の子がにっこり笑顔を見せてくれた時、サンタさんはある事を思い出しました。
12月25日の夜。サンタさんは家に帰ってきました。
「おじいちゃん。おかえりなさい」
サンタさんの孫達は既に帰ってきてました。
「お疲れ様。プレゼント配りは疲れただろう」
「そうだね。おじいちゃんはすごいね。毎年やってるもの」
「それで思い出せた?おじいちゃんが頑張ってた理由」
サンタさんは孫達に訊かれて、町で会った女の子と男の子の事を思い出します。
「ああ。思い出せたよ。私は子どもを幸せな笑顔にするために頑張っていたんだね」
サンタさんは無事に大事な大事な、自分が頑張ってた理由を見つけることが出来ました。