第28話_青と赤
銃声と同時に、ブルー・ヘヴンが大きく一歩動き、礼人たちの近くの虚空を腕で薙ぎ払った。短い金属音が交錯する。
建物のあった方角から、たくさんの人影が迫ってきている。K・H・Iの武装警備員たちだ。
空也が、トレーラーの状態を土筆に尋ねる。配線をいじっている、もう少し、との返事だった。「手伝う!」と、空也は、土筆のいる運転席へと走っていった。
ブルー・ヘヴンが、近づいてくる一団へ襲いかかっていくかのように身構える。
「やめろ!」、礼人は反射的に叫んだ。人間へ攻撃を加えたりしたら、どのようなことになるかわからない。それになによりも、ブルー・ヘヴンには、人間に危害を加えさせたくなかった。
警備員たちはトレーラーを囲みつつあった。配置についた彼らの何人かは、銃を構える。銃口の大半は、ブルー・ヘヴンへと向いているようだった。
一度、壁となっているブルー・ヘヴンが礼人たちのほうを振り向いた。その動きは、まるで指示を求めているかのようだ。礼人は大きく首を振ったが、ブルー・ヘヴンには伝わっていないようだ。美蕾が、「駄目……人間を襲ったら、戻れなくなるから」、ブルー・ヘヴンへとつぶやく。ブルー・ヘヴンは納得したのか、大きく一歩、礼人たちのほうへ後退した。
礼人たちの正面にいた警備員たちが動き、道を開けた。姿をみせたのは、癸矢だ。その手には、大振りの拳銃がある。
「ほう……それが君の造った第三種POSの自律覚醒か。論理構造は同じようだが……有機型との共振についても君が調整したのか?」
「有機型? 調整? なんのことだ?」
礼人は眉根をよせて癸矢をにらみつけた。気のせいか、ブルー・ヘヴンの駆動音が唸りをあげている。
癸矢は鼻で笑った。
「まぁいい。貴重なサンプルとしてこちらで研究すればわかることだ。
やつらをとらえろ。サンプル以外は傷つけて構わない」
それを合図に、包囲の輪が狭まる。
ブルー・ヘヴンも動いた。癸矢との距離を一気につめる。
「駄目!」、美蕾が叫ぶ。しかし、ブルー・ヘヴンは止まることなく、生身の人間に殴りかかった----瞬間、重い旋風があたりを包む。礼人は反射的に目を閉じ、予想される惨状を美蕾に見せないように、彼女の身体を引きよせてかばった。
礼人は恐る恐る目を開け、息を飲んだ。
赤い鬼が癸矢の背後に立ち、ブルー・ヘヴンの拳を癸矢の眼前で受け止めていた。
(つづく)




