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第7話 その頃・・・・・・

「なあ、貴海(たかみ)の奴、見なかったか?」


 夕食を終え、与えられているホールの一室で黒木(くろぎ) 強志(つよし)が、隣にいた同じクラスの友廣(ともひろ) (まもる)に聞く。


 どちらも貴海をイジメていた者たちで、しかも小学校から同じ学校でもある。そういう意味では、貴海を長い間イジメていた古参のメンバーとも言える。


「いや、俺は知らないな。そういえばいねーな」


 二人とも貴海以外をイジメた事はほとんど無い。単に貴海が小学校の時にイジメられているを見て、そのイジメのメンバーに加わっただけだ。


「貴海?あれならスキルを調べたときに、どこかに連れていかれたわよ?」


 話に加わってきたのは貴海と高校から一緒になった徳村とくむら 風花ふうか


 彼女の場合は積極的に貴海へ関わっていないが、それでも周囲が貴海をイジメているのを見て、笑い飛ばしていたりもしているし、同じクラスの男子生徒が机からわざと落とした教科書などを、貴海の目の前で無意識に踏んでいたりもしているが、当然無意識なので本人にそんな事をした記憶はない。またサッパリした性格のせいか、男子からのウケが良い女子の1人でもある。


「そうなのか?他の奴は?」


「多分だけど、貴海だけのはずよ。スキルを見たときに、アイツだけ1人にさせられていたのを見たの。2人とも覚えていないの?」


 揃って男2人は首を横に振る。


「私はその後は見ていないわね。それよりもこんな所でどうしたのよ。あんなのほっとけば良いじゃない」


「飯の後に暇だったからさ、アイツでも弄ろうと思ったんだけどよ」


 黒木の言葉に、徳村は納得したような顔をした。


「止める気もないけど、一応程々にしておきなさいよ?ここは学校じゃないし、既に私達が見ていない所でも他の生徒が殺されているらしいわ。下手に目を付けられたく無いじゃない?」


「そりゃそうだが、ストレス発散にはちょうど良いと思ってさ。適当なことを言えば、こっちの人間だって関わらないんじゃないか?」


「そうね。まあ私が知っているのはそれくらいよ。他の人にも聞いてみたら?ただ、だれもアイツの事なんて気にしていないみたいだけど。私もあんたに言われて思いだしたくらいだし」


「そうか。じゃあ他の奴に聞いてみるよ。情報サンキュ」


 こうして別れた3人だったが、貴海がいない事に触れたのはほとんどいない。そして翌日には誰も気にしなくなっていた。




「召喚した連中の様子は?」


「能力やスキルに問題はありません。1名予定外の者はおりましたが、今は隔離しました」


 近衛隊長のオレール=ドゥラノワが報告しているのは、この国の国王であるバレンティン=ハロン=テヘダ=パレンシア。他にも王子や王女数名に、筆頭魔導師や近衛兵、大臣などもいる。


「与えたエリア以外からは出る事が出来ないようにしておりますし、兵も配置しております。ある程度能力はあると言っても、所詮素人です。我々の相手にはなりません」


「隔離した者のことで報告が」


 ドゥラノワの横に控えていた筆頭魔導師のヘイノ=ベレンセが手を上げて発言する。


「名前はタカミ=コガ。ステータスは一般人にも劣ります。実際兵士どころか、普通の子供にも負けるような能力です。スキルなども一切なく、他の者に一応確認を取りましたが、どうやら召喚した者の中では嫌われていたようです。ステータスに被虐体質とありましたので、それが原因かと。地下の隔離室に現在は鎖を付けて隔離しました。今の所、この点について他の召喚者からこれといった質問すらありません。何人か居場所を聞いてきた者はいたようですが、興味半分で聞いてきたと思われます」


「私の部下からも同じ事を聞いております。現在は魔族との取引用として最低限死なない程度にしております」


 ベレンセの報告を追従してドゥラノワが補足した。


「うむ。異世界から召喚した者であれば、連中も少しは考えるだろう。ステータスも低く使い物にならない者なら、ちょうど良いな」


 国王の横に座っている国務大臣のバルドゥイノ=オルギンが納得したように首を縦に振った。


「適当に生きていればそれで良い。それで我が国の役に立つなら、召喚した意味もあるというものだ。他の者たちはしっかりと訓練させよ。多少引き延ばしが成功しても、どのみち砦奪還の為の先兵として、それ相応の実力は必要であろう」


 パレンシア国王はそれが当然という顔で、報告を促す。


「現在の魔族の状況ですが――」


 ドゥラノワが報告を続ける中、ほとんどの者たちは興味もなく貴海の事などすぐさま忘れてしまった。

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