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モジシャン  作者: 9741
第1章 遅れてやってくるのはヒーローだけで十分
9/9

里中さんみたいな秘書って素敵

 7月9日。


 ワードカンパニー(わーどかんぱにー)、通称WC。世界有数の文房具開発会社である。決して、ウォータークローゼットではない。


 昔W(ワード)C(カンパニー)が開発した空中に描けるクレヨンや液体を切るハサミは世界的に大ヒットし、世界一の開発会社となった。クレヨンは特に幼児に大人気で、乃々(のの)も子供の頃遊んだ経験がある。


 そんな会社の、とても豪華な社長室の応接用のソファに、乃々(のの)勇助(ゆうすけ)は座っていた。


 そして彼らに対峙するように、テーブルを挟んだ向こう側のソファにW(ワード)C(カンパニー)社長、(かん)一了(かずあき)が堂々と座っていた。



 時間は少し、数時間ほど遡る。


 乃々(のの)は自宅でこれからのことを考えていた。


 勇助(ゆうすけ)は好きで乃々(のの)とのデートをすっぽかしたわけではない、ヒーローとの二束のわらじで仕方なかったのだ。


 それを知った乃々(のの)は、勇助(ゆうすけ)に謝りたいと思った。


 そしてやり直したいと思った。


 でも彼にどんな言葉を送ればいいのか、乃々(のの)は分からなかった。


 そもそも、ヒステリックな自分がしたことを勇助(ゆうすけ)は許してくれるのかさえ、彼女には分からなかった。


 その時、インターフォンが鳴る。


「はーい」


 慌てて乃々(のの)は玄関へ走り、扉を開ける。


 誰だろう勇助(ゆうすけ)だろうか、と乃々(のの)は思う。


 しかし、訪問者は勇助(ゆうすけ)どころか男でさえなかった。


 扉の前にいたのは、女性だった。


「突然すみません、わたくしW(ワード)C(カンパニー)で秘書をしています、草垣(くさがき)と申します」


 女性は名刺を乃々(のの)に手渡す。


 名刺にはW(ワード)C(カンパニー)の紋章と『草垣(くさがき)天音(あまね)』という名前が書かれていた。


 大会社の秘書さんが何の用だろうと、乃々(のの)は名刺を見ながら疑問に思う。


佐倉(さくら)乃々(のの)様ですね? 社長の(かん)がお待ちです。車を用意しております、ご同行ください」


「ち、ちょっと待ってください! いきなり何なんですか!? W(ワード)C(カンパニー)の社長が一体……」


「フェイクキック。ふふ……いえ、失礼。なかなか愉快なネーミングセンスをお持ちで」


 草垣(くさがき)の言葉に、乃々(のの)はたじろいだ。

 

 フェイクキック。あの戦いで、乃々(のの)が叫んだ即席の技名だ。


 乃々(のの)は確信した、この人は私が変身して怪人を倒したことを知っている、おそらく勇助(ゆうすけ)がヒーローであることも知っている、と。


「(もしかして、昨日の通信相手が、社長さん?)」


「詳細は(かん)本人からお話します。ご同行を」

 

 車に揺られること10と数分。


 乃々(のの)W(ワード)C(カンパニー)本社に着いた。首が痛くなるくらいの高いビル。


「どうぞこちらへ。社長室まで」


 草垣(くさがき)秘書に案内され、乃々(のの)は自動ドアをくぐってビルに入る。


 2人の女性は他のより一段と豪華なエレベーターに乗る。


 草垣(くさがき)が言うには、社長室直通のエレベーターらしい。ボタンも1Fか社長室と書かれたボタンしかなかった。


 機械の箱の中で慣性の法則を感じながら、乃々(のの)達は社長室の扉の前に到着した。


 草垣(くさがき)は扉に3回ノックをする。


「社長、佐倉(さくら)様をお連れしました」


「……入りたまえ」


 扉の向こうから渋い声が聞こえる。乃々(のの)草垣(くさがき)は扉を開けて、入室した。


 部屋に入った乃々(のの)は驚愕した。部屋が自分の家より豪華だったから、という理由ではない。


 確かに社長室はとても豪華だった。でも彼女が驚いた理由はそれだけではない。


 社長室に、江角(えすみ)勇助(ゆうすけ)がいたのだ。まだ左腕が治っていないようで、包帯を巻いている。


「どうぞおかけください」


 秘書が乃々(のの)にソファに腰を下ろすように勧める。乃々(のの)は言われるがまま、勇助(ゆうすけ)の隣に座った。


 乃々(のの)勇助(ゆうすけ)の横顔を見る。彼はとても難しい顔をしていた。


「はじめまして、W(ワード)C(カンパニー)社長の(かん)だ」


 社長の代わりに秘書の草垣(くさがき)が、彼の名刺を乃々(のの)に手渡す。


 社長の声を聞いた乃々(のの)は、彼がこの前の通信相手ではないことに気付いた。声の感じもそうだが、喋り方が違う。


「君にはいろいろ聞きたいことがある。質問だ。江角(えすみ)勇助(ゆうすけ)の正体、世間でヒーローと呼ばれる存在の正体が何者なのか、誰かに他言していないな?」


 乃々(のの)は首を横にブンブン振る。


 彼女は誰にも、勇助(ゆうすけ)がヒーローであることや自分も変身して怪人を倒したことを、話していない。


 話したところで信じてもらえないという気持ちもあったが、なんとなく話してはいけない気がしたのだ。だから誰にも話していない。


「では次の話題だ。単刀直入に言おう。君が持っている(いし)を、我々に渡しなさい」


 乃々(のの)はキョトンとした顔をする。彼女は社長の言っている言葉の意味が分からなかった。


「あの、(いし)って何のことですか? 私、宝石とか持っていないんですけど」


 乃々(のの)はあまり宝石に興味が無く、買うことは無かった。


 勇助(ゆうすけ)から宝石のプレゼントを貰ったこともない。大会社の社長が欲しがるような石なんて彼女は持っていない。あってせいぜい、ウィザードリングぐらいだ。


「嘘をつくな。君は江角(えすみ)勇助(ゆうすけ)ドライバー(どらいばー)を使って変身した。あれは(いし)を持つ者にしか扱えない。つまり君は(いし)を持っているということだ。もう一度言う、(いし)を渡しなさい」


 社長の上から目線の態度に乃々(のの)はムッとする。


 さきほども言ったが彼女は(いし)なんて持っていない。


 それなのに何度も渡せと言われると、乃々(のの)もイライラする。


「だから(いし)なんて持ってないって言っているじゃないですか!」


「だから言っただろう社長。乃々(のの)は持っていないって。だいたい持っていたら俺が気付くっての」


 社長と秘書は互いに顔を見合う。そして草垣(くさがき)(かん)の耳で何かヒソヒソと話す。


「良いだろう、1から話す。但し、他言しないように願おう」


「……分かりました」


「今コーヒーを淹れます」


 秘書は壁際のコーヒーメーカーで3人分のコーヒーを用意する。


 登場人物情報が更新されました


佐倉(さくら)乃々(のの)

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。


 宝石は持ってないが、ウィザードの指輪は持っている。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角(えすみ)勇助(ゆうすけ)

 19歳。男性

 乃々(のの)の彼氏。

 青いヒーローに変身する。


 乃々(のの)に宝石をプレゼントしたことは無い。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。



(かん)一了(かずあき)

 年齢不詳。男性

 W(ワード)C(カンパニー)社長。


 偉そうな態度をとっているが、実際に偉い人。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダー2号。



草垣(くさがき)天音(あまね)

 18歳。女性

 W(ワード)C(カンパニー)の秘書。


 やり手秘書だが、実は乃々(のの)勇助(ゆうすけ)より年下。


 好きな仮面ライダーは、仮面ライダーレーザー(バイクゲーマーLv.2) 


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