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モジシャン  作者: 9741
第1章 遅れてやってくるのはヒーローだけで十分
7/9

戦いましょう、タックルさんが「仮面ライダータックル」になるその日まで

 しかし、一瞬遅かった。


 怪人はその鋭利な爪で勇助(ゆうすけ)を切り裂いた。


 勇助(ゆうすけ)は苦痛の叫びを上げながら、その場に倒れこむ。敵の攻撃のダメージが大きかったのか、勇助(ゆうすけ)の変身が解けた。


 そしてベルトに付いていた機械が乃々(のの)の足元に転がる。


「うぐぅう」


 変身の解けた勇助(ゆうすけ)の左腕から痛々しいほどの血が流れていた。


 さきほど勇助(ゆうすけ)は『全快ではない』と言っていた。


 それはまだ左腕が完治していないことを指していたのだ。


 その証拠に勇助(ゆうすけ)はさきほどから右腕や脚ばかりで攻撃し、左腕を庇いながら戦っていた。


 乃々(のの)はそのことに気付いた。


「どうしよう、私のせいだ」


 彼女は激しく後悔をした。


 自分がさっき勇助(ゆうすけ)にいきなり話しかけなければ、彼は敵の攻撃を受けずに済んだのかもしれない、乃々(のの)はそう思った。


 言うまでもなく、勇助(ゆうすけ)が攻撃を受けたのは、決して乃々(のの)のせいではない。


 勇助(ゆうすけ)は焦っていたのだ。早く敵を倒して乃々(のの)に会いに行こう、と思っていた。


 だから力が空回りし、敵を完全に仕留めていないことにも気付かなかった。

 

 左腕の怪我も同じ理由である。早くレストランに向かうために焦って怪我をしてしまったのだ。


 全ては勇助(ゆうすけ)の自業自得なのである。

 

 しかし乃々(のの)は自分のせいだと思った。


 自分が勇助(ゆうすけ)に声を掛けたせいで彼に隙が生まれたと悔い、自分が昨日ケーキを投げつけたせいで勇助(ゆうすけ)の怪我の回復が遅れたと自分を恨んだ。


 乃々(のの)は後悔の念から俯く。


 彼女の目線の先には、勇助(ゆうすけ)が変身に使ったアイテムが落ちていた。


 彼女は考える。今、自分にできることは何だろうか。


 勇助(ゆうすけ)に謝罪をすること?


「違う」


 彼に今まで奢ってもらった額を返すこと?


「違う」


 怪人の気を引いて、勇助(ゆうすけ)を逃がすこと?


「違う!!」


 彼女が選んだ、今自分にできることは……。


「こっちを見なさい化け物!!」


 乃々(のの)は奇妙なアイテムを拾い上げる。


「よせ乃々(のの)! それはお前には扱えない!!」


 勇助(ゆうすけ)の制止は彼女の耳には届いていなかった。


 乃々(のの)はアイテムを腰元にかざす。


 すると勇助(ゆうすけ)の時と同じようにベルトが巻き付き、彼女の身体に装着される。


「変身!!」


 掛け声と共に乃々(のの)は赤いボタンを押す。


 ――トメル! ハネル! ハラウ! レッツ、カキトリ!――


 定例の音声と共にアーマーが出現に、彼女の顔と身体に装着される。勇助(ゆうすけ)の時は青色だったが、今回は暖色の赤がベースの装甲だった。


「嘘だろ、なんで……」


「私の彼氏に何すんのよ!!」


 変身した乃々(のの)は、さながらプロレスラーのような華麗なドロップキックを怪人に浴びせる。


 怒りのこもった蹴りを喰らって、怪人は10メートルほど吹き飛ばされる。


勇助(ゆうすけ)大丈夫!?」


 乃々(のの)勇助(ゆうすけ)に駆け寄る。彼は左腕を押さえているが、命に関わる怪我は負っていない。そこは乃々(のの)もホッとする。


乃々(のの)。お前なんで……」


「待ってて! あの化け物を倒してすぐに病院に連れて行くから!!」


 彼女は怪人に対峙する。怪人の方はドロップキックを喰らったが、それほどダメージを負っている様子ではなかった。


 怪人が乃々(のの)に向かって飛び掛ってくる。乃々(のの)もそれに対して走り出す。


 相手の爪を用いた切り裂き攻撃を、乃々(のの)は女性特有の柔軟な動きでかわす。敵の攻撃が空振り、隙ができた瞬間を狙って、乃々(のの)は怪人の腹部や顔に打撃を喰らわせる。


「凄い……! このスーツ、滅茶苦茶パワーが溢れてくる!」


 女ヒーローはぐっと拳を構える。敵が攻撃してきたらそれを避けて、その隙に攻撃をする。乃々(のの)はこの戦法を取った。自分は傷害を受けずに、相手に少しずつダメージを与える。


 しかし、どういうわけか敵は全く怯んでいなかった。それどころか全然ダメージを受けていないようにも見える。男の勇助(ゆうすけ)と女の乃々(のの)では攻撃力に差があるのか、それとも怪人の防御力が高いのか、とにかく怪人にダメージはほとんどなかった。


「私のパンチやキックじゃダメージが無い。だったら……来て、キーメイス(きーめいす)!!」


 乃々(のの)キーメイス(きーめいす)を呼ぶ。さっき勇助(ゆうすけ)の変身が解けた際に、武器も消失していた。それを、乃々(のの)勇助(ゆうすけ)がさきほどやったように、呼び出す。


 女ヒーローの声に反応し、キーメイス(きーめいす)は……現れなかった。


 登場人物情報が更新されました


佐倉(さくら)乃々(のの)

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。


 自分の罪を償うため、謎のアイテムを使ってヒーローに変身した。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角(えすみ)勇助(ゆうすけ)

 19歳。男性

 乃々(のの)の彼氏。

 青いヒーローに変身する。


 左腕を負傷中。

 乃々(のの)が変身したことにとても驚いている。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。


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