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モジシャン  作者: 9741
第1章 遅れてやってくるのはヒーローだけで十分
5/9

電王で始まりはいつも突然って唄ってたけど、終わりも突然

 家に帰ってから乃々(のの)はドレスを脱ぎ捨て、すぐにシャワーを浴びた。


 まるで悲しみを化粧と一緒に洗い流すかのように、まるで勇助(ゆうすけ)との思い出を身体と心から洗い落とすかのように、熱々のシャワーを浴びた。


 脱衣所から出てドライヤーで髪を乾かしている乃々(のの)は、ふとスマホのロック画面にメッセージアプリの通知が来ていることに気付く。


 片手でドライヤー、もう片手の指で暗証番号を入力し、ロックを解除する。暗証番号は0707、乃々(のの)は2人が付き合った日を暗証番号にしていた。


「あとで変更しよ」


 そんなことを考えながら、乃々(のの)はメッセージアプリを起動させる。差出人は勇助(ゆうすけ)だった。


『大事な話があります』


 元恋人からのメッセージはそれだけだった。謝罪の言葉の一つもないのかと、乃々(のの)はため息をつける。


 さてどうするか、と乃々(のの)はドライヤーの温度を下げながら考える。


 彼女は正直なところ勇助(ゆうすけ)の顔を2度と見たくなかった。


 でも初めての恋愛をあんな最悪な形で終わらせたくない気持ちも乃々(のの)の中にはあった。


『明日、いつものカフェで3時に待っています。遅れないで来てください』


 他人行儀な言葉遣いのメッセージを入力し、乃々(のの)勇助(ゆうすけ)に送信する。


 彼女は決めた。


 別れるなら、きちんと別れよう。


 乃々(のの)はそう決意した。






 7月8日。午後2時50分。


 乃々(のの)はメッセージで宣言したとおり、あの喫茶店に来ていた。


 楽しそうに会話する若いカップルが多いこの店では、暗い顔をしながら一人でポツンと待っている乃々(のの)は浮いていた。


 勇助(ゆうすけ)のことを思い出してしまうからこのカフェを利用するのもこれで最後にしよう、と乃々(のの)は思っていた。


「このお店、お気に入りだったのにな……」


 それもこれも全て勇助(ゆうすけ)のせいだ。


 昨日のケーキが無駄になったのも、乃々(のの)がこの店のデラックスパフェが食べられなくなるも、全て勇助(ゆうすけ)が彼女との約束を蔑ろにし、怪人なんかの写真を撮っていたからだ。おのれ勇助(ゆうすけ)


 一体どんな言葉で勇助(ゆうすけ)を責めてやろうか、と乃々(のの)は最後のデラックスパフェを食べる。


 2時55分。勇助(ゆうすけ)は現れない。


 58分。まだ現れない。


 時計の長針と秒針が12を指そうとした。


 その時だった。


 店中のスマホのアラームが鳴り響いた、まるでアブラゼミが命を燃やしながら鳴くように。


 この音は緊急地震速報ならぬ緊急怪人速報のアラームだ。


 この近くで怪人が出没したのだ。


 乃々(のの)のスマホも恋人達のスマホも店員のスマホも、全てのスマホ達が持ち主に危険を知らせるため声を上げる。


『民間人の皆さんは警察の指示に従って非難してください!』


 外ではすでに警察機動隊が人々の避難誘導を行なっていた。さすが日本の警察は優秀だ、仕事が早い。


 カフェの店員達も客達を外に誘導していた。


 乃々(のの)も人々の流れに従って店の外に出る。


 その時、彼女の脳裏にある疑問がよぎった。


 勇助(ゆうすけ)はどうしているのだろう、と。


 勇助(ゆうすけ)も避難しているのだろうか、それともまた写真を撮りに現場へ向かっているのだろうか、と乃々(のの)は考えた。


 もし後者なら、と思うと彼女の中で怒りがこみ上げてくる。


 こんな大事な時に、自分の彼女が別れ話を持ち出しているという時に、怪人の撮影を行っているのだろうか。


「……よし」


 あることを決意した乃々(のの)は、避難する人々とは逆方向に走り出す。


 彼女は決めた、怪人のいる現場に行こうと。


 そして、もし勇助(ゆうすけ)がのん気に撮影を行っていたら、彼の頭を張り倒してカメラを壊してやろうと。


 登場人物情報が更新されました


佐倉(さくら)乃々(のの)

 19歳。女性

 ミスコンで銅賞を貰えるほどの容姿を持つ。

 彼氏持ち。


 勇助(ゆうすけ)と別れる決心をした。


 好きなライダーは、仮面ライダー電王(超クライマックスフォーム)



江角(えすみ)勇助(ゆうすけ)

 19歳。男性

 乃々(のの)の彼氏。


 左腕を負傷中。

 大事な話があると言いながら、約束の時間になっても現れなかった。


 好きなライダーは、仮面ライダーディケイド(通常形態)。

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