セラフィーナ グレイ
今年からお兄様が王立魔術学園に講師としていらしてくれるなんてうれしくて休暇中の今から楽しみでウキウキしてしまいます。
お兄様は学園にいる他の男性の方と違って、汗や熱気を感じさせない美貌はただただ美しく、儚げです。
そんなお兄様がソファーに腰を掛けて魔術書をお読みになられている時の視線も涼し気で、まるで物語の中のようです。
お兄様はまさに私の理想の『王子様』なんです。
「お兄様今日も、お部屋で魔術書を読んでいますの?たまには、私と一緒にお庭でお茶でもいたしましょう。」
読書中のお兄様をお邪魔するのは申し訳ないのですが、本日はお天気も良くお庭でバラも丁度見時なのでお茶にお誘いしたかったのです。
すぐに魔術書から目を挙げられたお兄様は優しく微笑まれした。
「ちょっと待ってくれるかな。このページを読み終わったら行くよ。」
世界中の魔術学者に羨望の眼差しを向けられるお兄様の貴重なお時間を私に割いてくださるなんて光栄です。
「分かりましたわ。お待ちしております。」
私もお兄様に倣い、最高の笑顔をお兄様に差し上げました。
お兄様は基本的に口数が多い方ではないので、お茶会中も私の方がよくお話します。
私が休暇開けに学園で最も楽しみにしているのはローゼリーン様を眺めることです。
ローゼリーン様は若干17歳にして膨大な魔力をもち、魔術と剣術の腕前はどちらも一流。両方同時に使用するローゼリーン様は国内最強だと噂されています。
真っ赤な長いお髪は常に頭の低い位置で一つに結われており、同じ色の瞳は切れ長。目、鼻、口など顔を構成するパーツは全てはっきりと主張が強いにもかかわらず、バランスが良く、キリッとした凛々しい印象です。
ローゼリーン様は童話の中に出て来るような、女の子が一度は憧れる『騎士様』と雰囲気がそっくりなのです。
その一方、私の婚約者の王太子殿下エドワード様は全く私の好みではないのです。
エドワード様は端正な顔立ちでいつもにこやか、細められた瞳の色はサファイヤそっくりのブルー、短い黒髪がとても似合ってらっしゃる。
王国一番の玉の輿で、将来は国王、顔立ちも良いけれど、王太子殿下ももう少し乙女心をくすぐるような『王子様』になってくださらないかしら。
殿下は剣や魔法の稽古ばかりに夢中で、男臭いのです。
あと、性格も熱血で何事にも全力で取り掛かるところは長所なのですが、私的には少々暑苦しいと感じてしまいます。