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グレイ侯爵

「今年から王立魔術学園で講師をしたいのですが、便宜を図っていただけますか。」


と息子のレイモンドが我儘を言ってきた。

レイモンドは18歳だが、生まれてこの方我儘らしい我儘など一切言わなかった生粋の“良い子”であったため、私は飛び上がるほど喜んだ。


18歳は一般的に学園を卒業したての新人魔術師の年齢だ。

基礎を修め学園を卒業したばかりの新人に講師の座を用意するのは普通なら無理だ。


しかし、レイモンドは普通とはかけ離れている。

王立魔術学園には通常、12歳で入学し6年間みっちりと魔術の使用方法を学ぶのだが、レイモンドの場合、入学する年齢の頃には独自に新たな魔術を生み出すほど魔術に造詣が深かった。

学園側からは遠回しに“お前の息子に教えることはない”と告げる手紙が届けられ、息子は王立魔術学園に入学しなかったのだ。

それからずっと家で魔術の研究をしつつのんびりと過ごしていたが、今年になって急に働きたいと言い出した。

同年代の友人でも欲しくなったのだろうか。


本人は自分の突飛な我儘に対し申し訳ないとでも思っているようだが、レイモンドが我が家にもたらした恩恵は計り知れない。

彼は世界で初めて複数の属性魔術を混合させて、混合魔術という全く新しい魔術の概念を生み出し、魔術界に革新をもたらした。

彼が提案した燃費の良い照明魔具のおかげで夜の街もにぎやかになり、王都の治安も格段に上昇した。

彼が開発した遠距離連絡魔具は世界の常識を一変させた。

とにかくレイモンドは多くの成果を上げている近代きっての魔術学者であり、魔術のことになると天才的なのである。

私が一声かけたら学園の方は即答でレイモンドのために講師の席を用意した。


文句の着けようのない完璧な息子に関して私は1つだけ悩みがある。

18歳にして、魔術学者としての名誉も、魔具の開発から得た富も、未来のグレイ侯爵という地位も持っている超優良物件のレイモンドに婚約者どころか浮いた話が一切ないことだ。

身体が弱いこともあって、レイモンドはたまにパーティーに顔を出すものの、女性とダンスを踊るほどの体力はない。

さらに、基本的に引きこもり体質であり、交友関係が極端に狭いのだ。


18歳ともなれば世間の男は婚約者探しのピークであるというのに、レイモンドときたら妹のセラフィーナ以外の年頃の女と話しているところなんて見たことがない。

顔立ちも男らしいとは言えないが整っており所謂、美形。

社交界に滅多に顔を出さないことから『グレイ侯爵家の妖精』と噂されている。

王立魔術学園での講師をきっかけに生徒でも同僚でもいいから婚約者を見つけて来たら問題は解決するのだ。

しかし、人見知りが激しいあの子に性格ではどうなることやら、心配だ。


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