ねこのかみさま
ミカちゃんにはおばあちゃんがいます。
おばあちゃんのおうちには、ミケというなまえのネコがいます。
ミカちゃんはミケが大好きです。
おばあちゃんは
「ミケもおばあちゃんといっしょで、もうおばあちゃんなの」
といいます。
ミケはミカちゃんが来るといつもおばあちゃんの家の門までむかえにきてくれます。
ミカちゃんとミケ。
なまえもなんだか似ています。
ミカちゃんがそっと頭をなでると、ミケはいつも目をほそくして
グルルルル
とのどをならします。
あるとき、ミカちゃんは絵本で十二支のお話をお母さんに読んでもらいました。
「ネコさんかわいそう」
ミカちゃんはミケのことを思いうかべました。
じつは、ミカちゃんにはお母さんにもおばあちゃんにもナイショの秘密があったのです。
ミケはおばあちゃんもお母さんも見ていないときだけ、こっそりミカちゃんにいろんなことを教えてくれるのです。
次の日、ミカちゃんはお母さんにたのんでおばあちゃんの家につれていってもらいました。
コタツでお絵かきしていると、おばあちゃんとお母さんはとなりにある台所でお昼ごはんの準備をはじめました。
トントン。
コトコト。
ジャー。
台所から、おばあちゃんとお母さんが料理をする音がきこえてきます。
ミカちゃんは小さな声でミケに聞きました。
「どうしてネコは十二支にいないの?」
ミケは小さな声で返事をしました。
「どうしてだろうねぇ。
今夜、ねこのかみさまに聞いてみるかい?」
「ねこのかみさまって?」
お母さんがお昼ごはんを運んできたので、ミケはそれっきり知らん顔して伸びをして、それからクルリと丸くなって寝てしまいました。
こうなったらミケはもう答えてくれません。
ミカちゃんはおばあちゃんとお母さんとお昼ごはんを食べました。
その日の夜。
おうちに帰って、おフロに入って、おフトンに入って眠ったミカちゃんは、やさしくだれかに起こされました。
「ミカちゃん、ねこのかみさまに会いに行くよ」
いつのまにか、ミケがミカちゃんのおフトンのまくらもとにいてささやきます。
「さあ、そっとシッポをにぎってごらん」
ミカちゃんがシッポをそっとにぎると、そこはあっというまにネコがたくさんいる広場になっていました。
「ミケ、ここはどこなの?」
ミカちゃんが聞くと、ミケが答えました。
「ここはネコの国。
あの広場のまんなかにいるのがねこのかみさまだよ」
広場のまんなかには、大きな大きな白いネコがいました。
「ねこのかみさまって大きいね」
「だいじょうぶ、とてもやさしいかみさまだよ」
ミカちゃんはミケといっしょに広場のまんなかまで行きました。
「こんにちは、ミカちゃん」
「こんにちは、ねこのかみさま」
ねこのかみさまは、とてもやさしい声をしていました。
「ねこのかみさま、どうしてネコは十二支にいないの?
ねぼうしたからなの?」
ねこのかみさまはやさしく答えました。
「ミカちゃんはネコが好き?」
「うん、だいすき」
「ネコもね、ミカちゃんが好きだよ。
もしミカちゃんがネコ年に生まれたらうれしい?」
「うん、ネコ年があるならネコ年に生まれたかったの」
「ネコ年に生まれたい人がたくさんいたの。
だけど、そうしたらネコ年に生まれなかった人がかわいそうだよね。
それにね。
ネコは12年にいっぺんしかないのはイヤだったの。
いつも人といっしょにいたかったから、十二支に入らなかったのよ」
「そうなんだ。
ありがとう、ねこのかみさま」
「さあ、みんなと遊んでからおかえり」
それからミカちゃんはたくさんのネコと遊びました。
目がさめると、ミカちゃんはおうちのおフトンの中にいました。
「お母さん、おはよう」
「おはよう、ミカちゃん。
いいことあったの?」
ミカちゃんがあんまりニコニコしていたから、お母さんが聞きました。
「あのね、あのね、十二支にネコはいない方がいいみたいなの」
「あらどうして?」
「あのね、あのね」