7.明晰夢実験 天の階段と学校の雛壇
私は霧の中、行く手を塞ぐ木の枝を折りながら進む。
気づくとそこは、斜面に広がる団地の小道である。
後ろで男子生徒の話し声がする。
誰か来た、と思い、私は手に持っていた枝をフェンスの向こうに投げ捨てて、反対側へ走り出した。
投げた枝が下の住宅にあたった音がして、すこしの罪悪感を感じる。
◇
早く高校に登校しなくてはならない。
段差を飛び降りようとすると、その段差はビルの屋上ほどもあって、高校の正門が目もくらむほど下にあった。
私はなんとか急停止する。
横を見ると、非常階段のようなものが見えたので、そちらに歩み寄る。
その階段は空中に細く続く螺旋階段で、手すりは片側にしかない。
手すりに掴まって数段降りるが、見ればその先には手すりがなかった。
◇
私は恐怖で進むことも戻ることもできなくなり、しばし途方に暮れた。
朝日に照らされる街を見た。
その瞬間。
これは夢なんだから、何とかなるだろうと思った。
私は、例えば階段がもっと低ければいい、と考えた。
するとガラス張りのエレベーターに乗っているように緩やかに、街並みを眺める視点が下がっていく。
恐る恐る下を見ると、空中階段が校庭に溶け込むように消えていくのが見えた。
私は見知らぬ高校の昇降口の前に降り立った。
これは夢なのだと確信する。
私はこの夢を淫夢に変える実験を試みることにした。
しかし、夢は覚めかけていた。
気を抜けば、まぶたの裏の朝日が透けて見えるようで、私は必至に全身の力を抜いた。
◇
私が急いで昇降口に上がると、すぐそこが体育館で、生徒が入っていくのが見えた。
中では私のクラスともう一つのクラスが向き合って、2つのひな壇に整列している途中だった。
この喧騒に乗じようと思った。
私は自分のクラス側に早足で行き、女子の顔を吟味した。
なるほど、前にクラスが一緒だった中学、高校の女子生徒である。
しかし誰を見ても、実験の対象にしようと思えない。わたしは反対側のクラスに目を向けた。
誰もかれも見覚えのない顔だった。
その中で一番目を引かれた子に歩み寄り、手首を取った。
その子をステージ横に連れ込むと、そこは放送室のようなところで、別の女子生徒が一人いた。
放送室にいた女子生徒が何事かを言っている。
私は、二人とも眠ればいいと思った。
すると、二人の女子生徒は倒れこんで寝てしまった。
倒れた時に乱れた髪が、かつらのような、ポリゴンのような、何か不自然な様子だった。
どちらも全然魅力的に感じなかった。
尿意を感じた。
目が覚めると思った。
そこで、目が覚めた。